2022.06.30
コラム

『リアルタイムPCR』って?実用例と併せてご紹介!

前回は遺伝子検査の基礎やPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)についてお話させて頂きました。今回は、遺伝子検査のうちリアルタイムPCRについて取り上げたいと思います。

前回のコラムはこちらから↓
新型コロナウイルスだけじゃない!PCRを使用した遺伝子検査について

目次
1.リアルタイムPCR
1-1.リアルタイムPCRとは
1-2.原理
2.実用例
3.最後に

リアルタイムPCR

リアルタイムPCRとは

リアルタイムPCRはPCRとほぼ同じ原理ですが、DNAが増幅している過程をリアルタイムでモニターすることができます。PCRではターゲット遺伝子の有無の判定、あるいは電気泳動を行って半定量的な結果を出すことができますが、リアルタイムPCRはターゲット遺伝子を定量することができます。そのため、「定量PCR」と呼ばれることもあります。
医療分野ではがん遺伝子の研究、食品分野では遺伝子組み換えの検査、農業では品種改良など様々な用途でリアルタイムPCRが用いられています。

原理

PCRそのものの原理については、前回のコラム「新型コロナウイルスだけじゃない!PCRを使用した遺伝子検査について」にありますので、そちらをご覧ください。リアルタイムPCRは、ターゲット遺伝子の増幅を蛍光色素で発光させて蛍光強度を検出し、1サイクルごとにモニターします。そのためリアルタイムPCR装置は、PCRを行うサーマルサイクラーに蛍光光度計が一体化した装置です。蛍光を発する方法は様々ありますが、大きく2つ「インターカレーター法」と「プローブ法」に大別されます。
インターカレーター法は、合成された2本鎖DNAに結合して励起光の照射により蛍光を発します。

図1.インターカレーター法

一方、プローブ法は5’末端に蛍光物質、3’末端にクエンチャー(消光物質)を修飾したプローブを用います。PCRのアニーリング過程までは、蛍光物質はクエンチャーの影響により蛍光を発しません。プローブが鋳型DNAに特異的に結合した後、プライマーの伸長反応が起きると、プローブは合成されていく鋳型DNAに分解されます。その時に蛍光物質はクエンチャーと分離するため、蛍光を発するようになります。

図2.プローブ法

そしてPCRの1サイクルごとに装置が蛍光強度を検出し、下図のように蛍光強度をモニターすることができます。PCRは指数関数的にDNAを増幅するため、S字型の曲線がみられます。この曲線を「増幅曲線」といいます。鋳型DNAが多いサンプルほど、少ないサイクル数で蛍光強度の立ち上がりが確認されます。そして指数関数的に増殖する蛍光強度の値に線(threshold line)を引き、増幅曲線とthreshold lineと交わるサイクル数(threshold cycle値:Ct値)を導き出します。

図3.増幅曲線

既知濃度のサンプルを段階希釈してCt値と濃度(コピー数)の検量線を作成し、未知濃度のサンプルのCt値からサンプル濃度を算出することができます。

図4. Ct値と濃度(コピー数)の検量線

実用例

リアルタイムPCRを用いた検査は数多く確立されています。その中でも、弊社での実用例をご紹介したいと思います。
弊社では浴水のレジオネラ属菌の検査を行っており、検査方法は培養法とリアルタイムPCR法の2種類あります。厚生労働省からも令和元年に「公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法について」が定められ、培養法だけでなく迅速検査法としてリアルタイムPCR法が掲載されています。培養法はサンプリングした浴水を培地上に塗布して培養し、レジオネラ属菌が発育するかを確認します。レジオネラ属菌の発育には5~7日かかるため、検査結果を報告するのに時間がかかってしまい、検出してしまった場合には対応が遅れてしまいます。しかし遺伝子検査は2日で結果を出すことができるため、培養法よりもかなり早く対応することができます。また、リアルタイムPCR法では基本的には生菌のみを検出する方法で検査を実施しますが、生菌だけでなく死菌も検出する方法もあります。この生菌死菌の両方検出する方法は普段の清掃が行き届いているか、潜在的な汚染リスクを知る目安として使われます。
ほかにも、鉄バクテリアの検査もリアルタイムPCRで実施しています。鉄が腐食した、あるいは田んぼの水が赤くなっている、などの現象が起きたときは鉄バクテリアが関与しているかもしれません。鉄バクテリアは土壌中に生息する細菌で、鉄を栄養素として利用しており、水中に溶けている2価の鉄イオンを3価の鉄にします。この鉄バクテリアはさまざまな種類が存在し、顕微鏡で観察できる細菌もいれば、顕微鏡では観察できない細菌もいます。そのため、遺伝子検査をすることによって、顕微鏡では観察できない細菌も確認することができます。

最後に

遺伝子検査は医療や農業をはじめさまざまな分野で活躍しており、日本の発展には欠かせないものになっています。新型コロナにより、「遺伝子検査」という言葉に聞きなれ、興味を持った人もいるのではないでしょうか。弊社では新型コロナの検査はしていませんが、微生物の検査をメインに行っていますので、興味のある方はお気軽にご連絡ください。

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