作業環境測定における粉じんの対象作業場・義務・測定方法を解説
常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場では、労働者の健康障害を防ぐため、法令に基づく作業環境測定が必要です。
このコラムでは、粉じんの作業環境測定が必要な理由、対象となる作業場、測定方法、第3管理区分となった場合の対応までを整理して解説します。
目次
1.粉じんが引き起こす健康障害と作業環境測定が必要な理由
1-1.吸入性粉じんが体内に与える影響
1-2.粉じん測定義務の法的根拠と根拠法令の体系
2.粉じんの作業環境測定の対象となる作業場
2-1.特定粉じん作業に該当しやすい工程と作業内容
2-2.土石・岩石・鉱物を扱う作業場で遊離けい酸測定が必要な場合
3.粉じんの測定方法と管理濃度による評価の仕組み
3-1.ろ過捕集方法と相対濃度指示方法の測定原理
3-2.管理濃度の算出方法と評価区分の判定基準
4.第3管理区分となった場合の対応手順と記録義務
4-1.作業環境管理専門家への意見聴取と改善措置の流れ
4-2.測定・評価記録の保存義務と労働者への周知方法
5.まとめ
粉じんが引き起こす健康障害と作業環境測定が必要な理由
粉じんの作業環境測定が必要なのは、深刻な健康障害を未然に防ぐ目的があるためです。粉じんとは、固体の物質が粉砕や研磨などによって細かくなり、空気中に分散した微粒子を指します。こうした粉じんを長期間吸い込み続けると、じん肺をはじめとする呼吸器系疾患を発症するリスクが高まります。
例えば、じん肺は肺に粉じんが沈着して肺組織が線維化する病気です。進行すると呼吸困難などの重い症状を招き、一度線維化した肺を元に戻すことは難しいとされています。その他、代表的な健康障害は以下の通りです。
肺腫瘍(がん):発がん性粉じんの長期吸入により発症することがあります。
喘息・アレルギー反応:粉じんに対する過敏反応として発症することがあります。
合併症:じん肺に関連して肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸、原発性肺がんなどが認定される場合があります。
吸入性粉じんが体内に与える影響
健康影響の評価で重視されるのは、肺胞まで到達しやすい吸入性粉じんです。作業環境測定基準では、所定の分粒特性を持つ分粒装置を用いて試料空気を採取します。
吸入性粉じんは、鼻や喉で完全には捕捉されず、肺胞領域まで入り込むおそれがあります。さらに見落とせないのが、粉じんに含まれる遊離けい酸です。遊離けい酸は、二酸化ケイ素(SiO₂)のうち結晶構造を持つもので、石英・トリジマイト・クリストバライトなどの結晶質シリカが該当します。
これらを長期間吸い込むと、じん肺の一種である珪肺(けい肺)を発症するおそれがあるため、粒径と成分の両面から評価する必要があります。
粉じん測定義務の法的根拠と根拠法令の体系
粉じんの作業環境測定は、複数の法令で枠組みが定められています。柱となるのは、測定対象となる作業場を掲げる労働安全衛生法施行令第21条、測定対象の屋内作業場・測定頻度・記録保存・評価後の措置を定める粉じん障害防止規則、具体的な測定方法を定める作業環境測定基準第2条です。
それぞれの役割は次の表のとおりです。特徴的なのは記録の保存期間です。多くの有害物質では測定結果の保存期間が3年とされる一方、粉じんでは測定・評価の記録を7年間保存する必要があります。
【粉じん測定義務に関わる主な法令と内容】
| 法令名 | 主な規定内容 |
|---|---|
| 労働安全衛生法施行令第21条 | 粉じんを著しく発散する屋内作業場を作業環境測定の実施対象として規定 |
| 粉じん障害防止規則第25条・第26条 | 測定を行うべき屋内作業場の定義、測定頻度(6か月以内ごとに1回)、測定・評価記録の保存(7年間)、評価後の措置を規定 |
| 作業環境測定基準第2条 | 粉じん濃度の具体的な測定方法(ろ過捕集方法及び重量分析方法、相対濃度指示方法など)を規定 |
