シックハウス症候群の原因・対策と室内空気環境の改善策
住宅室内における空気汚染問題である「シックハウス症候群」について説明します。
目次
1.シックハウス症候群とは?定義と広義・狭義の違い
1-1.シックハウス症候群の基本的な定義
1-2.広義のシックハウス症候群(生物的・化学的要因)
1-3.狭義のシックハウス症候群(揮発性有機化合物による健康影響)
2.シックハウス症候群の原因と発生メカニズム
2-1.住宅の高気密化と化学物質汚染が重なる発生要因
2-2.主な症状と個人差について
2-3.化学物質過敏症との違い
3.シックハウスの主な原因物質と室内濃度の指針値
3-1.室内空気中の主要な原因物質一覧
3-2.厚生労働省が定める室内濃度指針値の考え方
4.シックハウス症候群の検査・室内空気環境の測定方法
4-1.室内空気環境測定の種類と測定タイミング
4-2.測定結果の確認と専門家への相談窓口
5.シックハウス症候群の対策と予防方法
5-1.対策の基本的な考え方(発生源の低減と濃度管理)
5-2.化学物質を抑える建材・製品選びと生活習慣の工夫
5-3.カビ・ダニの発生を防ぐ湿度管理と清掃のポイント
6.シックハウス症候群の換気対策と建築基準法の規定
6-1.24時間換気システムの仕組みと正しい活用法
6-2.窓開け換気の効果的な方法と実践のコツ
7.まとめ
シックハウス症候群とは?定義と広義・狭義の違い
シックハウス症候群は住宅に居住することによって生じる体調不良の総称ですが、その定義には広義と狭義の二つの捉え方があります。広義では化学物質に限らずダニや真菌などの生物的要因による健康被害も含まれ、狭義では建材から放散される揮発性有機化合物の吸入による健康影響を指す表現です。
両者の違いを把握することで、原因の特定や対策の方向性が明確になります。
シックハウス症候群の基本的な定義
近年、住宅の高気密化などが進むことで、建材等から発生する化学物質に加え、換気不足などが重なり、室内空気が汚染されやすくなっています。こうした室内環境による健康影響が報告されており、これらの症状は「シックハウス症候群」と呼ばれています。その症状は、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など多岐にわたり、症状の現れ方や具合は個人差が大きいとされています。
広義のシックハウス症候群(生物的・化学的要因)
医学的に確立した疾患名ではなく、建物内に居住することに由来する様々な体調不良の総称として便宜的に用いられ、室内環境における化学物質だけではなく、ダニや真菌などの生物に暴露して生じる健康被害を総称しています。したがって、化学物質の影響だけではなく、気管支喘息や皮膚炎などのアレルギーも含まれます。
広義の定義は学術的整理であり、行政上は化学物質による健康影響(狭義)を中心に扱います。
狭義のシックハウス症候群(揮発性有機化合物による健康影響)
建材や内装材などから放散されるホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの揮発性有機化合物(VOC)の吸入暴露することで、健康影響が生じることがあります。これらの物質に短期間の曝露でも、目や鼻の刺激、頭痛などの急性症状が現れる場合があります。
シックハウス症候群の原因と発生メカニズム
シックハウス症候群は、住宅の高気密化と建材や日用品から放散される化学物質、生物的要因などが複合的に重なることで、室内環境に起因する様々な症状が生じます。眼や鼻、皮膚への刺激から頭痛、めまいまで症状は幅広く、同じ環境にいても強く反応する人とまったく影響を受けない人がいるなど、個人差が大きい点も特徴です。
よく混同される化学物質過敏症との違いも踏まえて、シックハウス症候群の発生メカニズムを正しく理解することが、室内環境の改善や予防に役立ちます。
住宅の高気密化と化学物質汚染が重なる発生要因
住宅の高気密化・高断熱化などが進み、建材から放出した化学物質が屋内にたまりやすくなっているため、化学物質による空気汚染が起こりやすくなるほか、湿度が高いと細菌、カビ、ダニが繁殖しやすくなります。建材だけではなく、一般的な暖房器具である石油ストーブやガスストーブからも一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの汚染物質が放出されており、たばこの煙にも有害な化学物質が含まれています。それ以外に、殺虫剤・防虫剤、日用塗料、家具、家電製品、衣料品、事務機器、家庭用洗浄・芳香剤等の住居者が購入した物品に含まれる成分が発散して空気汚染が起きます。
