アスベスト(石綿)分析はどのようにやっているの?分析担当者が解説します!(前編)

愛研へアスベスト(石綿)分析のご依頼を頂きまして、いつもありがとうございます。ご依頼を頂くお客様の業種は多種多様で、なかには分析方法をご存知の方も多いのですが、実際に分析する時の様子や分析した経験のある方は少ないと思います。今回は、実際の分析現場ではどのようにアスベストを検査しているか、JIS A 1481-1について2回に分けて紹介します。

目次
1.分析方法
2.実体顕微鏡による観察
2-1.ケイ酸カルシウム板
2-2.岩綿吸音板
2-3.仕上塗材
3.まとめ

分析方法

JIS A 1481-1は実体顕微鏡と偏光顕微鏡による定性分析で、下図(図1)のような手順で分析を行います。アスベスト関係の講習会などでこの図を見たことがある人は多いかもしれません。

図1. JIS A 1481-1の分析の流れ
引用:厚生労働省ホームページ

はじめに分析対象である検体を確認します。どういった材質なのかを見て、必要に応じて試料調製を行います。適切な試料調製を行うことでアスベスト繊維を見つけやすくすることができます。次に実体顕微鏡で観察し、アスベスト繊維を探します。アスベストと疑われる繊維を発見したらピックアップし、標本を作成します。最後に、作成した標本を偏光顕微鏡にて観察を行い、繊維の特徴や光学特性を確認してアスベストであるかどうか、アスベストの場合は種類が何であるかを同定します。

代表的な建材として、ケイ酸カルシウム板、岩綿吸音板、仕上塗材の3種類について実際の分析状況を紹介します。なお今回のコラムでは試料調整の説明は割愛します。前編では実体顕微鏡による観察、後編では偏光顕微鏡による観察を紹介します。

実体顕微鏡による観察

ケイ酸カルシウム板

まずはケイ酸カルシウム板から見てみましょう。採取された試料の全体を観察します(図2-a)。表面だけでなく、裏面や断面もチェックします。繊維状のものが見えたら倍率をあげて細部を観察します。今回はクリソタイル(図2-b)とアモサイト(図2-c)と推定できる繊維が見つかりました。見つけた繊維をピンセットで慎重に取り出し、スライドグラス上に繊維を乗せて、推定したアスベストに対応する浸液を滴下してカバーグラスを被せ、偏光顕微鏡で観察するための標本を作成します(図2-d)。

図2-a. ケイ酸カルシウム板の全体像(×10)


図2-b. クリソタイルと推定される繊維を確認(×40)


図2-c. アモサイトと推定される繊維を確認(×40)


図2-d. 繊維をピックアップして標本を作成

岩綿吸音板

次に岩綿吸音板を見てみましょう。先程と同様にまずは全体を観察してみます(図3-a)。倍率を上げて細部をさらに観察してみますが(図3-b)、岩綿吸音板は名前通り岩綿を成形したボードのため、ボード全体が岩綿の繊維で構成されておりアスベスト繊維を直接探し出すのは困難です。このようなケースではランダムピックアップをします。無作為に適量取り出して標本を作成し、次工程の偏光顕微鏡で観察します。不検出判定は慎重に判断しなければならず、公定法では最低6枚以上作成し確認することになっています。
図3-a. 岩綿吸音板の全体像(×10)


図3-b. 岩綿吸音板を拡大して観察(×40)

仕上塗材

最後に仕上塗材を見てみましょう。先程と同様に全体を観察します(図4-a)。裏面や断面も、見やすい倍率に調整しながら観察をします(図4-b)。仕上塗材の場合、その多くは層状の構造となっているので各層をよく観察します。必要に応じて削ったり折ったりすることで新しい断面を作って観察することもあります。繊維を発見できたらピックアップし、標本を作成します。見つけられなかった場合は層ごとに削って標本を作ります。不検出の手順は先程と同様ですが、各層につき6枚以上の確認が必要です。今回は下地調整材からクリソタイルと推定される繊維を発見したので、取り出して標本を作成します。他の層にも含まれている可能性があるので、各層も標本作成しました。

図4-a. 仕上塗材の全体像(×10)


図4-b. 仕上塗材の断面を観察(×40)

まとめ

今回はJIS A 1481-1のアスベスト分析の手順として、実体顕微鏡での観察と標本作成について紹介しました。後編では、今回作成した標本をもとに偏光顕微鏡で観察する時の様子を紹介します。

後編はこちらから
・アスベスト(石綿)分析はどのようにやっているの?分析担当者が解説します!(後編)

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