2026.10.05
コラム

作業環境測定における騒音の対象作業・基準・対策を徹底解説

製造業や建設業の現場で発生する強い騒音は、放置すると従業員に騒音性難聴を引き起こす恐れがあります。こうした健康障害を防ぐため、労働安全衛生規則は特定の作業場に作業環境測定を義務づけています。安全衛生管理を担う担当者や管理職にとって、測定の対象や方法、評価に基づく対策を正しく理解することは欠かせません。

本記事では、騒音に係る作業環境測定について、対象作業場から測定方法、管理区分ごとの対策、健康診断や教育の義務までを解説します。

目次
1.騒音による健康障害と作業環境測定が必要な理由
1-1.騒音性難聴が発生するメカニズム
1-2.騒音測定義務化の法的根拠と改正の背景
2.騒音に係る作業環境測定の対象となる作業場
2-1.法定測定義務が生じる別表1の8つの屋内作業場
2-2.屋内外を問わず対策推奨となる別表2の52の作業場
3.騒音の作業環境測定の実施方法と結果の評価
3-1.屋内作業場でのA測定・B測定の手順
3-2.屋外作業場での測定方法と判断基準
3-3.管理区分の判定基準と記録保存の義務
4.管理区分に応じた騒音障害防止対策の進め方
4-1.管理区分ごとに必要となる措置の内容
4-2.音源・伝ぱ経路・作業者への騒音対策の具体例
4-3.聴覚保護具(防音保護具)の種類と選び方
5.騒音作業従事者への健康診断と労働衛生教育の義務
5-1.雇入れ時・定期健康診断の検査内容と実施サイクル
5-2.騒音作業従事者に対する労働衛生教育の科目と時間
6.まとめ

騒音による健康障害と作業環境測定が必要な理由

製造業や建設業の現場で発生する強い騒音は、働く人の耳の機能を損ない、難聴を引き起こす要因になります。労働者を守るため、労働安全衛生規則は特定の作業場に作業環境測定を義務づけています。

騒音性難聴がどのように生じるのか、そして測定が法律で求められるようになった経緯について、順を追って解説します。

騒音性難聴が発生するメカニズム

騒音性難聴は、強い音にさらされ続けることで耳の機能が損なわれ、聴力が低下する健康障害です。大きい音を継続的に浴びる職場ほど危険が高まるため、規則改正でも予防が主たる狙いに据えられました。

労働安全衛生規則は、騒音作業に常時従事する労働者へ、雇入れ時や配置替えの際と6か月以内ごとの定期健康診断を義務づけ、オージオメータ(聴力を測る機器)による聴力検査を行うものとしています。聴力の変化を早期に捉えるには、こうした定期検査が欠かせません。

騒音測定義務化の法的根拠と改正の背景

騒音の測定は、労働安全衛生規則の第588条と第590条を法的な根拠としています。第588条が著しい騒音を発する屋内作業場を定め、第590条がそれらの作業場で6か月以内ごとに1回、等価騒音レベル(一定時間の騒音の平均値)の測定を事業者に課しているためです。改正前は、騒音性難聴の労災認定が離職者対象の統計に限られ、在職中の労働者の潜在的な発症を把握できていませんでした。在職者を守る狙いから、規則改正によって測定と管理の体制が強化されました。

騒音に係る作業環境測定の対象となる作業場

騒音に係る作業環境測定の対象となる作業場は、厚生労働省の「騒音障害防止のためのガイドライン」において、別表1と別表2の二つに分けて示されています。

別表1は法律で測定が義務づけられた屋内作業場、別表2は労働安全衛生規則上の義務付けではないものの、等価騒音レベルが85dB以上になる可能性が大きく、屋内・屋外を問わず対策が必要とされる作業場です。両者の範囲と扱いの違いについて、順を追って解説します。

