騒音の評価方法『等価騒音』と『時間率騒音レベル』について
前回までのコラムで、騒音の概念と、音圧レベルから騒音レベルを求める方法を紹介しました。騒音を人間がどのように感じるかは非常に複雑であり、簡単な一つの数値によって評価することは困難とされています。これが現在種々の評価量が存在する理由になります。人間が周波数スペクトルおよび時間変動に対してどのように感じるか、そしてそれをいかに数値化するかが評価のポイントになっております。ここでは、騒音の評価でよく用いられる2つの評価方法について紹介します。
前回までのコラムはこちら↓
・音の基礎やその特性を深いところまで解説します!
・騒音の定義と騒音レベルについて計算式を含めて解説します!
・音の正体と音の三要素(大きさ・高さ・音色)とは?
・デシベルと周波数とは?詳しく解説!
等価騒音について
環境騒音や作業環境中の騒音では、等価騒音レベルという測定方法で騒音レベルを評価します。これは、騒音レベルが時間とともに変化する際の、測定時間内でこれと等しい平均二乗音圧を与える連続定常音の騒音レベルとされており、量記号はLeqと表示されます。一般的に測定時間内で観測された、変動する騒音レベルをエネルギー的な平均値と考えられており、実効値算出のための平均化時間をレベルの変動に比べて長くして求めた騒音レベルになります。環境騒音の比較的長い期間(数時間、1日、1か月など)の騒音の代表値として用いられます。
ほとんどの騒音計で、演算機能を内蔵しているため、自動的に求めることができます。現在では、環境騒音に対する人間の反応を最も適切に評価できる量とされています。
時間率騒音レベルについて
工場騒音や建設作業騒音では、騒音レベルが安定していないケースがあり、工場の設備や建設の重機の稼働にともなって不規則で変動が大きい騒音を発生させることがあります。この場合の測定方法として時間率騒音レベルという評価があります。騒音レベルがあるレベル以上の時間が実測時間のX%を占める場合、そのレベルをX%時間率騒音レベルといいます。Xに代入される主な%は以下になります。
・50%の場合、50%時間率騒音レベルで量記号はL50、専門用語は中央値
・5%の場合、5%時間率騒音レベルで量記号はL5、専門用語は90%レンジの上端値
・95%の場合、95%時間率騒音レベルで量記号はL95、専門用語は90レンジの下端値
工場騒音や建設作業騒音の規制基準では、変動騒音の場合はL5、つまり90%レンジの上端値を評価の対象にすることとされております。このL5は、たまたまうるさかった騒音として最大値を代表値として捉えるのではなく、正規分布の平均値+2σ(σ:標準偏差)である「信頼区間90%」という統計学に基づいています。
では、この時間率騒音レベルを求める方法を、測定例を用いて紹介します。騒音計とレベルレコーダーを接続させ、騒音レベルの測定値がチャートに出力する状況を作ります。レベルレコーダーのチャートスピードを1メモリ当たり5秒で通過する条件に設定し、1メモリ当たりの騒音レベルの測定値を読み取ります。これを50個カウントし、記録します。
次にその値を騒音レベルの低い順番に並び替え、カウント数を加算し累積します。
そして、X軸に騒音レベル、Y軸の1次軸にカウント数、2次軸に累積度数として、50個分の測定値をプロットします。その後、各測定値を結んで滑らかな曲線を描きます。
最後に、90%レンジ上端値をこの分布曲線と右側の%目盛りから値を読み取りますが、この上端値とは最大値から数えて10%ではなく、上端から5%と下端から5%の計10%、残りが90%という考え方ですので、右側の95%の目盛りから読み取ります。この例ではL5は51dBとなります。
最近の騒音計では、0.1秒ごとの騒音レベルの測定値をCFカードやSDカードなどの外部メモリに収録することができます。このデータをPCに移動させ、専用の解析ソフトやExcelにインポートすることで数回のマウス操作で等価騒音や各時間率騒音レベルなどを素早く求めることができます。
最後に
よく用いられる騒音レベルの評価方法を2つ紹介しました。いずれも騒音レベルの代表値として扱われる数値ですが、苦情騒音など騒音規制対象外の場合では全く異なる評価をすることもあります。
音が変動的である、または定常的である、もしくは間欠的・衝撃的であるといったようなパターンごとに評価方法を選択する場合もございます。弊社ではお客様の目的に合わせて適切な騒音レベルの評価方法を決定しています。
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