2021.12.30
コラム

欧州で取り組みが始まった「サーキュラーエコノミー」って?

世界人口の増加・経済成長に伴う「大量生産、大量消費、大量廃棄」の経済は、地球に深刻なダメージ(資源枯渇、廃棄物、温暖化・海洋汚染など)を与えている。子供たちの未来を永続的に繁栄するため、世界は今、経済の変革が求められている。欧州で取り組みが始まったサーキュラーエコノミーとは?

目次
1.サーキュラーエコノミーの概念
2.サーキュラーエコノミーの事例
3.サーキュラーエコノミーが目指すもの
4.あとがき

サーキュラーエコノミーの概念

2030年に向けた成長戦略の核として、欧州委員会は循環経済パッケージを発表した。その目的は、「製品、材料、資源の価値を可能な限り永く保持し、廃棄物の発生は最小化する」というもの。さらに、「EU経済の競争力引き上げ(資源枯渇と価格変動からのビジネス保護、雇用創出、SDGsの達成)」をも目指す資源効率政策のイニシアチブである。従来の経済システム(リニア型経済)は、「資源を採掘」→「製品を作る」→「捨てる」のサイクル。サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、「資源を採掘」→「製品を作る」→「作り続ける」「使い続ける」のサイクルで、経済成長を生み出しながら資源採掘・廃棄を減らし持続的に価値を生み出すシステムである。環境悪化を伴うこれまでの経済成長を、環境負荷と分離させ、持続可能な成長を実現する経済システムとして世界中で注目されている。

サーキュラーエコノミーの事例

廃棄物という概念をなくすことを目標とするサーキュラーエコノミーにとって最も重要なものは製品やサービスのデザイン(設計)である。サーキュラーデザインは、製品を耐久性のあるもの、修理・アップグレードしやすいものにデザインすることや、再生できる素材の活用、製品の生物資源化など廃棄物を発生させないデザインが要求される。興味深い事例として、米国のテラサイクル社が展開するショッピングプラットフォーム「Loop」(消費財や食品の使い捨てプラ容器・包装に代わって、ガラスやステンレス製の繰り返し使える容器で商品を販売し、容器を回収・再利用することで、ごみを減らすサービス)、英国のpentatonicが提供するリサイクル家具(あらゆる廃棄物を原材料とした家具をモジュール化して、パーツごとの交換、買取、再製品化する完全循環型のビジネスモデルを確立)、米国のインダストリアルデザイナーが始めたプロジェクト「Sum Waste」(下水処理場で発生した下水汚泥を使い、環境負荷の低いペンを作るプロジェクト。ペン本体は堆肥化可能なバイオプラスチック、インクは再利用可能な木炭から作る顔料で、いずれも下水汚泥から生成される。人々の抵抗感がなくなれば、下水汚泥からできたバイオプラスチックはフォークやナイフ、容器としてリサイクルできる)。このほか世界では食品、衣料品、建築材など様々な分野でサーキュラーエコノミーの取り組みが始まっており、日本でも経済産業省が循環経済への転換に向けた方針を打ち出している。

サーキュラーエコノミーが目指すもの

ドーナツ経済学は2011年に経済学者ケイト・ラワーズ氏が提唱した新しい経済の概念である。ドーナツの内側の環は「社会的な土台」と呼ばれ、人々の暮らしに必要な食料、水、医療、エネルギー、教育、衛生、平等・平和など最低限の社会基盤が保障される境界線、ドーナツの外側の環は「環境の上限」で、地球環境に気候変動や生物多様性の喪失などの過負荷をかけない境界線を表している。つまり2本の境界線内であるドーナツ部分が「人間にとって安全で公正な範囲」であり、すべての人々がその範囲内で暮らしGDPなど従来の経済指標で重要視される「成長」ではなく、人間の生活そのものが豊かになる「繁栄」を目指す理想的な経済といえる。サーキュラーエコノミーは資源の再利用と廃棄物を出さない循環型経済モデルによって地球環境を再生しドーナツ部分に引き戻す有力な経済活動である。

あとがき

「サーキュラーエコノミー」。知れば知るほど、我が家の「プラごみ」の山が忌々しく思えてきます。夫婦二人暮らしですが一週間で45Lの資源袋が一杯になります。スーパーの食品トレーやラップ、米の袋、味噌の容器、カップ麺のかやくや粉末の袋、衣服の包装ラップ、詰め替え用洗剤の袋、DMの封筒、タバコ箱のフィルムなど、ありとあらゆる商品に付加価値的にプラスチック包装が施され、そのほとんどが「プラごみ」として捨てられます。思えば私が子供の頃(昭和の中頃)には、使い捨てのプラスチック包装など無かったように思います。それは、「そもそも物がない、高価なもの」という理由からですが、不衛生とか、不便さは感じません。「余分なもの、環境に良くないものは作らない、使わない」という社会にこれから変わっていけば、我が家の忌々しい「プラごみ」もいずれ姿を消して行くのでしょう。
参考:ウェブマガジン「IDEAS FOR GOOD」Harch Inc.編集

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