法定測定義務が生じる別表1の8つの屋内作業場

別表1は、労働安全衛生規則第588条に定められた、著しい騒音を発する8つの屋内作業場です。これらの作業場では、第590条に基づき、6か月以内ごとに1回、定期に等価騒音レベルを測定することが事業者の法的義務とされています。ただし、施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定します。ここで、等価騒音レベルとは、騒音の大きさの瞬間値を測るのではなく、変動している騒音レベルを一定時間測定し、その平均値として表した値をいいます。

対象となるのは次の8つです。

  • 鋲打ち機・はつり機・鋳物の型込機など、圧縮空気で駆動する機械や器具を取り扱う業務を行う屋内作業場
  • ロール機や圧延機による金属の圧延・伸線・ひずみ取り・板曲げの業務を行う屋内作業場
  • 動力で駆動するハンマーを用いて金属を鍛造・成型する業務を行う屋内作業場
  • タンブラーで金属製品の研磨や砂落としの業務を行う屋内作業場
  • 動力でチェーンなどを使ってドラム缶を洗浄する業務を行う屋内作業場
  • ドラムバーカーで木材を削皮する業務を行う屋内作業場
  • チッパーで木材などをチップ処理する業務を行う屋内作業場
  • 多筒抄紙機で紙をすく業務を行う屋内作業場

 

それぞれの作業場のいずれかに該当する事業場は、定期的な測定を法令上義務づけられているため、確実な実施が求められます。

屋内外を問わず対策推奨となる別表2の52の作業場

別表2は、別表1以外で騒音レベルが高いとされる52の作業場をまとめたものです。労働安全衛生規則上の義務付けはないものの、屋内・屋外を問わず対策が必要とされ、測定と管理が強く求められます。

業種や作業内容ごとに分類すると、次の表のとおりです。

【別表2の主な作業場(業種別分類)】

分類 代表的な作業・機械 別表2番号
金属加工・製造 インパクトレンチによるボルト・ナット等の締め付け・取り外し、動力プレス・シャーによる鋼板の曲げ・絞り・せん断・切断、ショットブラストによる金属研磨、ハンマーによる金属打撃、丸のこ盤による金属切断など (1)(2)(3)(4)(5)(6)(13)(16)
など
鋳造・溶融 金属溶融による鋳物成型、高圧酸素ガスによる鋼材溶断、衝撃式造形機による砂型造形、振動式型ばらし機による鋳物取り出し (7)(8)(19)(21)
など
建設・土木 車両系建設機械による掘削・積込み(坑内)、コンクリートブレーカ・さく岩機等手持動力工具の取扱い、コンクリートカッタによるアスファルト切断 (46)(47)(48)
など
林業・木工 チェーンソー・刈払機による伐採、丸のこ盤・帯のこ盤による木材切断、ヘッドバーカーによる木材削皮 (49)(50)(51)
化学・樹脂・紙 射出成型機によるプラスチックの押し出し・切断、動力を用いたプラスチックの混合、コルゲータマシンによるダンボール製造、高速輪転機による印刷 (24)(25)(33)(35)
など
設備・その他 ボイラー・エアコンプレッサーの運転、ディーゼルエンジンによる発電、空港駐機場所の航空機への指示誘導・給油・荷物積込み等 (40)(41)(52)
など

表に直接当てはまらない作業場であっても、騒音レベルがおおむね85dBを超える場合は、別表2と同じように測定と管理を行う必要があります。在職者を騒音性難聴から守る観点から、幅広い作業場で確認しておくと安心です。

騒音の作業環境測定の実施方法と結果の評価

屋内作業場の騒音の作業環境測定は、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に定められた方法で実施し、その結果をもとに管理区分を評価します。屋外作業場は測定の手順が異なりますが、評価を終えた記録は一定期間の保存が義務づけられています。

以下では、測定の具体的な進め方と評価の仕組みについて解説します。

屋内作業場でのA測定・B測定の手順

屋内作業場の騒音測定には、A測定とB測定の2種類あり、A測定は作業場全体の騒音を、B測定は音源(発生源)に近い場所の騒音を測定します。

A測定では、作業場の床面に縦横6m以下の等間隔で引いた線の交点を測定点とし、床上1.2〜1.5mの高さで1点あたり10分間以上の等価騒音レベルを測定します。

一方のB測定は、音源(発生源)に近接した場所で作業が行われる場合に、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間帯に、その作業位置で行います。