シックハウス症候群は、これらの要因が複合的に重なることで、シックハウス症候群と呼ばれる症状が生じます。人に与える影響には感受性の違いがあり、同じ部屋にいるのに、まったく影響を受けない人もいれば、敏感に反応し強い症状を訴える人もいます。
主な症状と個人差について
シックハウス症候群では、主に短時間の曝露で現れる急性症状が中心です。
• 眼に刺激感がありチカチカする。
• 鼻水や涙、咳が出る、鼻やのどが乾燥する、刺激感や痛みがある。
• 皮膚が乾燥したり、赤くなったり、かゆくなる。
• 頭痛やめまい、吐き気がする。
• 何となく疲れを感じる、集中力の低下、眠気が生じる。
• 嗅覚・味覚の異常を訴えることがある。
• 化学物質過敏症に近い反応など。
化学物質過敏症との違い
化学物質過敏症は特定の化学物質が原因と断定できる疾患名ではなく、微量の化学物質に対して過敏に反応する体質変化を伴う症候群として扱われます。原因は化学物質に限定され、種々の化学物質の暴露に誘発されて多臓器症状があらわれ、経過が慢性です。一部の人では高濃度暴露を契機に症状が現れることがありますが、発症機序は完全には解明されておらず、化学物質への感作、自律神経の変化、ストレスといった複数要因が関与すると考えられています。その様々な症状を示すようになった人が、体質の変化後に同じもしくは類似の化学物質に暴露されるたびに、同じ症状が繰り返されるだけでなく、次第に重くなる傾向があります。
化学物質過敏症になった人は、空気中の化学物質の濃度が健康な人であれば何の問題もないレベル(場合によっては1桁以上も低い)で症状が起きてしまいます。
よって、家屋・建材に問題がない場合でも、居住者の体質や健康状態により症状が生じることがあります。
シックハウス症候群は発生場所を示した名称です。広義のシックハウス症候群の原因には生物的要因(ダニ・カビ等)が含まれます。室内濃度が高い場合、多くの人で症状が出る可能性がありますが、感受性には個人差があります。
また、問題となる物質が存在する室内環境を離れると症状が軽快するため、室内環境の要因が関与していると考えられます。
化学物質過敏症、シックハウス症候群の両疾患ともに、どの程度の空気中濃度で発症するのか、症状の有無や種類、その程度には個人差があります。
シックハウスの主な原因物質と室内濃度の指針値
シックハウス症候群を引き起こす原因物質には、建材や家具などから放散される化学物質が数多く存在します。代表的なものとしてホルムアルデヒドやトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどがあり、厚生労働省はそれぞれの室内濃度指針値を定めています。原因物質の特徴と指針値の意味を把握することは、住まいの健康管理に直結する重要な情報です。
室内空気中の主要な原因物質一覧
シックハウス症候群の原因物質は、合板の接着剤や塗料、防虫剤、可塑剤、殺虫剤、石油ファンヒーターなど、住まいや日用品、暖房器具の幅広い場面で用いられています。次の表は厚生労働省が指針値を定めた代表的な物質と、主な放散源、指針値をまとめたものです。
| 物質名 | 主な用途 | 主な放散源(製品・建材) | 分類 | 厚労省指針値(25℃) |
|---|---|---|---|---|
| ホルムアルデヒド | 接着剤・防腐剤 | 合板、壁紙用接着剤、防カビ剤、MDF | 建材系 | 100 μg/m³ (0.08 ppm) |
| トルエン | 接着剤・塗料の溶剤 | 内装材・家具の接着剤、塗料 | 建材系 | 260 μg/m³ (0.07 ppm) |
| キシレン | 接着剤・塗料の溶剤 | 内装材・家具の接着剤、塗料 | 建材系 | 200 μg/m³ (0.05 ppm) |
| エチルベンゼン | 接着剤・塗料の溶剤 | 内装材・家具の接着剤、塗料 | 建材系 | 370 μg/m³ (0.085 ppm) |
| スチレン | 樹脂・合成ゴムの原料 | 畳心材、断熱材、ポリスチレン樹脂 | 建材系 | 220 μg/m³ (0.05 ppm) |
| アセトアルデヒド | 接着剤・防腐剤 | 接着剤、防カビ剤、香料 | 建材系 | 48 μg/m³ (0.03 ppm) |
| パラジクロロベンゼン | 防虫・芳香 | 衣類の防虫剤、トイレ用芳香剤 | 日用品系 | 240 μg/m³ (0.04 ppm) |
| クロルピリホス | 防蟻剤・農薬 | シロアリ駆除剤(居室への使用禁止) | 建材系 | 1 μg/m³ (0.07 ppb) ※小児は0.1 μg/m³ |
| テトラデカン | 塗料の溶剤 | 灯油、塗料 | 日用品系 | 330 μg/m³ (0.04 ppm) |
