安全な生活のための『レジオネラ症』予防と管理
レジオネラ症はご存知でしょうか。レジオネラ属菌による感染症ですが、その感染被害をたまにニュースで見かけます。場合によっては死に至らしめることもあるレジオネラ属菌について、その感染症の被害や対策を含めてお話ししたいと思います。
レジオネラ属菌とは
レジオネラ属菌は、ブドウ糖非発酵の好気性グラム陰性桿菌で、50菌種以上が確認されています。これらの菌は、土や水の中などの自然界に広く生息しており、アメーバなどの原虫や藻類内で増殖し、共生関係を形成しています。そして土ぼこりやエアロゾル(空気中に浮遊する微小な粒子)などによって空中に飛散し、建物内の冷却塔や循環式浴槽などの水使用の設備や施設などの人工的な環境の水中で増殖します。
レジオネラ属菌による被害
レジオネラ属菌は人に被害を及ぼすことがあります。レジオネラによって引き起こされる病気を「レジオネラ症」と呼びますが、主に「レジオネラ肺炎」を引き起こす場合があります。このレジオネラ症は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の四類感染症に指定されており、狂犬病や鳥インフルエンザと同じ分類です。このレジオネラ肺炎によって亡くなる人も少なくありません。
では、どういった状況でレジオネラ症に罹ってしまうのでしょうか。レジオネラ属菌の特徴として先ほど説明しましたが、レジオネラ属菌はエアロゾルによって運ばれます。そのため、レジオネラ属菌を含んだエアロゾルを人が吸い込んでしまう、あるいは誤嚥(水そのものを飲み誤って気道に入れてしまうこと)によってレジオネラ属菌は人の体内に侵入して感染します。エアロゾルが発生しやすい循環式浴槽や温泉施設、加湿水などからレジオネラ症に感染してしまいます。
感染経路は浴槽水だけでなく、冷却塔水からも感染してしまいます。冷却塔はご存知でしょうか?多くは建物の屋上に設置されているため、あまりイメージがわかないかもしれません。冷却塔とは水を冷却する機械ですが、屋外にあるため細菌や原生動物、藻類などが侵入しやすい環境となっています。そのため、バイオフィルムが形成しやすく、レジオネラ属菌が繁殖して飛散することがあります。
病原体への人の感受性は、健康な人が感染しても免疫によってレジオネラ肺炎を引き起こす可能性は低いですが、免疫機能が低下している人や病人、高齢者などが感染しやすいといわれています。
レジオネラ症は毎年のように大規模な集団感染が発生しており、我が国におけるレジオネラ症の報告数の増加が確認されています。レジオネラ症を効果的に防止するためには、施設の担当者や衛生管理担当者などの関係者が相互に理解し協力していく必要があります。
レジオネラ症対策
レジオネラ属菌について、基準が設けられています。公衆浴場における水質基準等に関する指針では、浴槽水において10CFU/100mL未満、レジオネラ症防止指針では、冷却塔水において100CFU/100mL未満と定められています。
レジオネラ症感染の対策として、設備等に侵入したレジオネラ属菌に対し、増殖を抑制すること、エアロゾル化させないことが大切です。増殖を抑制することとして、レジオネラ属菌そのものを除去するだけでなく、レジオネラ属菌の増殖の場となるバイオフィルム(生物膜)を作らせない対策も必要です。
殺菌剤を使用してレジオネラ属菌を消毒する場合、浴槽水など人と接触する可能性がある施設については塩素剤の低濃度使用を主とした酸化性殺菌剤が採用されています。一方、冷却塔水といった施設では有機系殺菌剤や酸化性殺菌剤の高濃度処理、加温殺菌が採用されています。バイオフィルムを除去する方法としては、物理的な清掃あるいは過酸化水素の使用があり、定期的な清掃が必要になります。
最後に
レジオネラ属菌は対策をしっかり行い、管理すればレジオネラ症の発生を予防することができるので、少しでも感染被害が減ることを願います。
弊社では、効率的な対応とスムーズな結果の提供を実現するため、リアルタイムPCR法を用いたレジオネラ属菌検査を導入しています。この検査方法により、最短2日で結果を得ることができます。
通常の対策後の改善確認には時間がかかることがありますが、rPCR法を用いた検査を利用することで、迅速に対策の効果を評価することが可能ですので、ぜひご相談ください。
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参考資料
・【公益財団法人日本建築衛生管理教育センター】レジオネラ症防止指針(第4版)