2021.10.07
コラム

WET試験について(前編)

全排水毒性(Whole Effluent Toxicity:WET)試験はご存知でしょうか。排水中に含まれる毒性を生物を用いて評価する試験法で、環境省が2009年から法制化に向けて検討を進めています。今回はそのWET試験について前編・後編にわたってお話ししたいと思います。

目次
1.WET試験の経緯
2.試験を実施するメリット
2-1.化学物質管理の推進
2-2.環境CSRに反映
2-3.リスクコミュニケーション
3.諸外国のWET試験
3-1.米国
3-2.カナダ
3-3.ドイツ
4.最後に

WET試験の経緯

日本では1970年に水質汚濁防止法において排水基準が設けられ、個別の化学物質について排水規制を行っています。この排水規制によって人の健康や生活環境に関わる有機汚濁や富栄養化などの水質汚濁問題は軽減されています。しかし10万種にも及ぶ化学物質は年々増加傾向にあるため、その有害性をすべて把握することは難しいのが現状です。また、ひとつひとつの化学物質が基準値以下であっても、排出先で他の物質と反応し有害物質となる可能性(複合影響)規制されていない未知物質の影響の可能性も否定できません。そこで近年、環境省において排水における生物応答試験として、全排水毒性試験(WET試験)が検討されています。
WET試験は排水中に含まれる化学物質による相対的な影響を生物応答(バイオアッセイ)により評価しようとする新しい試験手法で、魚類、甲殻類、藻類を用いて生物への毒性影響を評価します。従来、環境分野におけるバイオアッセイは、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」や「農薬取締法」など個別の化学物質に対する生態毒性試験として用いられてきました。このWET試験はバイオアッセイの結果を数値化して評価を行う“影響規制”のシステムであり、物質を特定したうえでその物質の濃度規制を行う現行の“物質規制”とは異なる概念になります。
北米、欧州、韓国などでは排水規制の一環としてすでに導入されています。日本においてWET試験はまだ法制化への検討段階ですが、自主的に試験を実施する企業も増えてきています。

試験を実施するメリット

化学物質管理の推進

生物に対する影響を考慮した製品開発や使用する化学物質による環境リスク評価、排水処理の改善策の検討水質事故の予防に利用できます。

環境CSRに反映

水生生物の生育環境実現に貢献するとともに、環境活動としての自主的な取り組みとしてアピールすることができます。

リスクコミュニケーション

試験結果をCSRレポートやWebに掲載することで関係者と意見交換や情報収集をすることができ、SDGs取り組みの一環としての評価は高いと考えられます。また生物による評価は理解されやすいため、周辺住民の理解が得られやすいこともメリットのひとつです。

諸外国のWET試験

米国

1987年に化学物質の個別規制では排水の潜在的なリスク評価が十分でない場合を考慮し、WET試験による排水評価手法を排水監視ツールとして導入しました。そして1995年に排水に係る法規制(水質浄化法)要件に追加され、製造業を中心とした56業種及び公共用下水処理場が対象となっています。試験生物は、藻類、無脊椎動物、魚類とされています。米国では、個別物質規制とWET手法に係る規制を併用し、排水を管理しています。

カナダ

1970年代に魚類やその生息地等の保護を目的に、従来の個別物質規制に加え、排水許可制度の要件として一部の業種において義務化されました。試験生物は、藻類、大型植物、無脊椎動物、魚類とされています。カナダでは米国と異なり、WET試験に基づく基準は個別規制物質とは独立した項目として、排水を管理しています。

ドイツ

1970年代に排水対策関連法の制定・改定と同時期にWET試験を要件化しました。試験生物は、魚類、無脊椎動物、細菌、植物/藻類とされています。ドイツではカナダ同様、WET試験に基づく基準は個別規制物質とは独立した項目として、排水を管理しています。

最後に

WET試験は、さまざまな国で排水の毒性の特定に用いられ、水生生物に対して影響をきたす未知の物質あるいは毒性がないと思われていた化学物質の特定に役立っています。
後編では、実際の試験の流れや「毒性影響あり」と評価されてしまった時の毒性低減対策についてお話ししたいと思います。

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