生物多様性の消失を防止する取り組み『30by30』とは?

生物絶滅による生物多様性の消失を防止するため、2030年までに地球の表面積30%以上を保護区にする国際的取り組みがスタートします。これは「30by30」と呼ばれ、生物多様性条約の次期目標で、カナダ・モントリオールで開催されるCOP15でも議論されます。日本もこの国際イニシアチブに参加を表明し、2021年8月に小泉進次郎環境大臣が、「30by30」の基本コンセプトを発表しています。

目次
1.生物多様性条約とは
2.30by30とは
3.OECM(other effective area-based conservation measures)とは
4.30by30の実効性
5.最後に

生物多様性条約とは

生物多様性条約とは、(1) 生物の多様性の保全(2) 生物多様性の構成要素の持続可能な利用(3) 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分の3つを目的とした国際条約です。生物多様性は人類の生存を支え、人類に様々な恵みをもたらすものです。生物に国境はなく、世界全体でこの問題に取り組むことが重要です。このため、1992年5月に「生物多様性条約」がつくられました。2010年に愛知県名古屋市で開催された第10回締約国会議(COP10)で、「生物多様性戦略計画」及び2011年から2020年までの20の目標が掲げられました(愛知目標)。愛知目標の11番目に「陸域の11%、海域の10%が保護地域等により保全される」という目標があります。日本でも、自然環境保全地域や国立公園などの保護地域を指定し、徐々に保護区面積を拡大してきました。

30by30とは

このような取り組みにも関わらず生物多様性の消失は、歯止めがかかっていません。そのため、2021年以降の目標に、2030年までに保護区面積率を30%以上に拡大し生物多様性の損失傾向を食い止め、回復に向かわせることを目標とする「30by30」が設定されました。このイニシアティブに、G7をはじめ多くの国が参加を表明しました。また、2022年12月にカナダのモントリオールで開催されるCOP15第2部での採択を目指しています。

OECM(other effective area-based conservation measures)とは

OECM(その他の効果的な地域をベースとする手段)とは、COP14で以下のように定義されています。
「保護地域以外の地理的に画定された地域で、付随する生態系の機能とサービス、適切な場合、文化的・精神的・社会経済的・その他地域関連の価値とともに、生物多様性の域内保全にとって肯定的な長期の成果を継続的に達成する方法で統治・管理されているもの」保護区は生物多様性の保全を主目的とする地域ですが、OECMは、生物多様性の保全に貢献している保護区以外の地域です。例えば、農業生産を目的とした伝統的な土地利用によって生物多様性が非意図的に維持されてきた地域や都市の緑地として管理されている土地です。これらを保護区と認定し、生産活動や経済活動を行いながら保全維持を行っていこうという考え方です。2021年8月27日の小泉環境大臣の記者会見では「自然共生地域」と表現をしています。

30by30の実効性

保護区を30%に高めれば、生物多様性は保全されるのでしょうか?琉球大学の久保田教授の研究グループは、30by30の実効性を科学的に評価した論文を発表しました。研究グループは、国立公園や自然保護区のような公的保護区の拡大と民有地を対象にしたOECMをミックスして保全を行えば、絶滅リスクを7割低減する効果が見込めると報告しています。

引用:琉球大学】地球の陸と海の30%以上を自然環境エリアとして保全する「30by30」の実効性を科学的に評価

最後に

我々人類は、地球の生態系の一構成員として他の生物と共生しています。水や食料のほか呼吸に必要な酸素もその生態系からの恩恵です。生物の多様性は自然環境の持続可能な利用によって保全されると思います。

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参考資料
・【環境省】小泉大臣記者会見録(令和3年8月27日(金))
・【環境省】生物多様性 -Biodiversity- 
・【環境省】OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)の検討について

・【国立環境研究所】OECMs-保護区ともう一つの保全地域-

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