オゾン層保護・地球温暖化防止とフロン対策

地上から10~50kmにはオゾン層があります。オゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護しています。近年、フロンなどの化学物質の影響でオゾンが減少しています。

目次
1.オゾンとは
2.オゾン層とは
2-1.大気の構造
2-2.オゾンの生成
2-3.オゾン層の破壊
3.フロン類とは
4.オゾン層保護の取り組み
5.フロンと地球温暖化の関係
6.最後に

オゾンとは

オゾン(O3)は酸素原子3個からなる気体です。反応性が高く、特徴的な刺激臭があります。太陽の紫外線や雷の放電により生成し、空気中にわずかに含まれています。オゾンは酸化力の強い物質で,わずかに水に溶けます。このことを利用して、人工的に生産し、除菌・殺菌に用いられることがあります。また、色々な化合物との反応性を利用して脱臭・脱色に用いられることもあります。一方、高濃度存在すると人体に影響を及ぼします。鼻や喉に刺激を与え、ぜん息や気管支炎などの呼吸器系への影響が現われます。また、眼などに刺激を与えることもあります。工場や車から出る窒素酸化物や炭化水素が太陽からの紫外線と反応してできたオキシダントには、オゾンが含まれています。そのほかにもPAN(ペルオキシアセチルナイトレート)などが含まれ、それらを総称してオキシダントと呼ばれています。

オゾン層とは

大気の構造

私たちが生活している地上から10kmくらいまでが対流圏と呼ばれています。それより上空の10km~50kmは成層圏と呼ばれています。その上空は、中間圏(50~80km)、その上空は、熱圏(80~800km)、その上空は、外気圏(800~10,000km)、その上空が宇宙空間です。大気中のオゾンは成層圏に約90%存在しており、このオゾンの多い層がオゾン層と呼ばれています。成層圏のオゾンは、太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護しています。また成層圏のオゾンは、紫外線を吸収するため成層圏の大気を暖める効果があり、地球の気候の形成に大きく関わっています。

図 大気の構造

引用:【気象庁 】オゾン層・紫外線の知識

オゾンの生成

地球上に海が生まれ、海の中に光合成生物が誕生すると、光合成によって大気中に大量の酸素が放出されるようになりました。酸素は、上空20km以上に到達すると、太陽の強い紫外線を受け酸素分子(O2)から酸素原子(O)に変わります。酸素原子は、まわりの酸素分子と結合してオゾン(O3)を生成します。一方でオゾンは酸素原子と反応して2つの酸素分子に変化し、消滅します。自然界のオゾンはこの生成と消滅のバランスにより濃度が保たれています。高度20kmより下では、オゾンの生成はほとんどありませんが、成層圏内の大気の流れによってオゾンが運ばれてきます。

オゾン層の破壊

近年、フロンなどのオゾン層破壊物質の影響でこのバランスがくずれはじめました。

フロンは大気中で分解しにくく、大気の流れによって成層圏にまで達します。高度40km付近の成層圏まで運ばれると、フロンは強い太陽紫外線を受けて分解し、塩素原子が発生します。この塩素原子が触媒となってオゾンを次々に壊してしまうため、オゾンの分解・生成のバランスがくずれ、オゾン層の減少が始まりました。

地球規模のオゾン全量は1980年代から1990年代前半にかけて大きく減少しました。1982年に日本の南極観測隊が、世界で初めて南極上空のオゾンの極端な減少を観測しました。その後、各国で観測が開始され、南極上空にオゾン濃度が低い穴の開いたような部分があることが確認されました。この穴を「オゾンホール」と呼びます。オゾンホールの発見は世界に大きな衝撃を与え、国際的なオゾン層保護の取り組みが開始されました。

図 上部成層圏でのオゾンの生成と破壊

引用:【経済産業省】ケミカル・ワンダータウン

フロン類とは

フロン類とは、フルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称であり、CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)がフロン類と呼ばれています。
化学的にきわめて安定した性質で扱いやすく、人体に対する毒性が小さいといった性質を有していることから、エアコンや冷蔵庫などの冷媒、断熱材等の発泡剤、半導体や精密部品の洗浄剤エアゾールなど様々な用途に活用されてきました。

オゾン層保護の取り組み

我が国では、国際的に協調してオゾン層保護対策を推進するため、1985年の「オゾン層保護のためのウィーン条約」、1987年の「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」に加入し、1988年、世界に先駆けて「オゾン層保護法」を制定しました。この法律に基づき、オゾン層破壊物質の生産規制や排出抑制に取り組んでいます。 また、フロン類の大気中への放出を防ぐため、「フロン排出抑制法」、「家電リサイクル法」及び「自動車リサイクル法」に基づき、製品を廃棄するときのフロン類の回収・適正処理を義務づけています。さらに、「フロン排出抑制法」では、製品の使用時におけるフロン類の漏洩防止対策を義務づけています。

フロンと地球温暖化の関係

CFC、HCFC はオゾン層保護対策として生産・輸入が規制されており温室効果も大きい物質です。CFC、HCFC の代替として、主にHFC(代替フロン)への転換を進めてきましたが、HFC はオゾン層を破壊しないものの、二酸化炭素の100 倍から10,000 倍以上の大きな温室効果があります。
そのため、ノンフロン・低GWP(地球温暖化係数)化や、既にフロン類(CFC, HCFC, HFC)が使われている製品からのフロン類の排出抑制が必要です。

図 各種フロンのオゾン層破壊係数と地球温暖化係数

引用:【環境省】オゾン層を守ろう

 

ODP:オゾン層破壊係数(CFC-11を1とした場合のオゾン層に与える破壊効果の強さを表す値)

GWP:地球温暖化係数(CO2を1とした場合の温暖化の影響の強さを表す値)

最後に

1987年9月16日に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択されたことにちなんで、毎年9月1日~30日の1か月間を「オゾン層保護対策推進月間」と定めています。また、国連環境計画(UNEP)では、1995年からモントリオール議定書が採択された9月16日を「国際オゾン層保護デー」(International Day for the Preservation of the Ozone Layer)と定めています。フロン類の排出を抑えることで、オゾン層の保護と地球温暖化の防止に役立ちます。エアコンや冷蔵庫を廃棄する際には、適正に処分することが求められています。

愛研の調査・測定についてはこちら
お問い合わせはこちら

合わせて読みたいコラム
・『自然環境保全法』を対象地域とともに分かりやすく解説します!
・生物多様性の消失を防止する取り組み『30by30』とは?

2006年12月より愛研の社内向けに発行している、「愛研技術通信」をPDFファイルとして公開しています。愛研についてもっと知って頂ける情報も満載です。ぜひそちらもご覧ください!
愛研技術通信はこちらから

 

ALL