『液体クロマトグラフ』と『ガスクロマトグラフ』の3つの違い
分析手法の一つとして液体クロマトグラフィーとガスクロマトグラフィーがよく用いられています。名前がよく似ている2つですが違う点があります。今回はこの2つの違いについて説明したいと思います。
目次
1.クロマトグラフィーとは
2.液クロ・ガスクロとは
2-1.液体クロマトグラフィー
2-2.ガスクロマトグラフィー
3.液クロ・ガスクロの比較
3-1.分析対象試料
3-2.カラム
3-3.移動相
4.まとめ
クロマトグラフィーとは
液体クロマトグラフィーとガスクロマトグラフィーにはどちらにも「クロマトグラフィー」という言葉が共通しています。
クロマトグラフィーとは試料中の各成分を分離する分析方法の総称です。試料中の成分を固定相と移動相との特性の差を利用して分離します。分析対象成分同士または対象成分と夾雑成分の分離を目的として利用されています。
移動相に液体を使用するものを液体クロマトグラフィー(液クロ・LC)と呼び、気体を使用するものをガスクロマトグラフィー(ガスクロ・GC)と呼んでいます。
液クロ・ガスクロとは
液クロとガスクロそれぞれの特徴について簡単に説明していきます。
液体クロマトグラフィー
液体クロマトグラフィーの中でよく用いられている手法の一つとして高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liquid Chromatography)と呼ばれるものがあります。一定の速度で送液できるポンプを使用して移動相を流します。流れている移動相に導入された試料はカラムの固定相と移動相との吸着の差によって分離されます。液体または溶媒に溶ければ分析することができるため製薬、食品、化粧品など様々な分野で活躍しています。
近年HPLCに比べピークの分離の向上と分析時間を短縮させるためより高圧で分析できるように超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)なども開発されています。
ガスクロマトグラフィー
分析対象としてガス状物質または熱を加えることでガス化する物質を分析することができます。移動相に使用するガスボンベを設置する場所の確保が必要となります。分離がよいため混合成分やガス分析に広く使用されています。
液クロとガスクロの比較
液クロとガスクロのそれぞれの説明をしました。ここでは分析機器の主な特徴について比較をしていきたいと思います。
分析対象試料
液クロ ・・・液体または何かしらの溶媒に溶けるもの。
ガスクロ・・・ガス状物質または熱に分解せず加熱することでガス化するもの。
分析できる物質の範囲は液クロのほうが溶媒に溶ければ分析することができるため、ガスクロよりも広くなります。しかし、ガス状成分をそのまま機械で分析できるのはガスクロだけです。そのため試料によって機械を使い分ける必要があります。
分離カラム
液クロ ・・・移動相と分離カラムの組み合わせによってさまざまな分離モードがあります。対象成分によって全く異なる性質の分離カラムを使用することができます。
ガスクロ・・・キャピラリーカラムとパックドカラムの2種類あります。分離する能力が高いため数十種類の物質を一斉分析することができます。
ガスクロでは2種類の形状をした分離カラムがありますが、分離の仕組みは極性の違いが主になります。しかし液クロでは逆相・順相・イオン交換など様々な分離モードがあり、分離カラムと移動相を変えることによって分離モードを変えることができます。ガスクロでキャピラリーカラムを用いた場合LCよりも分離がよく混合成分の分析に向いています。
移動相
液クロ ・・・逆相モードでは有機溶剤系と水系の混合したものがよく用いられカラム に適した溶媒を選択することができます。
ガスクロ・・・移動相はキャリアガスと呼ばれ、ガスを使用します。主にヘリウムや窒素が使用され7m3のガスボンベが主流です。
液クロは移動相をあらかじめ調製する必要があります。近年の国際状況によりガスクロに使用するヘリウムガスの入手が困難になってきています。
まとめ
ガスクロは古くから汎用されておりかなり確立した手法ですが、液クロは現在も新しい分離モードやシステムの開発が進んでいます。
今回は液クロとガスクロの比較についてお話しました。どちらの分析機器も得意な試料が異なり分析したい物質や条件によって選択する必要があります。測定分析の依頼・ご不明点などございましたら弊社までご相談ください。
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