| フタル酸ジ-n-ブチル | 可塑剤 | 塗料・接着剤の添加剤 | 建材系 | 17 μg/m³ (1.5 ppb) |
| フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | 可塑剤 | 壁紙・床材 | 建材系 | 100 μg/m³ (6.3 ppb) |
| ダイアジノン | 殺虫剤 | 家庭用殺虫剤 | 日用品系 | 0.29 μg/m³ (0.02 ppb) |
| フェノブカルブ | 防蟻剤 | シロアリ駆除剤 | 建材系 | 33 μg/m³ (3.8 ppb) |
| 総揮発性有機化合物(TVOC) | ― | 接着剤・殺虫剤等(複合) | 複合 | 暫定目標値 400 μg/m³ |
参考:厚生労働省|シックハウス対策 室内濃度指針値 室内濃度指針値一覧表
※フタル酸エステル類は指針値ではなく、健康影響評価に基づく評価値が示されています。
※TVOCは指針値ではなく、室内環境改善のための暫定目標値です。
建材選定時にはホルムアルデヒドの放散量を示すF☆☆☆☆〜F☆の等級表示が参考になり、星マークが多いほど放散量が少なく安全性の高い建材といえます。
※F☆☆☆☆は「使用制限なし」を示す等級であり、放散量がゼロという意味ではありません。
厚生労働省が定める室内濃度指針値の考え方
指針値とは、現時点の科学的知見に基づき、人がその濃度の空気を一生涯にわたって暴露しても、健康への有害な影響を受けない判断される濃度を指します。
注意すべき点は、指針値は安全基準ではなく、健康影響が生じないと判断される濃度の目安として設定されている点です。日常生活では指針値そのものよりも、室内濃度をできるだけ低く保つことが、シックハウス症候群の予防につながります。
シックハウス症候群の検査・室内空気環境の測定方法
シックハウス症候群が疑われる場合や新築・リフォーム後の入居前には、室内空気環境の測定を行うことが有効です。化学物質の濃度を実測することで、健康被害のリスクを事前に評価できます。
測定には簡易的なものから機器を用いた本格的なものまで複数の方法があり、自治体や専門機関の相談窓口を活用することも大切です。
室内空気環境測定の種類と測定タイミング
室内空気の測定には、検知管による簡易測定と、機器を用いた精密測定があります。 どの方法を採用するかは自治体によって異なります。 測定は新築・改築後の入居前が望ましく、揮発性物質は気温や締め切り状態で濃度が上がるため、測定時は「換気→締め切り」の手順で環境を整え、 一定条件で採取することが求められます。
測定結果の確認と専門家への相談窓口
測定結果は厚生労働省の室内濃度指針値と照合し、指針値を超過した場合は窓を2箇所以上開けるなど換気を強化し、可能であれば原因となる建材や家具の発生源を取り除く対応が必要です。自治体では区役所衛生課や生活衛生課で住まいに関する相談を受け付けており、自治体によっては訪問調査や簡易測定にも対応しています。
体調不良が続く場合は症状に応じて医療機関の受診が必要となる場合があります。その際、測定結果や使用建材の情報をあわせて伝えると診断の参考になります。
シックハウス症候群の対策と予防方法
シックハウス症候群を防ぐためには、原因物質の発生を抑え、室内濃度を健康被害が生じないと判断されるレベルまで下げる工夫が大切です。
発生源の低減という基本的な考え方を踏まえ、化学物質の少ない建材選びや生活習慣の見直し、湿度管理によるカビ・ダニ対策まで、複数の視点から取り組むことで効果的な予防につながります。
対策の基本的な考え方(発生源の低減と濃度管理)
生活環境が原因と考えられる症状への対策では、まず生活環境を改善し、症状の発生を予防することが重要です。 ただし、原因となる化学物質を生活環境から完全に排除することは困難です。 そのため、室内空気中の原因物質濃度を、健康影響が生じないと判断されるレベルまで低減することが求められます。
化学物質を抑える建材・製品選びと生活習慣の工夫
新築やリフォームの際には、工務店や設計者と十分に話し合い、希望に沿った材料選びを行うことが大切です。 建材の選定では、可能な限りVOCs(揮発性有機化合物)の放散が少ないものを選ぶことが基本となります。 例えば、合板や壁紙、建材、接着材などから発生するホルムアルデヒドについては、JIS・JAS・各材料工業会により放散量に応じてF☆☆☆☆〜F☆の等級が表示されているため、参考にできます。 また、換気口を適切な位置に配置し、空気の流れを確保することが重要です。24時間換気設備は常時運転を前提として設計されているため、家具などで吸気・排気を塞がないようにし、適切に稼働させることが求められます。
