音の基礎やその特性を深いところまで解説します!
前回までのコラムで、音の三要素やデシベル、周波数について紹介しました。ここでは、もっと専門的な音に関しての基礎やその特性を紹介したいと思います。
目次
1.正弦波について
2.特性インピーダンスについて
3.音響インテンシティーについて
4.音の速さについて
5.最後に~落雷を考える~
正弦波について
どんな複雑な波形をしている音でも、音はすべての正弦波の合成で表すことができます。また、ある波形の音に対する人間の感覚量は、波形そのものではなくそれに含まれるそれぞれの周波数成分に対する感覚量の和で求まることから、正弦波についての基礎を紹介します。
波 長 | 波動で、隣り合った同じ位相(たとえば山と山、谷と谷)の間の距離をいいます。λ(ラムダ)で表されることが多く、c[m/s]を速度、f[Hz]を周波数とすると、λ[m]=c/fで求めることができます。 |
各周波数 | コンパスを用いて円を描くときのような、カーブに対する回転速度をいいます。ω(オメガ)で表されることが多く、T[s]を周期とすると、ω[rad/s]=2π/Tやω=2πfで求めることができます。 |
周 期 | 波動で、隣り合った同じ位相(たとえば山と山、谷と谷)の間の時間をいいます。T=1/fで求まるので、T=2π/ωともいえます。 |
波長定数 | ある時間の中で波がいくつ含まれているかをいいます。kで表されることが多く、k[rad/m]=2π/fで求まるので、k=ω/cともいえます。 |
特性インピーダンスについて
あるひとつの平面波(波面が平面である音波)が存在する場合、その音圧と粒子速度との比は空気などの媒質によって定まる一定値となります。これを特性インピーダンスといいます。これは空気の密度と音の速さの積で求まるため、それぞれの関係性はp/v=ρcとなります。イメージとしては、音の伝わる速度が水と空気で異なる「抵抗」のようなもので、媒質ごとに固有の定数を持っていると考えてください。常温付近の空気では、通常は400Pa・s/mを用います。ただし、この平面波というのは理論的に解析が容易なため、よく算出条件として用いられますが、このような波は現実世界にはごく限られたられた環境を除いて存在しないため注意が必要です。
音響インテンシティーについて
音響インテンシティーは、音の強さと同じ意味で扱われますが、厳密には音の強さは音の進行方向に垂直な面について、その音波の強さを表すために用いられるのに対して、音響インテンシティーは、ある点においてその場の任意の向きに対して、音波の強さを表すために用いられます。音の強さを、音波によって空気中に圧力が生じて、空気中の粒子が移動するものと考えると、音波によって、その粒子にエネルギーが与えられ、それが順次伝搬されることになります。空気の断面積S[m2]に音圧p[Pa]がかかって、粒子が移動(変位)u[m]するので、このエネルギーはe[J]=Spuで求まります。音の強さは面積当たりに通過するエネルギーになるため、i[W/m2]=(e/t)/Sで求まり、i=pvともいえます。特性インピーダンスのp/v=ρcを用いると、平面波ではi=p/ρcで求めることができます。
音の速さについて
空気中の音の速さ(伝達速度)はおおよそ340m/sといわれております。音の速さは体積弾性率と密度が共に気圧に比例することから、空気中の音の速さは気圧によって変化せず、温度から求めることが一般的です。概ね331.5+0.61θ(θ:温度℃)によって導かれます。
最後に~落雷を考える~
専門的な話が続いたので最後に落雷について考えてみます。
雲の中の水蒸気は、氷に変わると重力で落下するものと、地表からの上昇気流によって上昇するものが存在するようになります。これらは互いに衝突することで静電気を生み出します。静電気は雲の中で上部が正の電荷、下部が負の電荷として集まり、ある程度溜まった負の電荷が大気中に放出され、これが落雷となります。私は落雷をみると、光ったあとからゴロゴロと音が聞こえるまでの秒数をカウントして距離がどれくらいか判断しています。これは、落雷によって発生した音は1秒当たり340m離れているという先ほど紹介した音の速さから求めることができるからです。例えば、落雷で光っあとからゴロゴロと音が聞こえるまで10秒かかったとしたら距離は3400mになり、時速4kmで歩けば落雷場所まで51分かかると考えられます。身近なものに興味を抱き、なぜそうなるのかを調べて答えがわかると、何気ない日常も楽しく感じられますね。
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