吹付け材とは?様々な種類について解説します!
吹付け材とは何かご存知でしょうか。吹付け材というものは耐火被覆材の一種で、その工法や材料によっていくつかの種類に分かれます。昔は石綿(アスベスト)を添加したものも使用され、多くの健康被害が出ました。今回は、この吹付け材(耐火被覆材)について解説します。
目次
1.耐火被覆材とは
2.石綿を含む吹付け材
3.吹付け材の歴史
4.吹付け材の種類
4-1.吹付け石綿
4-2.乾式吹付けロックウール
4-3.半乾式吹付けロックウール
4-4.湿式吹付けロックウール
4-5.吹付けバーミキュライト(ひる石)
4-6.吹付けパーライト
5. 最後に
耐火被覆材とは
まず、なぜ耐火被覆材が必要なのかについて説明します。鉄骨造の骨組みは熱に弱く、火災があった際に鉄骨が建築物の重量に耐えきれず、曲がったり折れるといった問題が起きます。そのため、耐火性・断熱性の高い素材で骨組みを被覆し、耐火構造を持たせるよう建築基準法で定められています。耐火被覆材を使用される場所は主に骨組みが多く、他にエレベーターシャフトの壁・梁、断熱材として機械室の壁・梁、建屋の天井裏などもよく使用されています。耐火建築物とする条件や求められる耐火性能についても細かく指定されていますが、今回のコラム内では省略します。
石綿を含む吹付け材
1950年頃から、耐火性・断熱性・耐酸アルカリ性・絶縁性・耐摩擦性など高性能な性質を持つ素材として、石綿が建築業界で用いられ始めました。その後、石綿による人への健康リスクについて問題となり、1975年に石綿を5重量%を超える吹付け禁止、1995年に1重量%を超える吹付け禁止、2006年に0.1重量%を超える石綿の全面使用禁止となりました。石綿を含む吹付け材はレベル1建材に指定されています。発じん性が著しく高く、飛散した石綿を吸引しやすく危険なためです。除去工事をする場合、飛散させないよう完全隔離する必要があり、施工のコストも高くなります。
吹付け材の歴史
1964年以前は、吹付け材は耐火構造として特に定められてはいませんでした。1964年~1987年まで、鉄骨などを吹付け石綿で覆ったものが耐火構造として指定されました。次いで1971年に石綿含有吹付けロックウールでの被覆が耐火構造に指定されました。その後2000年に建築基準法の一部改正があり、これらの指定が全て廃止され、改めて新制度に基づく耐火構造として多くのものが認定されました。この時に石綿を含む製品は全面的に廃止されました。
吹付け材の種類
吹付け材には、工法や材料によって種類があります。使用する目的に合わせて種類を選択し、施工されていました。
吹付けの種類 | 使用目的 | 工法 | |||||||
耐火 | 断熱 結露 防止 |
吸音 | 乾式 吹付け |
半乾式 吹付け |
湿式 吹付け |
ガン吹付 | 電着工法 | ||
吹付け石綿 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
吹付け ロックウール |
乾式吹付け | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
半乾式吹付け | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
湿式吹付け | 〇 | 〇 | 〇 | ||||||
吹付けバーミキュライト | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
吹付けパーライト | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
吹付け石綿
主要基材は石綿。工場でセメントと混合されます。現場では解綿圧送吹付機からホースで吹き付けます。同時に、霧状にした水やセメントスラリーを混合させ吹き付けて使用されました。二層吹きされることもあり、その場合は石綿の種類が違うケースもあります。
乾式吹付けロックウール
主要基材はロックウール(と石綿)。工場でセメントと混合されます。現場で解綿圧送吹付機からホースで吹き付けます。霧状にした水と混合して吹き付けて使用されました。基材や吹き付ける工程が吹付け石綿とよく似ています。
半乾式吹付けロックウール
主要基材はロックウール(と石綿)。主要基材は空気で圧送し、セメントスラリーはポンプで圧送します。別々に圧送し、専用ガンで混合噴霧します。石綿の使用規制後に、石綿を含有しない吹付け材として最も多く施工されています。高所で施工するのにも向いています。
湿式吹付けロックウール
主要基材はロックウール(と石綿)。メーカーによってはパーライト、バーミキュライトも添加しています。現場でモルタルミキサーなどを使用して主要基材とセメントと水を練り、モルタル状にした材料をポンプなどで圧送し、圧送空気で吹き付けます。他の吹付け材と比較して粉じんが発生しにくい性質を持ちます。
吹付けバーミキュライト(ひる石)
軽量骨材吹付けの一種で、セメントなどを結合材として吹き付けて施工します。無機系吹付けではセメントやプラスターなどを混合して水練りして吹き付けたと言われ、有機系吹付けは特殊な結合材と混ぜて吹き付けたと言われています。電着工法は、静電気を利用して有機系の糊を塗り、バーミキュライトを接触させて通電する工法と言われています。仕上がりの見栄えが良く、団地など住宅の内装壁や天井に施工されました。吹付けバーミキュライトの施工方法について、現在では詳細は不明となっており、これ以上の内容はわかっていません。吹付けバーミキュライトには、不純物として石綿を含有するケースと繋ぎ材として石綿を添加するケースがあります。
吹付けパーライト
主要基材はパーライト(と石綿)を使用した吹付けで、セメントなどを結合材として吹き付けて施工します。比重が軽いため断熱性、吸音性、結露防止などに優れ、化粧仕上げとしても施工されました。
最後に
石綿は健康被害の問題として度々取り上げられていますが、今回は石綿を含有するベースとなっている吹付け材についてまとめてみました。石綿含有吹付け材が社会問題となった1970年代から約50年が経ち、当時の工法について知ることが難しくなり、中には工法が不明となった技術もあります。今回のコラムが皆様の役に立てば幸いです。
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