屋外作業場での測定方法と判断基準

別表2に掲げられた屋外作業場では、A測定を行わず、B測定のみ実施します。測定は、音源に近い場所で作業が行われている時間のうち、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間帯に行います。

その結果が85dB(A)以上であれば聴覚保護具(防音保護具)を使用し、90dB(A)以上であれば聴覚保護具を使用するとともに作業の見直しも検討しなければなりません。

管理区分の判定基準と記録保存の義務

作業環境測定の結果は、A測定の平均値とB測定値の組み合わせによって次の3つの管理区分に評価されます。

第Ⅰ管理区分:いずれも85dB(A)未満の場合
第Ⅱ管理区分:いずれかが85dB(A)以上でいずれも90dB(A)未満の場合
第Ⅲ管理区分:いずれかが90dB(A)以上の場合

判定の具体的な基準は次の表のとおりです。

【管理区分の判定基準(A測定平均値 × B測定値)】

B測定値
A測定平均値
85dB(A)未満 85dB(A)以上
90dB(A)未満
90dB(A)以上
85dB(A)未満 第Ⅰ管理区分 第Ⅱ管理区分 第Ⅲ管理区分
85dB(A)以上
90dB(A)未満
第Ⅱ管理区分 第Ⅱ管理区分 第Ⅲ管理区分
90dB(A)以上 第Ⅲ管理区分 第Ⅲ管理区分 第Ⅲ管理区分

※1 「A測定平均値」は、測定値を算術平均して求めます。
※2 「A測定平均値」の算定には、80dB(A)未満の測定値は含めません。
※3 A測定のみ実施の場合は、表中のB測定の欄は「85dB(A)未満」の欄を用いて評価します。

測定結果と評価結果は、原則として3年間保存しなければなりません。ただし第Ⅱ管理区分または第Ⅲ管理区分に区分された場所の記録については、測定値の推移を把握しやすくするため、5年間保存することが望ましいとされています。

管理区分に応じた騒音障害防止対策の進め方

騒音の作業環境測定で評価された管理区分は、第Ⅰから第Ⅲまでで講じるべき措置の内容が変わります。事業者は区分ごとに定められた対策を行うとともに、①音源対策、②伝ぱ経路に対する対策、③作業者側の対策の3つの観点から具体的な手立てを組み合わせます。

管理区分別の措置と対策の具体例、聴覚保護具の選び方について解説します。

管理区分ごとに必要となる措置の内容

騒音障害を防ぐ措置は、管理区分が上がるほど踏み込んだ内容が事業者に求められます。第Ⅰ管理区分では、現状の作業環境を継続的に維持するよう努めます。第Ⅱ管理区分になると、場所を標識で明示し、作業方法の改善などにより第Ⅰ管理区分を目指すとともに、聴覚保護具を使用させます。

最も厳しい第Ⅲ管理区分では、標識による明示と保護具使用の掲示のほか、施設・設備・作業工程の改善措置を講じ、その効果を確認するため改善後に再び測定と評価を行わなければなりません。

音源・伝ぱ経路・作業者への騒音対策の具体例

騒音障害の防止対策は、音源対策・伝ぱ経路対策・作業者側の対策の3つに分けられます。騒音を発生源・伝わる経路・受け手のどの段階で抑えるかによって、有効な手立てが変わるためです。

それぞれの主な方法と具体例は、次の表のとおりです。

【騒音障害防止対策の3分類と具体例】

対策分類 主な方法 具体例
①音源対策 発生源の低騒音化・防振・消音・遮音 低騒音型機械の採用、給油・部品交換、防振ゴム設置、防音カバー・防音パネル、防音ラギング工事
②伝ぱ経路対策 遮蔽・吸音・距離減衰 遮へい物・防音塀の設置、建屋内部の吸音処理、音源の移動・向き変更
③作業者側の対策 遮音・作業方法改善・耳の保護 防音監視室の設置、遠隔操作、耳栓(発泡・形成タイプ)・イヤーマフの使用