粉じんの作業環境測定の対象となる作業場
作業環境測定の対象となるのは、すべての粉じん作業ではなく、常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場です。測定義務の有無は、粉じん障害防止規則に定める作業に該当するかを確認して判断します。
特定粉じん作業とは、粉じんの発生量や健康影響の観点から規則で定められた作業を指します。同じ屋内作業でも対象に該当する作業と該当しない作業があるため、まず作業内容を正確に確認することが、測定計画を立てる前提になります。
特定粉じん作業に該当しやすい工程と作業内容
特定粉じん作業は、業種名ではなく作業内容で判断します。実務上は、金属製品製造、鋳物、窯業・土石製品製造、建設・土木工事、鉱業などで関連工程が生じやすく、研削、砂落とし、粉砕、乾燥、岩石の掘削などが代表例です。具体的な分野と作業例は次の表のとおりです。
【特定粉じん作業に該当しやすい分野と代表的な作業例】
| 分野・工程 | 代表的な特定粉じん作業の例 |
|---|---|
| 金属製品製造 | 研削・研磨、ショットブラスト、切断作業など |
| 鋳物関連工程 | 鋳物砂の処理、型ばらし、砂落とし作業など |
| 窯業・土石製品製造 | セメント・石膏・活性白土の取り扱い、粉砕・乾燥作業など |
| 建設・土木工事 | 屋内・坑内でのコンクリート破砕、はつり、石材切断、トンネル掘削など |
| 鉱業・鉱物処理 | 岩石・鉱物の掘削・粉砕、採掘後の選別作業など |
土石・岩石・鉱物を扱う作業場で遊離けい酸測定が必要な場合
土石・岩石・鉱物を取り扱う作業場では、粉じん濃度の測定だけでは足りない場合があります。粉じん障害防止規則第26条第2項では、これらの物質に係る特定粉じん作業を行う屋内作業場について、空気中の粉じん濃度だけでなく、粉じんに含まれる遊離けい酸含有率の測定も事業者に義務づけています。遊離けい酸の割合は管理濃度の算定に直接かかわるため、作業環境を正しく評価するうえで欠かせない項目です。
ただし、取り扱う土石・岩石・鉱物中の遊離けい酸含有率が明らかな場合は、粉じん中の遊離けい酸含有率の測定を省略できます。扱う材料の組成を把握できているかどうかで、必要な測定項目が変わる点に注意が必要です。
粉じんの測定方法と管理濃度による評価の仕組み
粉じん 作業環境測定 併行測定
粉じんの作業環境測定は、空気中の濃度を測るだけで完結するものではありません。測定結果をもとに作業環境を評価し、その結果に応じて改善措置につなげる一連の流れで成り立っています。
測定では、作業場全体の平均的な状態を把握するA測定を行い、粉じんの発散源に近接する場所で作業が行われる場合などには、濃度が最も高くなると考えられる時間・位置でB測定も行います。得られた結果を管理濃度と比べることで、作業環境の状態を第1から第3までの管理区分に分けて評価します。
ここでは、測定方法と管理濃度による区分判定の仕組みを確認します。
ろ過捕集方法と相対濃度指示方法の測定原理
粉じん濃度の測定方法は、作業環境測定基準第2条で定められています。基本となるのは、分粒装置を用いるろ過捕集方法及び重量分析方法です。所定の分粒特性を持つ装置で吸入性粉じんをろ過材に捕集し、捕集前後の質量差から粉じん濃度(mg/m³)を求めます。
もう一つが、デジタル粉じん計などを用いる相対濃度指示方法です。散乱光などから相対濃度を測り、ろ過捕集方法との併行測定で求めた質量濃度変換係数(K値)などを使ってmg/m³に換算します。ただし、相対濃度指示方法は、原則として少なくとも1測定点でろ過捕集方法を同時に行う場合に用いる方法です。
管理濃度の算出方法と評価区分の判定基準
粉じんの管理濃度は、遊離けい酸の含有率によって変わります。算定には以下の式が用いられ、Eが管理濃度(mg/m³)、Qが遊離けい酸含有率(%)を表します。
E=3.0÷(1.19×Q+1)
