建築・施工時期からアスベストの有無を見分ける方法
一般的に、建築物や建材などにアスベスト(石綿)が含まれているかどうかを確実に調べるには、分析機関へ依頼して判定するしかありません。しかし、アスベストの使用が規制された以降の建築物・建材であれば使用されていないので、分析を行わずに非含有物とすることができます。今回は、建築や施工された時期からアスベストが含有しているかどうかを見分ける方法を解説します。
目次
1.アスベスト規制の歴史
2.時期で見分けるアスベストの可能性
2-1.レベル1 吹付け材
2-2.レベル2 保温材・断熱材・耐火被覆板
2-3.レベル3 その他の建材
3. 図面から読み取る
4. まとめ
アスベスト規制の歴史
アスベストの規制はいきなり全てを禁止されたわけではなく、段階的に規制されていきました。どのように規制されていったのかをまずは見てみましょう。
・1975年 | クリソタイルを5重量%を超えた吹付け原則禁止。 |
・1995年 | 基準が1重量%超えに変更、アモサイト・クロシドライトも規制対象に追加。 |
・2004年 | 1重量%を超える吹付け材以外の10品目も規制対象に追加。 |
・2006年 | アスベストの対象が増え全6種類が規制。0.1重量%を超えるアスベスト含有製品全般の製造・輸入・使用・譲渡・提供の禁止。ただし一部は代替品がないため猶予あり。 |
・2012年3月 | アスベスト製品の全てを製造禁止。 |
最初に規制されたアスベストは1種類で、しかも5重量%以上という基準値でした。その後数回に渡って規制内容が改正され、最終的にアスベストは6種類、基準値も0.1重量%以上とより厳しいものになりました。例えば、2005年に吹付け材のアスベスト分析をして「アスベスト含有なし」と結果が出ていて今からその吹付け材の除去工事をしようとする場合、再度アスベスト分析をやり直さなければなりません。石綿含有建材については、その飛散性の観点からレベルによる分類がされています。レベル1はもっとも飛散性の高い建材であり、次に飛散性の高い建材がレベル2、比較的飛散性が低いものはレベル3となっています。
時期で見分けるアスベストの可能性
レベル1 吹付け材
アスベストを含む吹付け材は1955年頃から使用され始めました。そして1971年頃から製造中止が始まっており、1989年に全てのアスベストを含有する吹付け材が製造中止しています。つまり吹付け材の場合は1989年まではアスベスト含有製品を使用されている可能性があります。
レベル2 保温材・断熱材・耐火被覆板
保温材は珪藻土保温材、ケイ酸カルシウム保温材、バーミキュライト保温材、パーライト保温材、石綿保温材があります。早いものでは1920年頃からアスベスト含有の保温材が使われ始めていました。1987年まで製造されています。
断熱材は煙突用断熱材と屋根用断熱材があります。煙突用断熱材が使われ始めた時期は不明ですが、屋根用断熱材は1958年頃から使用されています。煙突用断熱材は1991年、屋根用断熱材は1983年まで製造されました。
耐火被覆板は石綿耐火被覆板とケイ酸カルシウム板があり、石綿耐火被覆板は1963年頃から、ケイ酸カルシウム板は1965年頃から使用されています。石綿耐火被覆板は1983年まで製造され、一方ケイ酸カルシウム板はアスベスト含有率の低さから2004年まで製造されていました。
レベル3 その他の建材
レベル3に該当する建材は種類が非常に多く、その全てを解説するのは大変なため、簡潔に紹介していきます。
代表的なものは壁や天井に使用されるボード類、床材として使用されるビニル床タイルなどのタイル・シート類、屋根材や屋根材の下に敷くルーフィング、外壁・軒天に使われるボード類、外壁の表面に質感あるコーティングをする仕上げ塗材、ボード同士の固定やタイル・巾木の固定に使用される接着剤、その他に煙突材やセメント管など多数あります。これらいずれも2004年まで、仕上げ塗材のみ2005年まで製造されていました。製品別に細かく見ていくと製造中止した年は2004年以前にも様々な年にあります。2006年に来る法改正に向けて、2004年の改正時点でほとんどの製品が製造中止したことを覚えておくと良いでしょう。
図面から読み取る
建築・施工された時期を調べたり、どのような建材が使用されているのかを確認するには、建築された建物の設計図書や図面を見ることが重要です。「多分〇〇が使われていると思う」のような憶測の判断はしないようにしましょう。書面で確認し、合わせて目視で実際に実物を確認するとなお良いです。
注意点として、建材名称は俗称を使われることがあり、図面等と実物で違うことがあります。代表的な事例をひとつあげてみます。吹付け材には「トムレックス」という製品名のものがありますが、吹付け材を総称して「トムレックス」と表記されることが多くあり、注意が必要です。図面等から読み取った後、目視して一致しているかを確認する、これをセットで行うと良いでしょう。
まとめ
2006年以降に建築された建物であることが設計図書等により明らかな場合はアスベスト不使用と判断して良いことになっています(石綿障害予防規則及び大気汚染防止法)。また、設計図書等から着工日を確認することは建築物石綿含有建材調査者以外でも可となっています。アスベスト含有しているか否か、全てを分析調査するのはコストも時間もかかります。アスベスト分析をしない判断やみなし処理(アスベスト分析をせず、含有しているものとして処理する)を効果的に活用するための知識として今回のコラムを役立てて下さい。
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