2023.09.14
コラム

安全データシート(SDS)を理解して化学品の危険性を把握しよう

安全データシートは、事業者が化学物質や化学物質を含んだ製品(化学品)を他の事業者に譲渡・提供する際に交付する化学品の危険有害性情報を記載した文書のことです。
今回は、安全データシートの見方と利用についてお話します。

目次
1.安全データシート(SDS)とは
2.GHS に基づくSDS の項目と内容
3.ラベル表示とSDS
4.SDSの入手方法
5.最後に

安全データシート(SDS)とは

化学品を取扱う際には、法律の規制の有無に関わらず、人の健康や環境への悪影響をもたらさないよう化学品を適切に管理する責任があります。そのためには、その成分や性質、取扱方法を把握する必要があります。

「安全データシート」(SDS:Safety Data Sheetの頭文字をとったもの)は、危険有害性情報を記載した文書のことです。化学物質や化学物質を含んだ製品を他者に譲渡・提供する際は、SDSを交付する必要があります。

SDSは国連が提唱するGHS「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)」という書式で記載され、16項目があります。各項目の要点を以下に記します。

GHS に基づくSDS の項目と内容

製品及び会社情報

製品名、製造会社(提供者)名、緊急時連絡先、推奨用途及び使用上の制限などが記載してあります。

危険有害性の要約

製品の内容物に則した危険有害性のGHS分類結果が記載してあります。GHS分類は、「物理化学的危険性」、「健康に対する有害性」、「環境に対する有害性」に関してどの程度の危険有害性があるかを判断するための分類基準です。危険有害性クラスの「物理化学的危険性」には、爆発物、可燃性などの17項目、「健康に対する有害性」には、急性毒性、眼刺激性、発がん性などの10項目、「環境に対する有害性」には、水生環境有害性とオゾン層への有害性の2項目があります。

図. GHS分類(危険有害性クラス)

引用:【厚生労働省】安衛法におけるラベル表示・SDS(安全データシート)提供制度

 

各危険有害性クラスにおいて危険有害性区分が示されています。また、その区分に対応した絵表示(ピクトグラム)があります。有害性が高い物質は、区分1で数字が大きくなるにつれ有害性が小さくなります。区分の基準より有害性が小さい場合は、「区分外」、有効なデータが無く、有害なのか安全なのか分からない場合は、「分類できない」、この項目には無関係な製品は「対象外」と表示されます。

図.GHS分類の例(危険有害性区分)

引用:【厚生労働省】安衛法におけるラベル表示・SDS(安全データシート)提供制度

 

絵表示は9種類あり、危険有害性区分に応じ表示することになっています。複数の危険有害性を持つ化学物質は、複数の絵表示が表示されます。これらは、現状得られるデータから判断される結果であり、必ずしも安全であることを保障するものでなく、新しい知見により変更される場合があります。

図.GHS分類の絵表示

引用:【厚生労働省】安衛法におけるラベル表示・SDS(安全データシート)提供制度

組成及び成分情報

「記載が義務付けられている危険有害性物質」が1%以上(特定第一種指定化学物質の場合は0.1%)含まれている成分の名称、含有量が記載されています。危険有害性が把握されていない成分情報の詳細が省略されていることがあります。また、企業の秘密情報保護のため正確な含有量が記載されていないことがあります(記載例:<15%, 20%~30%等)。

応急措置

化学品に作業者等がばく露された場合の応急措置が記載されています。皮膚に付着した場合、眼に入った場合、飲み込んだ場合などの措置です。

火災時の措置

火災が発生した際の対処法が記載されています。消火に使用する消火剤、使ってはいけない消火剤、消火の方法などです。

漏洩時の措置

化学品が漏出した際の対処法、注意すべき点が記載されています。人体や環境に対する注意事項、浄化や回収方法などです。

取扱及び保管上の注意

安全に取扱うための注意点や適切な保管条件が記載されています。取扱う際のばく露防止策やエアロゾル・ 粉じんの発生防止策、混合接触させてはならない化学物質や保管条件などです。

ばく露防止及び保護措置

作業者のばく露防止に関する情報や必要な保護措置について記載されています。ばく露限界値などの情報やばく露を軽減するための設備対策、適切な保護具の種類(マスク、保護メガネ、手袋など)などです。

物理的及び化学的性質

化学品の 物理的な性質、化学的な性質について記載されています。化学品の外観(物理的状態、形状、色など)、沸騰、引火点、自然発火温度、蒸気圧、比重、溶解度などです。

安定性及び反応性

化学品の安定性及び特定条件下で生じる危険な反応について記載されています。避けるべき条件(静電放電、衝撃、振動など)、混触危険物質、危険有害な分解生成物などです。

有害性情報

化学品の人に対する各種の有害性について記載されています。「2-2危険有害性の要約」の「健康に対する有害性」についての詳細情報になります。

環境影響情報

化学品の環境中での影響や挙動について記載されています。「2-2危険有害性の要約」の「環境に対する有害性」についての詳細情報になります。

廃棄上の注意

化学品を廃棄する際に注意すべき点について記載されています。廃棄の方法や容器・包装の適正な処理方法などです。

輸送上の注意

化学品を輸送する際に注意すべき点について記載されています。輸送に関する国際規制によるコード及び分類などです。

適用法令

化学品に適用される法令についての情報が記載されています。消防法、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法、化学物質排出把握管理促進法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、環境関連法令(水質汚濁防止法、大気汚染防止法、土壌汚染対策法)等の法令に該当する場合はその旨の記載があります。

その他の情報

上記までの項目以外で必要と考えられる情報が記載されています。引用文献などです。

ラベル表示とSDS

化学品の危険有害性情報の伝達方法には、製品の容器や包装に表示されているラベル表示よる方法もあります。ラベルには、SDSに記載されている内容が、抜粋されて表示されています。

図.ラベルの例

引用:【厚生労働省】安衛法におけるラベル表示・SDS(安全データシート)提供制度

1. 化学品の名称:製品の名称や物質の化学品特定名が記載されています。
2. 注意喚起語:危険性・有害性の程度を知らせる語句で、「危険」と「警告」の2種類あり、
より重大な方が「危険」になります。
3. 絵表示:危険性・有害性を絵で表しています。
4. 危険性・有害性情報:製品の全ての危険性・有害性が記載されています。
5. 注意書き:危険性・有害性から身を守るための情報が記載されています。
6. 供給者を特定する情報:化学品の製造業者又は供給者の名前、住所及び電話番号が記載されています。

SDSの入手方法

SDSの入手方法は、化学品の納品業者から紙面の他に磁気ディスク・光ディスクなどの記録媒体で入手可能です。納品業者から直接手渡ししてもらうかFAXや電子メールで送信してもらいます。また、SDSをWEBサイトに掲載している業者であれば、WEBサイトからダウンロードすることも可能です。

最後に

化学品を手に取った際、最初に見るのはラベル表示です。ラベルに危険・有害性の絵表示があった場合は、SDSを確認し、危険性や有害性を把握しましょう。事業者は、危険性や有害性に応じてリスクアセスメントを行い、リスクの高さに応じた対策を講じ、使用者に周知する必要があります。SDSを理解して適切に⾏動することで、化学物質による事故を防ぐことができます。

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参考資料
【独立行政法人 製品評価技術基盤機構】化学品のGHS分類とSDS解説/
・【厚生労働省】安衛法におけるラベル表示・SDS(安全データシート)提供制度
【経済産業省】化管法SDS 標準的な書式(JIS Z7253対応版)

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