3つの対策は単独で講じるだけでなく、管理区分に応じて組み合わせることで、より効果的な措置になります。なお、対策を実施する際は、労働衛生の専門家に相談することが望ましいとされています。

聴覚保護具(防音保護具)の種類と選び方

聴覚保護具(防音保護具)には、大きく耳栓とイヤーマフ(耳覆い)があります。耳栓のうち発泡タイプは安価で、正しく着ければ高い遮音性能を得られますが、汚れやすいため使い捨てが衛生的です。形成タイプは洗って繰り返し使えますが、遮音性能は中程度にとどまります。

イヤーマフは脱着が簡単で短時間の接近に向き、耳栓と併用すれば遮音効果が高まります。選定では、JIS T8161-1及びJIS T8161-2を参考に、作業場の騒音レベルに合った遮音性能と、長時間でも負担の少ない着用感を基準とします。

騒音作業従事者への健康診断と労働衛生教育の義務

騒音作業に常時従事する労働者には、作業環境への対策だけでなく、健康診断と労働衛生教育の実施も事業者に義務づけられています。

聴力を確認する健康診断と、騒音の知識を深める教育の両面から、騒音性難聴の予防を図ります。健康診断の検査内容と実施サイクル、労働衛生教育の科目について解説します。

雇入れ時・定期健康診断の検査内容と実施サイクル

騒音作業従事者の健康診断は、雇入れ時と定期とで検査内容が異なります。聴力の変化を早期に捉えるためです。雇入れ時や配置替えの際は、250〜8,000Hzの6周波数を測る気導純音聴力検査を行います。従事中は6か月以内ごとに1回、1,000Hzと4,000Hzの選別聴力検査を実施します。

医師が必要と認めた者には、二次検査として気導純音聴力検査を行います。結果は5年間保存し、定期健康診断後は遅滞なく所轄労働基準監督署長へ報告しなければなりません。

騒音作業従事者に対する労働衛生教育の科目と時間

常時騒音作業に従事する労働者には、労働衛生教育の実施が事業者に求められます。騒音への知識や理解を深め、自らの身を守れるようにするためです。教育は4科目で構成され、合計3時間をかけて行います。

各科目の範囲と時間は、次の表のとおりです。

【騒音作業従事者労働衛生教育の科目・範囲・時間】

科目 範囲 時間
①騒音の人体におよぼす影響 影響の種類 / 聴力障害 60分
②適正な作業環境の確保と維持管理 騒音の測定と作業環境の評価 / 騒音発生源対策 / 騒音伝ぱ経路対策 50分
③防音保護具の使用の方法 防音保護具の種類および性能 / 防音保護具の使用方法および管理 30分
④改善事例および関係法令 改善事例 / 騒音作業に係る労働衛生関係法令 40分
合計 ― 180分(3時間)

 

なお、講師には、騒音に関する最新の知識と教育技法の知識、そして経験を有する者を選ばなければなりません。

まとめ

騒音に係る作業環境測定は、従業員の健康を守りながら法令を遵守するうえで欠かせません。製造業や建設業の現場では、強い騒音にさらされ続けることで騒音性難聴という回復の難しい健康障害が生じる恐れがあり、改正された労働安全衛生規則によって対象作業場の測定と対策が事業者に義務づけられているためです。

対象となる作業場を正しく把握したうえで、A測定・B測定による測定と管理区分ごとの評価、音源・伝ぱ経路・作業者の各段階に応じた騒音対策、そして定期的な健康診断や労働衛生教育までを一貫して進めることで、騒音性難聴を未然に防ぎ、従業員が安心して働ける職場環境の構築につなげられるでしょう。

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