また、室内におけるVOCsの発生源は、新築時の壁紙や建具などの建材だけではなく、入居後に購入した家具、カーテン、カーペット、防虫剤なども含まれます。 物品を購入した際には、表面のほこりや加工時の残留物を軽く拭き取ることで、付着物によるにおいや刺激を減らせる場合があります。 一方、使用しているうちに物品内部から揮発成分が放散することがあるため、定期的な換気を行い、風通しの良い状態を維持することが重要です。
防虫剤、塗料、接着剤、ワックスなどの製品は、使用時に揮発成分が放散するため、換気を行い空気の流れを確保することが望まれます。 また、暖房器具を室内燃焼型(石油ストーブ・ガスストーブ等)から、エアコン・床暖房・オイルヒーターなどの非燃焼型に変更することで、室内空気質の改善が期待できます。 クリーニングでは有機溶剤が使用されますが、洗浄後の衣類には通常ほとんど残留しません。ただし、クリーニング後の衣類はカバーで密閉されているため、わずかに残った溶剤が内部にとどまる場合があります。 カバーを外し、風通しの良い場所でしばらく保管することで、残留溶剤の揮散が促されます。
生活する上で、原因となる化学物質をまったく使用しないことは現実的ではありません。 そのため、物品を購入する際には、製品に使用されている化学物質の種類を確認し、放散量の少ない製品を選択することが推奨されています。 また、製品を使用する際には、適切な使用量を守り、換気や清掃を行うことで室内空気質の悪化を抑えることができます。
カビ・ダニの発生を防ぐ湿度管理と清掃のポイント
住宅環境や日常生活の中で、カビやダニの発生につながる要因を改善することが重要です。 カビやダニは高湿度を好むため、冬季に窓周辺で結露が生じる場所では繁殖しやすくなります。室内の過度な加湿を避け、結露が見られる場合は拭き取りにより湿気の滞留を抑えられます。 また、家具裏や押し入れなど空気が通りにくい場所は湿気がたまりやすいため、家具・家電は壁から適度に離して設置し、空気の流れを確保します。押し入れなどはスノコの使用や定期的な点検・換気が有効です。 さらに、ダニの死骸や抜け殻、ホコリなどのハウスダストも室内環境の悪化要因となります。掃除時に換気を併用する、拭き掃除や掃除機による除去を適切に行うことで、室内の清浄度を保つことができます。必要に応じて空気清浄機を使用し、フィルターの定期的な交換や機器内部の清掃を行うことが望まれます。
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シックハウス症候群の換気対策と建築基準法の規定
シックハウス症候群を予防するためには適切な室内換気が重要です。建築基準法でも新築住宅への機械換気設備の設置が義務付けられており、24時間換気システムの仕組みを理解し窓開け換気と組み合わせて活用することが、室内に蓄積した化学物質の濃度を下げる効果的な対策となります。
24時間換気システムの仕組みと正しい活用法
24時間換気システムは、平成15年の建築基準法改正により新築住宅への設置が義務付けられた設備で、一般住宅では換気回数0.5回/h以上、すなわち約2時間で室内の空気が入れ替わる換気量が求められています。 音や寒さを理由に停止されることがありますが、室内の化学物質を継続的に排出するためには常時稼働が不可欠です。
また、給排気口を家具などで塞がず、できる限り開放した状態を保つことで、換気システムが本来の性能を発揮し、シックハウス症候群の予防効果を高めることができます。
窓開け換気の効果的な方法と実践のコツ
窓開け換気を行う際は、2箇所以上の窓を開けて空気の出入口を確保し、風の通り道をつくることが基本です。新築やリフォーム直後の住宅では入居前の換気が重要であり、入居後もホルムアルデヒド濃度が低下する数カ月間は、1時間に1回程度の窓開け換気が有効です。短時間の換気でも室内濃度の低減に効果があります。
なお、家庭用エアコンの多くは室内空気を循環させる機能のみであるため、エアコンの使用だけでは換気にはならず、窓開けや換気扇との併用が必要です。
まとめ
住宅の高気密化により建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等によって引き起こされる症状を「シックハウス症候群」といいます。症状として、眼や粘膜に刺激や身体の不調などがあらわれることがあり、個人差が大きいとされています。主な対策としては、原因物質の発生源を低減し、換気・清掃等をして室内の空気中から原因物質の濃度を下げることが重要です。
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