『土壌汚染対策法』を知っていますか?土壌汚染のリスクや法律の概要を徹底解説します!

日頃、お客様より土壌汚染に関するお問い合わせをいただくことがあります。内容は建設工事や事業の廃業、また、土地取引の関連などいろいろあります。今回は、土壌汚染対策法について、土壌汚染の概念やリスク、法律の概要について紹介したいと思います。

目次
1.土壌汚染とは
2.土壌汚染のリスク
2-1.地下水経由の摂取リスク
2-2.直接摂取リスク
3.土壌汚染対策法の目的と対象物質
3-1.目的
3-2.対象となる有害物質
4.土壌汚染状況調査のきっかけについて
4-1.有害物質使用特定施設の使用を廃止したとき(法第3条)
4-2.一定規模以上の土地の形質の変更の届出の際に、土壌汚染があると都道府県知事等が認めるとき(法第4条)
4-3.土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあるとき(法第5条)
5.区域指定について
5-1.要措置区域(法第6条)
5-2.形質変更時要届出区域(法第11条)
6.まとめ

土壌汚染とは

土壌汚染とは、人が生きていく上で必要不可欠な土壌が、有害な物質により汚染された状態をいいます。原因としては、人の活動などに伴って生じた汚染だけではなく、もともとの土壌に含まれている自然由来の汚染も含まれます。

「人の活動などに伴って生じた汚染」とは、例えば、操業中の工場において、有害な物質を含む原料の不適切な取扱いによるもの、また、設備不良により有害な物質を含む液体が地下に浸透することなどがあります。

土壌汚染のリスク

土壌汚染があることにより起こりうるリスクはいくつかありますが、その中でも土壌汚染対策法では2つの摂取リスクについて考えられています。

地下水経由の摂取リスク

土壌に含まれる有害物質が地下水中に溶け出し、その地下水を摂取するリスクをいいます。例えば、土壌汚染がある土地の周辺に飲用の井戸があり、その水を飲む場合などが考えられます。

直接摂取リスク

土壌に含まれる有害物質を口から直接摂取するリスクをいいます。例えば、土壌汚染のある土地の土壌が手に付いたまま口にする場合、飛散した土壌が口に入る場合などが考えられます。

土壌汚染対策法の目的と対象物質について

目的

土壌汚染対策法は、「土壌汚染の状況の把握に関する措置」と「土壌汚染による人の健康被害の防止に関する措置」を定めることにより、「土壌汚染対策の実施」及び「国民の健康を保護する」ことを目的としています。言い換えると、「土地の土壌汚染の状況について、決められた基準(指定基準値など)と照らし合わせて把握する」ことと、「土壌汚染が確認された場合は、汚染状態によって必要な対策をとる」ことが法律によって定められていることになります。

対象となる有害物質

対象なる有害な物質(特定有害物質)は全26物質あります。
第1種特定有害物質(揮発性有機化合物・12物質)、第2種特定有害物質(重金属等・9物質)及び第3種特定有害物質(農薬等・5物質)があり、それぞれに指定基準値(土壌溶出量基準・土壌含有量基準(第2種特定有害物質のみ))があります。
(指定基準については環境省HP「土壌汚染対策法施行規則」をご確認ください。)

土壌汚染状況調査のきっかけについて

土壌汚染対策法で定められている土壌汚染状況調査について、どのような場合に調査が必要となるか(調査契機)は次の通りとなります。なお、土壌汚染状況調査は専門知識のある「指定調査機関」が行うこととされています。

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有害物質使用特定施設の使用を廃止したとき(法第3条)

具体的には、水質汚濁防止法で定められている特定施設で特定有害物質を使用等するもの(有害物質使用特定施設)の使用の廃止の時点で調査義務が発生します。ただし、引き続き操業する場合などついては、一時的に調査の免除を受けることもできます(法第3条第1項ただし書き)。なお、一時的に調査の免除を受けた土地で900㎡以上の土地の形質変更を行うときは届出が必要になり、都道府県知事等の命令により土壌汚染状況調査を行うことになります。(法第3条第7項・第8項)

一定規模以上の土地の形質の変更の届出の際に、土壌汚染があると都道府県知事等が認めるとき(法第4条)

具体的には、3000㎡以上の土地の形質の変更(特定有害物質使用特定施設が設置されている土地では900㎡以上)を行う場合、着手の30日前に届出が必要となります。その際、届出のあった土地について土壌汚染のおそれがあると認められる場合に調査命令が発生します。
なお、「土地の形質の変更」とは、土地の形状を変更する行為の全般をさしており、掘削と盛土(仮置きを含む)となります。このため、形質変更範囲は掘削と盛土の面積の合計となります。

土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあるとき(法第5条)

具体的には、対象となる土地について土壌汚染が存在する蓋然性が高く、その汚染が人に摂取される可能性がある場合に、都道府県知事は調査命令を行うことができます。つまり、対象となる土地に土壌汚染があることが確からしく、かつ、周辺に飲用井戸がある場合や人(第三者)が立ち入ることができる場合など、汚染状況と摂取リスクを判断した上で、必要に応じて命令されることになります。

土壌汚染状況調査の調査契機はこれら3つのケースがありますが、その他に自主調査において土壌汚染が判明した場合に、土地の所有者等が都道府県知事等に区域の指定を申請することもできます。(法第14条 指定の申請)

区域の指定について

土壌汚染状況調査の結果、土壌の汚染状態が指定基準を超過した場合、人の健康被害のおそれについて判断を行ったのち、次の2つの区域に指定されます。「人の健康被害のおそれについて判断」は土壌の汚染状態によって異なります。

土壌溶出量基準を超過した場合は、地下水経由による摂取の経路について判断する必要があり、周辺で地下水の飲用利用があることや地下水の汚染状態などが判断材料となると考えられます。また、土壌含有量基準を超過した場合には、直接摂取の経路について判断する必要があり、土壌汚染のある土地に関係者以外の人の立ち入り制限などが判断材料となります。

要措置区域(法第6条)

汚染の摂取経路があり、健康被害が生ずるおそれが「ある」ため、汚染の除去等の措置が必要な区域をいいます。この区域に指定された場合、都道府県知事の指示よる土壌汚染除去計画を作成、確認を受けたのち、計画に従って措置を実施し報告を行うことになります(法第7条)。また、土地の形質の変更は原則禁止となります(法第9条)。

形質変更時要届出区域(法第11条)

汚染の摂取経路がなく、健康被害が生ずるおそれが「ない」ため、汚染の除去等の措置が不要な区域をいいます。なお、要措置区域の土地について摂取経路の遮断が行われた区域も含まれます。この区域に指定された土地について、形質の変更を行う際は着手の14日前に都道府県知事等に届出を行う必要があります(法第12条)。なお、これらの区域の指定を受けた土地について、汚染の除去が行われた場合に「区域の指定が解除」となります。

まとめ

今回は土壌汚染をテーマに、土壌汚染があることによるリスク、調査の対象となる有害物質、また、土壌汚染対策法における調査契機や区域指定などをお話いたしました。日頃から土壌汚染に関するお問い合わせは多く、その内容や規制する法律、条例等が複雑です。弊社も指定調査機関として、これまで土壌汚染調査の実績があります。土壌汚染調査についてご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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