音の減衰や回折・吸音について徹底解説!

音にはさまざまな特徴があり、騒音対策などの工夫はこの特徴を理解し活用したものになります。ここでは基本的な音に関する減衰や回折、吸音について紹介したいと思います。

目次
1.音の距離減衰
1-1.点音源の距離減衰
1-2.線音源の距離減衰
1-3.面音源の距離減衰
2.音の回折
3.吸音と透過音
4.音の吸収
5.最後に

音の距離減衰

音は距離を置くことでその音が聞こえにくくなります。これは騒音対策でもよく活用されている手法の1つです。この現象は距離減衰といわれ、理論的には一つの点から音の減衰を考える「点音源の距離減衰」、鉄道など長い線状の音(理論上では無限に長い線状の音源)の減衰を考える「線音源の距離減衰」、面から音の減衰を考える「面音源の距離減衰」の3種類に分かれます。

点音源の距離減衰

1つの小さな点のように音源を限定して距離減衰を考え、アセスメントなどの騒音減衰のシミュレーションでよく活用される手法になります。この場合、距離が2倍で6dB減衰する特徴があります。後述に記載する線音源や面音源も無限でなければ、距離を置けば点音源として捉えることもありますが、完全な点音源は現実にほとんど存在しないため、測定値とシミュレーション結果で相違が生まれることもしばしばあり、注意が必要です。

理想的な点音源Pからd1離れた地点の球の単位面積A1とした場合d1の2倍の距離d2における球の単位表面積は4倍になります。したがって、Pから放射された音がA1を通過するエネルギーはd2の距離においてはA1と同じ面性部分を通過するエネルギーが1/4になります。
引用:【一般社団法人 日本環境測定分析協会】環境測定実務者のための騒音レベル測定マニュアル

線音源の距離減衰

無限に長い線状の音源として距離減衰を考え、音波が円筒状に拡散することを想定して算出します。この場合、点音源の距離減衰よりも音が減衰しにくく、距離が2倍で3dB減衰する特徴があります。ただし、現実には無限に長い線状の音は存在しないため、線音源の長さの1/3程度に離れた地点まではこの手法で算出されますが、それ以上離れると点音源として評価されます。

面音源の距離減衰

無限に近いほど広い面的な音源として距離減衰を考えますが、この場合は音圧が距離に関係なく一定と想定されるため、距離減衰しません。理想では、無限に近いほど広い範囲で音源が集まっていないといけないため、なかなか存在しませんが、音源が密集している大都会の地表面などは面的な音源として捉えることができます。

音の回折について

音が建物や塀に当たるとき、その障害物を回り込むように背後に音が到達することがあります。これを音の回折と呼び、騒音対策では防音壁などに活用されています。平面上での騒音対策のシミュレーションでは、よくフレネルの関係図を用いて回折の減衰量を求めることがあります。その関係図を下図に示しました。点音源と線音源で分けて算出することが可能で、行路差の2倍を波長で乗じたN数(フレネル数)をX軸から選択し、関係するY軸から減衰値(dB)を求めることができます。行路差をδ、波長をλとすると、N数はN=δ×2/λという式が成り立ちます。


引用:【一般社団法人 日本環境測定分析協会】環境測定実務者のための騒音レベル測定マニュアル

吸音と透過音

音が壁に当たるとき、回折の他にも音は反射や吸音または透過の現象を生じます。吸音とは音のエネルギーが熱のエネルギーに変換されることを指します。具体的には、グラスウールやフェルト、ウレタンのようにたくさんの空洞がある材質(多孔質材料)に音の振動エネルギーが入射すると、空洞内の摩擦抵抗で音は熱エネルギーに変わり、音が小さくなります。よく使われる材質としては、多孔質材料の他に多孔質板材料、防音シートなどの膜材料、石膏ボードなどの穴あき板材料などがありますが、材質の選定や構造の設計は、どの周波数帯の音を吸音させるかで決定します。

吸音は音のエネルギーを壁の材質で吸収して熱エネルギーに変えることでしたが、壁などの材料層へ入射した音が、通過した音を透過音といいます。マンションなどの建築物で、隣の部屋から聞こえる漏れた音などはこれに該当し、壁を隔てて、入射した側の音の大きさと透過した側の音の大きさにレベルの差が生じており、これを音響透過損失と呼びます。材料のカタログなどで、TLと表記があるものがこの音響透過損失を意味しており、JIS A 1416の音響透過損失による測定をした材料は、適切な音響性能を備えた建築部材の設計、遮音性能に基づいた建築部材の性能の比較及び分類がなされたものを指します。

音の吸収

音の吸収には、空気吸収と地表面吸収の2つの減衰があります。空気吸収とは、音波が空気中を伝わる時に、音の強さが次第に減衰する現状を言います。気温、湿度、気圧により異なる空気の粘性のため、減衰の程度は周波数により変化します。1km当たりの減衰量(dB)で示します。

一方、観測地点が音源に近い場合、観測地点では音源から直接伝わる音と地面から反射した音が合わさって聞こえます。観測地点と音源の距離が遠くなるにつれて反射音の影響は小さくなり、この現象を地表面吸収といいます。

最後に

音は見えないものなので想像できないところがあるかもしれませんが、物体の振動を起点とした現象のひとつですので、発生した音も、到達する音もある程度はコントロールすることができます。高速道路や工場などの遮音壁はこの音の減衰や回折をうまく利用し、騒音対策としてよく活用されています。多種多様な生活を送る人々にとって、これからの豊かな日常を送るためには、さらなる騒音対策を講ずることが企業側には求められることでしょう。

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