悪臭測定(臭気測定)とは?悪臭防止法の基準や臭気指数・特定悪臭物質・臭気判定士まで解説
事業活動に伴い工場や事業場から発生するにおいについて、近隣住民から苦情が寄せられることがあります。また、工場内設備の脱臭対策が十分に機能しているかを確認したい場面もあるでしょう。
こうしたときに必要になるのが、一般に臭気測定とも呼ばれる悪臭測定です。
悪臭測定では、人の嗅覚を用いてにおいを数値化する「臭気指数」と、悪臭の原因となる物質をガスクロマトグラフなどの精密機器で分析する「特定悪臭物質」の測定が主に用いられます。
本記事では、弊社の知見を交えながら、悪臭防止法の基本、測定場所の考え方、臭気指数と特定悪臭物質の違い、臭気判定士の役割まで解説します。
目次
1.悪臭測定(臭気測定)とは?まず押さえる全体像
2.悪臭防止法と「どこで測るか」の考え方
3.臭気指数とは?臭気判定(官能評価)で“におい”を数値化
3-1.臭気判定とは何か
3-2.臭気指数の測定の流れ
4.特定悪臭物質とは?原因物質を“成分として”捉える測定
5.臭気指数と特定悪臭物質の違い
6.臭気強度、臭気濃度、臭気指数は何が違う?
7.臭気判定士とは?悪臭測定での役割
7-1.臭気判定士とは、官能評価(臭気判定)を適切に行うための専門資格
7-2.依頼先選びの観点
8.まとめ
悪臭測定(臭気測定)とは?まず押さえる全体像
悪臭測定とは、工場や事業場から発生するにおいの強さや原因を調べるための測定です。
一般には「臭気測定」と呼ばれることもありますが、本記事では悪臭防止法に規定される「悪臭測定」を対象として解説します。
悪臭測定が必要になる主なケースは、次のとおりです。
・近隣から悪臭に関する苦情が出たとき
・行政への報告や対応が必要になったとき
・脱臭装置や排気設備の効果を確認したいとき
・工場や事業場のにおいの状況を客観的に把握したいとき
悪臭測定には、大きく分けて2つの方法があります。
一つ目は、人の嗅覚を用いてにおいを評価する「臭気指数」の測定です。人が実際に感じるにおいをもとに数値化するため、複数のにおいが混ざった複合臭の評価に用いられます。
二つ目は、機器分析により「特定悪臭物質」を測定する物質濃度測定です。アンモニアや硫化水素など、悪臭の原因となる22物質の濃度を成分ごとに把握できます。
このように、悪臭測定では「人がどう感じるか」と「どの物質がどの程度含まれているか」の両面から、においの状況を確認します。
悪臭防止法と「どこで測るか」の考え方
では、悪臭測定では実際にどこで測定すべきなのでしょうか。
悪臭防止法では、規制地域内の工場や事業場を対象に、測定すべき地点や基準が規定されています。とくに問題となりやすい測定箇所として敷地境界線が挙げられます。
悪臭防止法における主な基準は、次の3つです。
・1号基準:敷地境界線
・2号基準:煙突などの気体排出口
・3号基準:排出口からの排出水
敷地境界線は、工場や事業場のにおいが外部にどの程度排出されているかを確認する場所であり、悪臭の影響を測定するための基準線です。近隣住民がにおいを感じやすい場所のため、苦情対応では重要な測定地点になります。
一方、煙突や排気口などから排出されるにおいは、気体排出口で測定します。排水処理施設などでは、排出水に関する基準が問題になる場合もあります。
測定では、適切な手順で試料を採取し、得られた数値を地域の規制基準と照合します。基準値を超過している場合は、原因を特定し、設備改善や運用方法の見直しなどを進める必要があります。
また、行政への結果報告や近隣住民への説明が必要な場合には、特定悪臭物質では環境計量士が関与する計量証明書、臭気指数では臭気判定士による検査報告書が、客観的な資料として役立ちます。
臭気指数とは?臭気判定(官能評価)で“におい”を数値化
臭気指数とは、人の嗅覚を用いて、においを数値化する指標です。
悪臭は、複数の物質が混ざり合って発生していることも少なくありません。臭気指数は、特定の成分だけでなく、人が実際に感じるにおい全体を評価でき、近隣住民の悪臭に対する被害間隔と一致しやすい点が特徴です。
そのため、原因物質がはっきりしない複合臭の評価に用いられます。
臭気判定とは何か
臭気判定とは、人の嗅覚を使って、においの有無や強さを評価する方法です。測定結果は統計的に処理され、臭気指数として数値化されます。
判定に参加する人は、事前にパネル選定試験と呼ばれる嗅覚検査を受けます。5種類の基準臭に対して正常な嗅覚を持っていることが確認された人がパネルとして登録され、試験当日の体調を考慮したうえで登録されたパネルの中から6名を選定して測定に参加します。
測定手法の1つとして、「三点比較式臭袋法」があります。
三点比較式臭袋法では、臭気判定士が中心となり、採取した試料を希釈して判定用のにおい袋を調製します。具体的には、においのある「付臭におい袋」1つと、無臭空気のみを入れた「無臭におい袋」2つを用意します。
パネルは3つの袋を嗅ぎ、どの袋ににおいがあるかを選びます。この操作を各パネルについて、敷地境界線の環境試料では3回、排出口試料では、当該パネルが無臭におい袋を選定するか、付臭におい袋を選定することが不能となった時点で終了し、得られた希釈倍数と平均正解率から臭気指数を算出します。
臭気指数の測定の流れ
臭気指数の測定では、悪臭の発生状況を十分に確認したうえで、敷地境界線や気体排出口など、適切な測定地点を決めます。
次に、悪臭の発生箇所などから試料採取用袋で臭気を採取します。採取した試料は、臭気判定に用いるにおい袋へ希釈・調製されます。
その後、付臭におい袋と無臭におい袋を用いて、パネルによる判定を行います。判定結果をもとに、希釈倍数と平均正解率から臭気指数を算出します。
