土壌の溶出量試験と含有量試験の違いとは?

土壌汚染対策法において土壌の溶出量試験含有量試験という言葉を聞くと思いますが、それぞれの内容(目的)等を簡単に説明したいと思います。

目次
1.そもそも土壌汚染対策法とは
1-1.目的
1-2.土壌汚染状況調査について
1-3.健康被害のおそれの判断について
2.土壌溶出量試験について
2-1.どんな時に試験する?
2-2.試験方法
3.土壌含有量試験について
3-1.どんな時に試験する?
3-2.試験方法
4.基準値を超過した場合について
5.まとめ

そもそも土壌汚染対策法とは

目的

土壌汚染対策法とは平成14年5月29日に公布され、土壌の特定有害物質による汚染の状況把握及び人の健康被害の防止に関する措置を定めることによって、土壌汚染対策の実施を図り、国民の健康を保護することを目的として施行された法律です。

土壌汚染状況調査について

土壌汚染状況調査のきっかけ(調査契機)として主に次の3つがあります。
① 使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の調査
② 土壌汚染のおそれがある土地の形質の変更が行われる場合の調査
③ 土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地の調査

健康被害のおそれの判断について

土壌汚染対策法により定められている特定有害物質による土壌汚染が判明した場合に、人の健康被害のおそれについて判断する必要がありますが人の健康被害のおそれの判断基準は次の2つあります。
① 基準不適合土壌に対する人の暴露の可能性があること
② 汚染の除去等の措置が講じられていないこと

また、「基準不適合土壌に対する人の暴露の可能性があること」の具体的な内容は次の通りとなります。
① 地下水経由の観点からの土壌汚染がある場合
② 直接摂取の観点から土壌汚染がある場合

土壌溶出量試験について

どんな時に試験する?

先述の「基準不適合土壌に対する人の暴露の可能性があること」の具体的な内容の①地下水経由の観点からの土壌汚染がある場合、これを調べるのが溶出試験になります。つまり、土壌が地下水や雨水にふれた時どのくらい溶出するかを想定した試験方法が土壌溶出量試験と呼ばれています。人体に間接的に摂取されるリスクを想定されています。

試験方法

分析は、特定有害物質が地下水への溶け出すして地下水経由で摂取することを想定し、水(精製水)と土壌を重量体積比10%で混合して6時間振とうした溶出液を分析し、溶出液1Lあたりの特定有害物質の濃度(mg/L)を算出します。

土壌含有量試験について

どんな時に試験する?

先述の「基準不適合土壌に対する人の暴露の可能性があること」の具体的な内容の②直接摂取の観点から土壌汚染がある場合、これを調べるのが含有試験になります。つまり、土壌を直接摂取した場合(口から摂取し、胃で消化するリスク)を想定した試験方法が土壌含有量試験と呼ばれています。

試験方法

分析は、特定有害物質を含む土壌を口からの直接摂取を想定し、塩酸 (1mol/L)と土壌を重量体積比3%となるように混合して2時間振とうした溶出液を作成し、分析することにより、土壌1kgあたりに含有する特定有害物質の重量(mg/kg)を算出します。

基準値を超過した場合について

土壌汚染の状況や土地の利用状況などにもよりますが、必要に応じて対策をとることがよくあります。例えば、溶出量試験による基準超過の場合、土壌に含まれる有害物質が地下水に溶け出して、その有害物質を含んだ地下水(井戸水等)を飲んで口にすることによるリスクを想定した基準のため、土壌溶出量が基準超過していても、周辺の地下水を飲用しないことにより健康被害が生じるリスクを回避できると考えられます。この場合、汚染された地下水の拡散を止める対策や地下水の浄化、汚染源である土壌の除去(掘削除去)や地下水に溶け出さないような処理(不溶化)などが対策の一例となります。また、含有量試験による基準超過の場合、有害物質を含む土壌を口などから直接摂取することによるリスクを想定した基準のため、直接摂取できないよう遮断することにより健康被害が生じるリスクを回避できるでしょう。この場合、汚染されている範囲について盛土や舗装による遮断、掘削除去などがよくとられている対策です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は土壌汚染対策法に関する溶出量試験と含有量試験についてお話いたしました。法律面や健康被害の考え方、試験方法の違い、さらには基準値を超過した場合の対応等について、少しでも参考になればと思います。弊社も指定調査機関として、これまで土壌汚染調査の実績があります。土壌汚染調査についてご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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環境省_土壌環境基準 (46号溶出試験)
環境省_土壌環境基準 別表 (46号溶出試験 環境基準値)
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