赤い水の正体は!?顕微鏡観察事例を紹介!

 

工場敷地内の溜水が赤く変色し、その原因調査の依頼がありました。顕微鏡で観察したところ、ヘマトコッカスという藻の一種が観察されました。

目次
1. ヘマトコッカスとは
2. 調査方法
3. 調査結果
4. まとめ

ヘマトコッカスとは

ヘマトコッカス(Haematococcus sp.)は、緑藻綱、クラミドモナス目の植物プランクトンの一種です。水溜まりなどに生息し、外観は球形または卵形で、2本の等長の鞭毛を持ち、ゼラチン質の厚い壁があり、明るい赤色を呈します。水が蒸発するなど環境が悪化すると赤色の色素を内部に蓄積してシストとなり、水を赤く着色させることが知られています。色素は健康食品などで使用されているアスタキサンチンです。シストとは、一時的に小さな細胞体や幼生が厚い膜を被って休眠状態に入ったような状態になることを言います。被嚢、包嚢、嚢子などともよばれます。単細胞のものもあれば、多細胞のものもあります。また、環境の悪化に対してできることもあれば、生物の成長に伴い作られるものもあります。

調査方法

顕微鏡観察直接検鏡法

試料を少量スライドグラスに採り顕微鏡で観察しました。

調査結果

目視では、試料の外観は赤色のスライム状沈殿が多くみられました。顕微鏡での観察では直径20μm程度で赤色を帯び運動性のある生物(写真1及び2)と、直径20μm程度の不動性の赤色球形の物質がみられました(写真3)。不動性の赤色球形の物質がシストです。

写真1. ヘマトコッカス
周囲にゼラチン質の厚い壁が観察される

写真2. ヘマトコッカス
上と同じもの2本の鞭毛を使って水中を遊泳しているのが観察される


写真3. ヘマトコッカスのシスト
赤色の粒子状で運動性はない

まとめ

ヘマトコッカスは特別な藻ではなく、私たちの生活スペースにも普通に見ることができます。特にコンクリートやアスファルト等の乾湿を繰り返す場所で発見されることが多いようです。コンクリートが赤くなっていたらヘマトコッカスかもしれません。

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