「シックハウス症候群」の原因と対策

住宅室内における空気汚染問題である「シックハウス症候群」について説明します。

目次
1.定義
2.シックハウス症候群の原因
3.主な原因物質と室内濃度の指針値
4.防止対策
5.換気について
6.まとめ

定義

シックハウス症候群とは

近年、住宅の高気密化などが進むに従って、建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等と、それによる健康影響が指摘され、「シックハウス症候群」と呼ばれています。その症状は、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など人によってさまざまです。

広義

建物内に居住することに由来する様々な体調不良の総称として便宜的に用いられ、室内環境における化学物質だけではなく、ダニや真菌などの生物に暴露して生じる健康被害を総称しています。したがって、化学物質の影響だけではなく、気管支喘息や皮膚炎などのアレルギーも含まれます。

 狭義

建材や内装材などから放散するホルムアルデヒドおよびトルエンをはじめとする揮発性有機化合物の吸入暴露による健康影響をさします。

シックハウス症候群の原因

発生要因

住宅の高気密化・高断熱化などが進み、湿気や建材から放出した化学物質が屋内にたまりやすくなっているため、化学物質による空気汚染が起こりやすくなるほか、湿度が高いと細菌、カビ、ダニが繁殖しやすくなります。建材だけではなく、一般的な暖房器具である石油ストーブやガスストーブからも一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの汚染物質が放出されており、たばこの煙にも有害な化学物質が含まれています。それ以外に、殺虫剤・防虫剤、日用塗料、家具、家電製品、衣料品、事務機器、家庭用洗浄・芳香剤等の住居者が購入した物品に含まれる成分が発散して空気汚染が起きます。シックハウス症候群は、それらが原因で起こる症状です。人に与える影響は個人差が大きく、同じ部屋にいるのに、まったく影響を受けない人もいれば、敏感に反応し強い症状を訴える人もいます。

主な症状

  • 眼に刺激感がありチカチカする。
  • 鼻水や涙、咳が出る、鼻やのどが乾燥する、刺激感や痛みがある。
  • 皮膚が乾燥したり、赤くなったり、かゆくなる。
  • 頭痛やめまい、吐き気がする。
  • 何となく疲れを感じる、集中力の低下、眠気が生じる。
  • 嗅覚・味覚の異常。
  • 化学物質過敏症に近い反応など。

化学物質過敏症との相違点

化学物質過敏症は原因物質名を示した疾患名です。原因は化学物質に限定され、種々のにおいに誘発されて多臓器症状があらわれ、経過が慢性です。一旦ある化学物質に高濃度で暴露された後に、身体の目・鼻・喉・皮膚等の様々な箇所に症状や頭痛などの体調悪化があらわれる体質になってしまうことがあります。その様々な症状を示すようになった人が、体質の変化後に同じもしくは類似の化学物質に暴露されるたびに、同じ症状が繰り返されるだけでなく、その症状が次第に重くなります。その化学物質の空気中の濃度は、普通の健康な人であれば何の問題もない濃度レベル(場合によっては1桁以上も低い)濃度で症状が起こってしまいます。よって、家屋・建材には問題がなく、居住者の身体的な疾患です。

シックハウス症候群は発生場所を示した名称です。広義のシックハウス症候群の原因には生物的要因(ダニ・カビ等)が含まれます。室内の化学物質の濃度レベルが高いため、問題となる化学物質に汚染された室内に入れば誰にでもその症状がおこり得ます。

また、問題となる物質がある空気質の室内を離れると症状が軽快します。よって、居住者の身体的な疾患ではなく、家屋・建材の問題といえます。

化学物質過敏症、シックハウス症候群の両疾患共に、どの程度の空気中濃度で発症するのか、症状の有無や種類、その程度には個人差があります。

主な原因物質と室内濃度の指針値

引用:厚生労働省「室内空気中化学物質の室内濃度指針値について」

防止対策

対策の考え方

生活している環境が原因と考えられる環境起因性疾患患者さんの対策としては、普段生活している環境を改善することによって症状が起こらない様に予防することが最も重要です。しかし、シックハウス症候群の症状を引き起こしてしまう原因の化学物質を、生活環境から完全に消失させる・使用しないことは不可能です。なので、生活環境の空気に含まれる原因物質濃度を、ほとんどの人が健康被害を生じないレベルまで低下させることとなります。

