2022.06.23
コラム

海洋生物の原因と影響

地球の7割を占めている海で海洋汚染が問題となっています。このまま汚染が進むとクジラやイルカ、普段食卓で目にしている魚が消えてしまうかもしれません。そんな海洋汚染は何が原因で実際にどのような現象が起きているのでしょうか。

目次
1.海洋汚染とは
2.海洋汚染の原因と影響
2-1.油汚染
2-2.海洋ごみ
2-3.化学物質
3.今回のまとめ

海洋汚染とは

海洋汚染に関して国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約)第1条では次のように定義しています。

「海洋環境の汚染」とは、人間による海洋環境(三角江を含む。)への物質又はエネルギーの直接的又は間接的な導入であって、生物資源及び海洋生物に対する害、人の健康に対する危険、海洋活動(漁獲及びその他の適法な海洋の利用を含む。)に対する障害、海水の水質を利用に適さなくすること並びに快適性の減殺のような有害な結果をもたらし又はもたらすおそれのあるものをいう。
引用:【 データベース「世界と日本」】海洋法に関する国際連合条約

主に工場や生活排水などによる化学物質の流出や沿岸域開発による生態系の破壊、廃棄物の投棄、船舶の油などによる直接的な汚染と、大気を通じて汚染する間接的な汚染の2つが海洋汚染にあたります。

海洋汚染の原因と影響

海上保安庁の発表によると令和3年1月1日から同年12月31日までの間の海洋汚染確認件数は493件(前年比40件増加)と過去10年間で最多の結果でした。最も多かった汚染原因は油汚染で332件(67%)、次いで廃棄物による汚染が139件(28%)、有害液体物質による汚染が14件(3%)、その他の汚染が8件(2%)でした。それでは汚染ごとに詳しくみてみましょう。

油汚染

油汚染の原因で最も多いのは取扱い不注意、船舶海難等による船舶からの油排出です。原油の流出による事故は流出した環境を即汚染するとともに除去に時間がかかります。1989年のエクソン・バルディーズ号によるアラスカ州プリンス・ウィリアム湾原油流出事故はその被害の大きさと深刻さから世界中で注目されました。以来、船底の二重化やタンクを小型にするなどの流出防止や万が一事故が起こっても被害を最小限にするような対策がとられています。事故によって流出した石油は時間が経つにつれ薄い膜状で広がり魚や水鳥などあらゆる海洋生物に付着し影響を及ぼします。魚はエラや体表に油が付着すると機能不全をおこし稚魚や卵は抵抗力が低いため死に至ります。水鳥や海獣は油で汚れた羽根や体毛を口できれいにしようすることで体内に油を取り込んでしまいます。または皮膚から直接浸透し内臓の損傷や行動障害、知覚麻痺を起こし死んでしまうこともあります。

海洋ごみ

海洋汚染が広く知られるようになり様々な取組みがされている今日ですが、残念なことに廃棄物による汚染のうち最も多かったのが一般市民によるもので86件でした。その多くが家庭ごみの不法投棄です。10箇所の海域別では瀬戸内海が28件と最も多く、次いで北海道沿岸と私たちが住んでいる愛知県に面する伊勢湾が25件でした。海洋ごみとは単に海に捨てられたごみだけではなく、街で捨てられたごみが川などから海へ流れ着くものも含まれます。そんな海洋ごみで最も多いのがペットボトルなどのプラスチックごみです。プラスチックごみだけで世界中の海に1億5,000万トン以上存在し、毎年ジャンボジェット機5万機相当の約800万トンに及ぶ量が流れ出していると推定されています。そのうち2~6万トンが日本から発生したものと推計されています。ビニール袋は海洋に漂う姿がイカやタコに似ているため、餌と間違えてクジラが誤食し消化されず胃に残ります。誤食を繰り返すことでビニール袋の体積が増え、クジラは満腹だと勘違いしてしまい実際は栄養を摂取できていないので栄養失調となり餓死する問題が起きています。フィリピンの海岸で発見されたクジラの死骸は痩せ衰え吐血の痕もあり胃からは40㎏のビニール袋が見つかっています。また、漁業用の網が身体に絡まりそのまま生物が死んでしまうことも少なくありません。

化学物質

1995年ワシントンで開かれた汚染物質の対策に関する国際会議で残留性農薬やPCB、ダイオキシン類を中心とした残留性有機汚染物質(POPs)が人や野生生物の生殖器の異常や奇形の発生などの悪影響をもたらす可能性があると指摘され注視されるようになりました。これらの汚染物質は雨などに洗い流されたり、揮発し大気経由で最終的に海にたどり着きます。環境中で分解されにくく、生物の体内に蓄積されやすいため現在、海水及びほとんどの海洋生物から検出されています。特に食物連鎖の高次消費者に位置する生物ほど高濃度で含まれている傾向があります。これは食物連鎖による生物濃縮によるもので現在、アザラシなどの海洋性哺乳類を主な餌としているシャチが世界で最も高濃度の蓄積がみられています。環境省では、1979年より海洋生物に含まれる汚染物質調査を実施しており毎年「化学物質と環境」で報告していますが、汚染状況の把握や原因究明には長期調査になるため実施が困難または人手不足などにより、基礎的なデータでさえ乏しい状況です。

今回のまとめ

海洋汚染の原因は上記以外にも数多くあり、海洋はとても広くさまざまな不確定要素をはらんでいるため、対策を立てるのは簡単ではありません。ですが海洋汚染の1番の対策は汚染原因となる物質を出さないことです。エコバックを使用する、出たごみは分別し正しく捨てるなど一人一人が意識を変え行動することで変わっていきます。自分たちが行く海が今年よりも来年、再来年ときれいになっていく姿などを想像し問題を身近に感じ改善していきましょう。

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参考
・【環境省】POPs パンフレット
・【海上保安庁】令和3年の海洋汚染の現状(確定値)~過去10年間で最多の海洋汚染を確認!!~ 
・【海上保安庁】沖合海域における POPs の汚染実態解明に関する研究
・【日本財団ジャーナル】増え続ける海洋ごみ 今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちに何ができる?
・【国連大学ウェブマガジン】海洋食物連鎖中の残留性有機汚染物質
・【oodgo】油による海洋汚染とは?原因や生態系への影響に迫る!

・プラスチックファイターズジャパン
出典
「海の働きと海洋汚染」原島省・功刀正行 裳華房

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