『ウイルス』ってなに?構造や遺伝子など基礎知識を交えて解説
コロナウイルスが世界的に流行して2年以上経過し感染予防やワクチン接種など様々な対策を行っていることと思います。ここでふと「ウイルスってなんだろう」と思ったことはありませんか?今回はコロナウイルスに限らず、そもそもウイルスって何なのかについて解説します。
目次
1.細胞とは
2.ウイルスについて
2-1.ウイルスの構造
2-2.ウイルスの遺伝子
2-3.ウイルスの増殖
3.ウイルスは生物ではない?
4.まとめ
細胞とは
ウイルスについて知る前に、まず細胞についての説明から始めます。生物の体を構成する最小単位を「細胞」と言います。多くの細胞で体が構成されていると「多細胞生物」、ひとつの細胞のみで体が構成されていると「単細胞生物」と呼びます。
細胞の大きさは生物の種類やどの組織に使われている細胞かによって違いますが、例えばヒトの口腔上皮細胞(口の内側にある細胞)の場合の平均的なサイズは約100μm(0.1mm)、赤血球で7~8μmと言われています。
どのような細胞にも共通点があります。まず細胞膜で包まれており、その中は細胞質で満たされ、様々な小器官を有しています(図1)。自己増殖や再生をする能力があり、そのための遺伝情報を備えています。
そして細胞の分類について2つに分けることができます。DNAを核として保有する細胞を「真核細胞(真核生物)」、DNAを核のような形で持たない細胞を「原核細胞(原核生物)」と呼びます(図2)。ちなみに原核生物はすべて単細胞生物です。代表的な原核生物には大腸菌が挙げられます。
図1.細胞の模式図(真核細胞)
図2.原核細胞(原核生物)の模式図
ウイルスについて
ウイルスの構造
ウイルスは非常に小さな構造体をしています。その種類にもよりますが、サイズは平均0.1μm (100nm)ほどです。先に例で挙げた大腸菌の場合、サイズは2~4μmなのでウイルスがいかに小さいのかわかると思います(図3)。
図3. それぞれのサイズ比較図(厚生労働省HPから引用)
ウイルスはその特徴的な構造から細胞ではなく粒子と言われています。ウイルスの構造はタンパク質の殻と、その内部に遺伝情報となる核酸をもっているだけです。細胞や細胞膜を持っておらず、小器官がないため代謝を行わず、自己修復や自己増殖もできません。
ウイルスの形や大きさはタンパク質の殻に依存しており、正20面体型と螺旋対称型が存在します。種類によっては、さらにエンベロープという脂質の膜で殻を包んでいるウイルスもいます(図4)。
図4. 正20面体のウイルス模式図
ウイルスの遺伝子
ほとんどの生物は遺伝情報を核酸であるDNAに保存していますが、ウイルスは異なります。DNAかRNAのどちらか片方で遺伝情報を保存しており、一本鎖または二本鎖のどちらかであり、さらに+鎖と-鎖に分けられます。
自己増殖ができないのに遺伝子を持っているという特徴は、ウイルスでのみ見られます。
ウイルスの増殖
繰り返しになりますが、ウイルスは自己増殖をすることができません。ではどうやって増殖するのかというと、他生物の細胞に寄生することで増殖しています。
ウイルスは他生物の細胞に寄生して自身の遺伝子を感染させ、感染させた細胞に自身の遺伝子を使わせることで自己増殖に必要なタンパク質の合成と遺伝子の複製をさせています。このような性質を偏性細胞内寄生性といいます。
ウイルスが増殖するプロセスは、吸着→侵入→脱殻→複製→成熟→放出、となっています(図5)。
図5. ウイルス増殖のプロセス
ウイルスが細胞に感染するには、ウイルス表面のタンパク質と細胞の表面にあるレセプターに吸着する必要があります。レセプターは選択性が高い標的分子なので、ウイルスとレセプターが合致した場合のみウイルスは吸着できます。
吸着したウイルスは細胞の中に侵入し、自身のタンパク質の殻を脱殻して核酸を放出します。細胞内に放出された核酸から、寄生した細胞の機能を利用してウイルス自身のタンパク質を合成し、さらに核酸も複製されていきます。それぞれが大量に生産されると、タンパク質の殻と核酸が集合してウイルスの構造を形成し、感染した細胞から放出されます。
また細胞とウイルスはその増殖の仕方の違いから、細胞は指数関数的に増殖するのに対し、ウイルスは一段階増殖となります。その他、ウイルスが細胞に寄生するとウイルスが細胞がら出てくるまでの間、見かけ上ではウイルスがいないように見えてしまうため、その期間を暗黒期と言います。
ウイルスは生物ではない?
通常、細胞は生きていくために必要なエネルギーを生産・消費する能力を持っており、自己の再生・増殖をしています。そうした生命活動することを「生きている」と表現します。一方、ウイルスは代謝を行う器官を一切持っておらず、エネルギーや水や酸素も不要で、ただ細胞への寄生と増殖を繰り返すのみです。こうした特徴から、一般的にウイルスは生物ではないと言われています。しかしながら生物の定義によってはウイルスを生物とする見解もあり、今なお議論が続いています。
まとめ
今回はウイルスというミクロな世界の話をしました。ウイルスについてはまだ解明されていないことも多く、ウイルス性の病気は有効な治療法のないものも数多く有り、ワクチンが有効なウイルスも限られているのが現状です。今回の記事でウイルスについて詳しくなって頂けたら幸いです。
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