この式では、遊離けい酸の割合が高いほど管理濃度は低くなり、より低い濃度でも改善が必要と判断されやすくなります。実際の評価では、A測定の第一評価値・第二評価値やB測定の測定値を管理濃度と比べ、作業環境を第1から第3の管理区分に分類します。
【管理区分の判定目安と必要な対応措置】
| 管理区分 | 判定の目安 (A測定・B測定を行った場合) |
主な対応措置 |
|---|---|---|
| 第1管理区分 | 第一評価値およびB測定値が管理濃度未満 | 現状の管理を継続 |
| 第2管理区分 | 第二評価値が管理濃度以下、かつB測定値が管理濃度の1.5倍以下 (第1管理区分を除く) |
設備・工程・作業方法の点検と改善に努め、評価記録などを労働者へ周知 |
| 第3管理区分 | 第二評価値が管理濃度を超える、またはB測定値が管理濃度の1.5倍を超える | 直ちに点検・改善措置を講じ、再測定・再評価、有効な呼吸用保護具の使用、健康保持措置などを実施 |
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第3管理区分となった場合の対応手順と記録義務
X線回折装置 島津製作所 XRD-6100
評価の結果、第3管理区分に区分された場合、事業者には速やかな対応が求められます。粉じん障害防止規則第26条の3では、直ちに施設、設備、作業工程、作業方法を点検し、その結果に基づいて作業環境を改善する措置を講じ、第1または第2管理区分にすることが義務づけられています。改善措置の後は、効果を確認するために再測定と再評価を行います。
作業環境管理専門家への意見聴取と改善措置の流れ
第3管理区分の状態が続く場合などには、事業者は社内だけで判断せず、外部の専門家の知見を取り入れる必要があります。粉じん障害防止規則では、その事業場に属さない「作業環境管理専門家」に、改善が可能かどうかの意見を聴くことを義務づけています。「作業環境管理専門家」とは実務経験6年以上の作業環境測定士をいいます。
専門家が改善できると判断すれば、事業者は速やかに改善措置を講じ、効果を確かめるための再測定と評価を行います。
一方、改善が難しいと判断された場合や再評価でも第3管理区分に区分された場合には、個人ばく露測定で労働者の呼吸域の濃度を把握し、結果に応じて有効な呼吸用保護具を使用させます。面体を有する呼吸用保護具では装着確認の記録保存、保護具着用管理責任者の選任なども必要です。
測定・評価記録の保存義務と労働者への周知方法
作業環境測定では、測定して終わりではなく、結果を記録し、必要な情報を労働者に伝えることまでが事業者の義務です。測定記録には、測定日時・測定方法・測定箇所・測定条件・測定結果・測定を実施した者の氏名・改善措置を講じた場合の概要を含める必要があり、これらを7年間保存しなければなりません。評価記録も、評価日時・評価箇所・評価結果・評価を実施した者の氏名を記録し、7年間保存します。
さらに、第2管理区分や第3管理区分となった場合には、評価記録や講じた措置などを労働者へ周知することが求められます。周知の方法としては、作業場の見やすい場所への掲示・備え付け、書面の交付、電子ファイル等を各作業場で常時確認できるようにする方法が定められています。
まとめ
粉じんの作業環境測定は、じん肺などの深刻な健康障害から労働者を守るため、法令で義務づけられた取り組みです。対象となるのは常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場であり、業種名ではなく実際の作業内容で判断します。測定では、ろ過捕集方法及び重量分析方法、必要に応じて相対濃度指示方法を用い、得た結果を遊離けい酸含有率から定まる管理濃度と比べて、第1から第3の管理区分に分類します。
第3管理区分となった場合は、直ちに改善措置を講じ、必要に応じて作業環境管理専門家への意見聴取や個人ばく露測定による対策へ進みます。測定・評価記録の7年間保存と労働者への周知まで含めて運用し、安全な作業環境づくりにつなげてください。
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