地震と工事などの振動は何が違うの??

私たちの生活の中で「振動」といったら地震を想像する方もいると思います。この地震の振動と工場や道路交通からの振動は、振動の種類が異なり、扱い方が違います。よくテレビのニュース速報で表示される震度やマグニチュードが、振動レベルの表示と異なるのはこれに由来しています。

目次
1.振動の種類について
1-1.縦波
1-2.横波
1-3.表面波
2.工場や道路の振動について
3.地震の振動について
4.最後に

振動の種類について

振動の波は大きく分けて3種類に分類されます。

縦波

縦波は、波の伝搬方向と地盤など媒質粒子の振動方向が一致する波です。地震に含まれ、P波とも呼ばれます。

横波

横波は、波の伝搬方向と媒質粒子の振動方向が垂直になる波です。地震に含まれ、S波とも呼ばれます。

表面波

表面波は、弾性体の表面に沿って伝搬する波です。表面波の中でもレイリー波ラブ波に分かれますが、レイリー波は工場や道路交通の振動が含まれます。縦波や横波とは異なり、振動のエネルギーが表面のみに伝達されるため、減衰しにくく遠方まで振動の影響する特徴があります。ラブ波は水平の剪断力を地面に与える表面波で、地表付近に横波の伝搬が集中すると発生します。どちらも震源の浅い大地震では観測されます。

工場や道路の振動について

工場や道路交通、鉄道、建設作業など事業活動に伴って発生する振動は、機械や設備由来の加振力が機械本体を通じて基礎に伝わります。基礎に伝わった振動は、地面の表面側に表面波と、地面の内部側に実体波とそれぞれの波動を発生させます。これを空間的に捉えると表面波は波動が円筒状で2次元的に、実体波は球面状で3次元的に波及します。この違いにより、幾何減衰(単位領域あたりの振動エネルギーが減少する程度)の大きさは表面波<実体波の関係になり、工場や道路などの振動は表面波が主体的になります。振動問題では、工場や道路からの振動である表面波をいかに減少させることができるか、伝達しにくくできるかが解決のポイントになります。一般的に振動の大きさは振動レベルで表され、単位はデシベル(dB)になります。振動加速度がレベルに変換されたものになります。通常、振動の信号を検出するピックアップとその信号を振動加速度レベルに変換する振動レベル計を用いて測定を行い、得られた振動加速度レベルに対して、人間の振動感覚における周波数補正を施したものが振動レベルになります。周波数補正は鉛直方向と水平方向と2種類存在しますが、振動規制法では、鉛直方向の振動レベルに対して規制基準値が設けられています。

地震の振動について

記憶にまだ新しい2011年3月11日に宮城県牡鹿半島の東南東沖130kmを震源とする東北地方太平洋沖地震が発生しました。日本周辺で観測された中では史上最大地震であり、マグニチュードも9.0を観測しました。この地震以降、気象庁では従来の緊急地震速報(IPF法)を改善してPLUM法を導入しました。このPLUM法は震源や規模の推定は行わず、地震計で観測された揺れの強さから直接震度を予想する手法になります。現在では、IPF法とPLUM法の両手法から予想震度を比較し、大きいほうを発表しています。地震が発生すると、震源の揺れが波となって地面を伝わります。地震波には縦波のP波と横波のS波があり、P波の方がS波より速く伝わる性質があります。また、強い揺れによる被害をもたらすのは主に後から伝わってくるS波であることが多いです。この地震波の伝わる速度の差を利用して、先に伝わるP波をリアルタイムに検知した段階で、S波が伝わってくる前に危険が迫っていることを知らせることが可能になり、これが現在でも採用されている緊急地震速報になります。全国には約690箇所の気象庁の地震計・震度計に加えて、国立研究開発法人 防災科学技術研究所の地震観測網(全国約1,000箇所)が設置され利用されています。
地震の大きさを示すマグニチュードとは、地震が発するエネルギーの大きさを対数で示した指標値になります。ある観測点の振幅を対数にして、震源中央の距離と深さを補正したものになりますので、工場等で用いられる振動レベルとは算出方法が異なっています。また、震度とは、日本独自の表現方法で揺れの大きさを示した指標値になります。水平方向と鉛直方向の振動加速度を用いて求める算出方法になりますので、一般的にマグニチュードの指標値とは捉え方が異なります。

最後に

今回は、工場や道路など振動の大きさで用いられるデシベルと、地震の大きさで用いられるマグニチュードの違いについて紹介しました。工場振動など事業活動によって生じる振動は表面波が主体的ですので、減衰しにくく大きな振動になる場合があります。特に地盤の弱い道路でトラックが走行すると少し離れた住居にも振動が伝わるといった話をよく聞きます。人が活動して発生する振動ですので、安全側の考えとして振動を発生させている方は周りへの配慮を意識しましょう。

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