このように臭気指数は、人が実際に感じるにおいをもとにした指標です。成分分析だけでは把握しにくいにおいの強さを確認したい場合に有効です。
特定悪臭物質とは?原因物質を“成分として”捉える測定
次に、特定悪臭物質の測定について解説します。
特定悪臭物質とは、悪臭防止法に基づき、不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれがあるものとして国が指定した化学物質です。現在、22種類の物質が対象となっています。
代表的な物質には、アンモニアや硫化水素などがあります。これらは工場や事業場の排気、排水処理施設、廃棄物処理施設などで問題になることがあります。
特定悪臭物質の測定では、採取した臭気試料をガスクロマトグラフ(GC)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)などの分析機器に導入し、対象物質の濃度を測定します。
この測定では、ppbからppmという微量レベルで物質を定量できるため、「どの物質が、どの程度含まれているのか」を成分ごとに把握したい場合に適しています。
また、機器分析は環境省の特定悪臭物質測定マニュアルに準拠して行われます。測定条件や手順を適切に管理することで、成分ごとの濃度を再現性高く確認できます。
臭気指数と特定悪臭物質の違い
ここでは、臭気指数と特定悪臭物質の違いを整理します。
臭気指数は、人の嗅覚を用いて、においの強さや不快感を評価する指標です。特定悪臭物質だけでは評価しにくい複数のにおいが混ざった複合臭や、近隣住民の悪臭に対する被害感覚と一致しやすいという特徴があります。
一方、特定悪臭物質は、悪臭防止法で定められた22種類の化学物質を機器分析で測定する方法です。原因物質がある程度想定できる場合や、特定の工程・設備から発生する物質濃度を確認したい場合に適しています。
違いを整理すると、次のようになります。
・臭気指数:人の嗅覚を使ってにおいの有無や強さを評価する
・特定悪臭物質:悪臭防止法に基づき国が指定した化学物質
・臭気指数:複合臭や原因不明のにおいに有効
・特定悪臭物質:原因物質が明確な場合に有効
工場や事業場で原因が特定しきれない悪臭トラブルが発生した場合は、まず臭気指数による測定を行うことが有効です。臭気指数は、人が感じる不快感の総量を数値化できるため、近隣住民の苦情の実態に近い形でにおいの強さを評価できます。
そのうえで、原因物質の候補が見えてきた場合には、特定悪臭物質の測定を組み合わせることで、より具体的な対策につなげやすくなります。
臭気強度、臭気濃度、臭気指数は何が違う?
臭気に関する指標には、「臭気強度」「臭気濃度」「臭気指数」などがあり、それぞれ意味が異なります。
「臭気強度」は、人がにおいをどの程度強く感じるかを6段階で示す指標です。
「臭気濃度」は、においを無臭の空気でどれだけ薄めると感じなくなるかを示す値で、数値が大きいほど強いにおいを意味します。
「臭気指数」は、臭気濃度をもとに算出される指標で、規制や行政指導に用いられます。複数のパネルによる判定結果を統計処理して算出します。
また、複合臭の評価には臭気指数、原因物質が明確な場合には特定悪臭物質の測定が適しており、悪臭の状況や目的に応じて、適切な測定方法を使い分けることが重要です。
臭気判定士とは?悪臭測定での役割
臭気指数の測定では、臭気判定士が重要な役割を担います。臭気判定士は、官能評価による臭気判定を適切に行うための専門資格です。
臭気判定士とは、官能評価(臭気判定)を適切に行うための専門資格
臭気判定士は、悪臭防止法に基づく臭気指数の測定に関わる専門資格者です。
臭気指数の測定では、人の嗅覚を用いるため、試料の採取方法、パネルの選定、判定試験の進め方が結果の信頼性に大きく関わります。臭気判定士は、これらの工程を管理し、測定が適切に行われるよう統括します。
具体的には、工場や事業場の排気、悪臭苦情が発生している現場、脱臭装置の評価などにおいて、サンプリングやパネルの選定、判定試験、結果の算出を行います。
このように臭気判定士は、臭気指数の信頼性を担保するうえで欠かせない存在です。
依頼先選びの観点
臭気判定士に悪臭測定を依頼する場合は、資格の有無だけでなく、所属する会社の測定体制や実績も確認することが大切です。
たとえば、次のような点を確認するとよいでしょう。
・臭気判定士が在籍しているか
・悪臭防止法に基づく測定実績があるか
・工場や事業場での現場対応に慣れているか
・測定結果報告書がわかりやすいか
・測定後の原因整理や対策提案まで相談できるか
においの問題は、測定して終わりではありません。測定結果をもとに、発生源の特定や改善すべきポイントを整理し、具体的な対策につなげることが重要です。
そのため、測定だけでなく、現場確認や改善提案まで対応できる依頼先を選ぶと安心です。
まとめ
本記事では、悪臭防止法の基本や、臭気指数・特定悪臭物質の違い、臭気判定士の役割について解説しました。
悪臭測定は、苦情対応や行政への報告、脱臭対策の効果確認において、においの状況を客観的に把握するために重要です。
原因が分かりにくい複合臭には臭気指数、原因物質の候補がある場合には特定悪臭物質の測定が有効です。
においの問題は、放置すると近隣トラブルや企業の信頼低下につながるおそれがあります。早めに現状を把握し、必要に応じて対策を進めることが大切です。
弊社では、工場や事業場の現場確認から測定、分析、評価、対策提案までサポートしています。においに関するお悩みは、以下のリンクよりお気軽にご相談ください。