化学物質対策

新築する・リフォームなどの前に、工務店や設計者と十分な話し合いを行い、自分の希望をしっかり伝えて材料選びを行うことが大切です。

建材の選定には、可能な限りVOCs(揮発性有機化合物)の放散が少ないものを選ぶことが基本となります。例えば合板や壁紙、建材、接着材などから発生するホルムアルデヒドは、JIS、JAS,各材料工業会によって発散速度に応じて等級表示F☆☆☆☆からF☆が表示されているので参考にしてください。
部屋の適切位置に換気口を配置し稼動させることで空気の流れを確保し、その空気の流れの導線を家具などで妨げないようにします。換気扇や24時間自動換気だけではなく、定期的に窓を開けるなどの換気も行ってください。

また、室内におけるVOCsの発生源は、新築時の壁紙などの内装材・建具などの建物に付随するものだけが原因とは限りません。入居後に居住者が購入した物品(家具、カーテン、カーペット、防虫剤など)も発生源となりえます。物品を購入した後は、その製品の表面を拭くなどして表面上の化学物質を除去してから使用する。使用しているうちに、物品の内部にあった化学物質が表面上に滲み出てくることもあるので、定期的に拭き掃除を行う・部屋の扉や窓などを開放して換気を実施するなどをこころがけて、風通しの良い状態を維持します。

防虫剤・塗料・接着剤・ワックスは、換気しながら風通しの良い状態で使用してください。暖房器具を石油ストーブやガスストーブなどの室内で燃焼を行う製品から、エアコン・床暖房・オイルヒーターなどに変更することにより、空気質を改善することが期待できます。クリーニングにも有機溶剤などの化学物質を使用しています。洗浄が完了した衣類からは概ね溶剤はなくなっていますが、クリーニング後の衣類はカバー等がされているため、わずかに残った溶剤がとどまっている場合があります。クリーニング後の衣類は、カバー等の袋を外してしばらく風通しの良い場所で干すことにより、残っていた溶剤が揮散します。

生活する上で、原因となる化学物質をまったく使わないのは不可能ですから、物を購入する時には、その商品に使用されている化学物質を確認し、なるべく原因となる物質の使用量や発生が少ないもの物を選んで購入し、使用時は使用量を守り、換気・清掃を心掛けてみてください。

カビ・ダニ対策

住宅環境、日常生活の中で、カビ・ダニ発生の原因と思われる点を改善します。カビ・ダニなどの生物は高湿度を好む習性をもっています。たとえば冬に住宅内で窓に結露が起こっている場所は繁殖しやすくなります。対策としては、室内に必要以上の加湿をしない・小まめに窓拭き掃除等を行うようにします。

室内空気が通りにくい家具裏や押し入れ等は湿気がたまりやすくなります。家具・家電製品は隙間をあけて設置し、空気が通りやすいように工夫します。押し入れ等はスノコ等を壁面に設置するほか、定期的に点検・空気の入れ換えを行ってください。

また、ダニの死骸や抜け殻の他、ホコリなどのハウスダストも原因となります。掃除をするときには、換気しながら拭き掃除や掃除機をかけるなど、効果的なカビ・ダニ対策を講じる必要があります。場合によっては空気清浄機を活用し、定期的に機内清掃・フィルター交換をしてください。

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換気について

換気については、改正建築基準法によりシックハウス症状群対策として、基本的に住宅の居室全体を換気する全般換気を、24時間・換気回数0.5回/時間が義務付けされています。これを適切に行えるよう全般換気を常に作動させる、フィルターの定期的な清掃、換気口付近に家具などを置かず空気の流れを妨げないようにすることが重要です。

そのほか、定期的な窓開け換気を行うことで新鮮な空気の入れ換えが行えます。

まとめ

住宅の高気密化により建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等によって引き起こされる症状を「シックハウス症候群」といいます。症状として、眼や粘膜に刺激や身体の不調などがあらわれます。主な対策としては、原因物質の使用量を低く抑える・換気清掃等をして室内の空気中から原因物質の濃度を低くするなどになります。

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参考資料
【厚生労働省】シックハウス症候群
【厚生労働省】室内空気中化学物質の室内濃度指針値について

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