振動加速度と振動速度と振幅について

振動とは、ある位置の大きさが時間とともに大きくなったり、小さくなったりする現象をいいますが、振動の物理量は変位、速度、加速度に分類されます。一般的に扱われる振動レベルとは鉛直方向の振動加速度レベルを感覚補正した値で、加速度を基本に求められています。今回はこの加速度と他の物理量の関係について紹介したいと思います。

目次
1.振動の基本
2.振動の3つの物理量
2-1.変位
2-2.速度
2-3.加速度
3.それぞれの物理量の関係性
4.振幅の大きさを求める
5.最後に

振動の基本

振動が伝わる現象を「振動波」といいます。振動波は、媒質内部を伝搬する「実体波」と媒質の表面のみを伝搬する「表面波」に分けられます。実体波はP波と呼ばれる縦波、S波と呼ばれる横波が存在し、地震などで観測されます。また表面波は上下動と水平動からなる楕円振動のレイリー波、表面に平行で進行方向に垂直な振動のラブ波が存在し、工場や建設振動測定などで観測されます。縦波は、振動の方向と同一方向で伝わるため、地盤中にエネルギーの疎と密が起こり、「ばね」のように伝搬していきます。横波は、振動の方向と直角方向で伝わるため、地表面で上下方向に変位し、縄をゆすった時のような「うねり」でイメージできます。レイリー波は、水面に風が吹いたときのような「さざなみ」に似た動きをします。

振動の3つの物理量

変位

変位とは、物体の位置が変化することをいいます。止まっている物体では物体の大きさの変化量として、動いている物体では物体の移動量として表します。また、振動の場合の変位は振幅として表されます。振幅の変位dは、doが初期位置、ωを角周波数、tを時間とすると以下の関係性があります。

一般的に変位を英語にしたdisplacementの頭文字から、変位はdとして表されることが多く、SI単位ではm(メートル)で扱われます。

速度

速度とは、物体の単位時間当たりの移動距離のことをいいます。ある時間内で移動した距離をその単位時間で割ることで速度を求めることができます。ただし、現実には速度が一定という状態は存在しないため、移動距離(変位)を細かい間隔で微分する必要があります。速度vは変位d当たりを時間tで微分するため、関係式は以下の通りになります。

正弦波の場合は、本来の初期位相角φがπ/2の位置(振幅のプラス側とマイナス側の中間位置)に相当するため、速度は変位に対して位相が90°進んでいることを意味します。
一般的に速度を英語にしたvelocityの頭文字から、速度はvとして表されることが多く、SI単位ではm/s(メートル毎秒)で扱われます。

加速度

加速度とは、言葉どおり車の運転でアクセルを踏んだ時のような加速を意味し、物体の単位時間当たりの速度の変化量のことをいいます。加速するイメージと同じように、速度は徐々に変化するため、加速度の中の速度を細かい間隔で微分する必要があります。加速度aは速度v当たりを時間tで微分するため、関係式は以下のとおりになります。

正弦波の場合は、速度に対する初期位相角φはπ/2の位置となり位相が90°進んでいることを意味し、変位に対する初期位相角φはπの位置となり位相が180°進んでいることを意味しています。一般的に加速度を英語にしたaccelerationの頭文字から、加速度はaとして表されることが多く、SI単位ではm/s2(メートル毎秒毎秒)で扱われます。

それぞれの物理量の関係性

変位を微分すると速度になり、速度を微分すると加速度になります。これは高校の数学で習う微分積分の関係と同じであるため、加速度を積分すると速度になり、速度を積分すると変位になります。また、振動が正弦波である場合、ωは2πfとみなせるため、以下の関係が成り立ちます。

例えば、32Hzで変位10mm(0.01m)の振動は、以下のように速度と加速度を求めることができます。

振幅の大きさを求める

振動の大きさを求める場合、以下の3つの方法によって数値化することができます。

①P-P値

ピークtoピーク評価という数値化方法で、振幅のプラス側の最大値とマイナス側の最大値の幅をいいます。表現としては100mm(P-P)になります

②P-0値

ピーク評価という数値化方法で、振幅の初期位置からプラス側最大値の幅をいいます。表現としては100mm(P-0)になります。

③実効値(RMS値)

実効値評価という数値化方法で、交流電圧のように時間とともにピークが絶えず変化しているときに扱います。これはある一定時間の波形レベルの絶対値の平均に相当し、正弦波の振幅dでは1/√2に等しい0.707dで求めることができます。表現としては100mm(RMS)になります。

最後に

音の測定では、音圧といった物理量のみを対象にしますが、振動の場合は、変位、速度、加速度から適した物理量を選ぶ必要があります。また、振動には方向があるため、物理量の選択と併せて、何を目的として測定するのか予め決めておく必要があります。
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