2022.12.08
コラム

『CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)水セキュリティ』とは

国際的なNGOであるCDPは、世界の主要企業から環境リスクに関する情報を収集、分析、評価をして結果を纏めたレポートを機関投資家などに開示しています。その目的と活動の概要をご紹介します。

目次
1.CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは
2.活動内容
2-1.目的
2-2.3つの環境インパクト
2-3.水セキュリティレポート
3.最後に

CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは

CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは、気候変動に関する情報を集める最も有名な国際的NGOの一つです。2000年に英国で発足し、世界の企業に対し二酸化炭素排出量や気候変動への取り組みに関する情報の収集と、機関投資家などへの情報開示を行っています。その活動はESG投資が活発化するなか投資家らの支持を受け年々拡大し、日本でも2005年から活動が始まっています。CDPの情報開示システムは今や世界経済における環境報告のグローバルスタンダードとなっています。

活動内容

目的

CDPは国際的な環境非営利組織であり、「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」ことを目的に活動しています。2050年までのネットゼロ※1及びネイチャー・ポジティブ※2な世界の実現に貢献し、今後数年間での速やかな行動の実施、そして実現すべき世界への移行を促していくとしています。
※1温室効果ガスの排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする
※2生物多様性の毀損に歯止めをかけ、自然をプラスに増やしていくこと

3つの環境インパクト

発足当初は、炭素(Carbon)に関する経営の情報開示を目的とした質問書「気候変動質問書」だけでしたが、現在は水に関する「水セキュリティ質問書」、森林に関する「フォレスト質問書」が加わり、3つの質問書を世界の企業に送付して回答を求めています。CDPを通じた情報開示の要請者には、投資運用額110兆ドル超、590を超える投資家や購買力5.5兆ドルを超える200以上の購買企業(サプライチェーン)があります。日本の投資家は証券会社、保険会社、金融機関などです。また、環境省はCDPと共催で「サプライチェーン・アジア・サミット2021」を開催するなど日本政府も積極的に取り組んでいます。そして質問書に対する回答企業数は100カ国以上の国から13,000社以上の企業が回答し、そのうち日本企業は約900社にのぼります。

水セキュリティレポート

ここでは3つの質問書のうち、私たちの業種に関係の深い水セキュリティに関する報告「水セキュリティレポート(2021:日本版)」についてご紹介します。冒頭、CDPからのメッセージではじまります。水セキュリティ グローバルディレクターであるケイト・ラム氏のメッセージには、

「気候の変化により、すでに水ストレスが表れていたこの地球上において、ある場所ではより乾燥し、ある場所ではより湿潤な状態となり、洪水、干ばつ、異常気象がいままでになく頻繁、流行、長期化しています」
引用:水セキュリティレポート 2021:日本版

と問題提起から始まります。そしてすべての企業や投資家に向けて、現在抱えている課題に対処するためにCDPレポートで紹介した企業の水分野における先進的な取り組みに参加するよう求めています。

次に調査対象となる企業に向けて質問書を送付し、得られた回答の集計結果を取りまとめています。ここでは、AからDの4段階レベル評価の結果より「Aリスト企業」の一覧を挙げています。世界117社のうち日本は37社ありAリスト国別企業数は第1位です。日本企業の回答サマリーでは「日本企業が、水リスクを直視するとともに水に関連する機会を認識し、先手を打った対応を行おうとしていることを示唆するものであると言える」と結論付けています。

質問書の「リスクと機会」では、直接の操業におけるリスクとして洪水を挙げる企業が多く、次いで水ストレスの増加、水不足の増加、干ばつ、水質悪化を挙げる企業が多く、水に関する機会としては、既存の製品・サービスの販売増加、コスト削減、新製品・サービスの提供、操業における水効率の改善、ブランド価値の向上を挙げる企業が多い。また、水に関連する定量的な目標に関しては取水量の削減(79社)など水の使用に関する目標を設定する企業が多いが、29社は排水の汚濁負荷の削減に関する目標を設定しています。

機関投資家は、どのような業種の企業が水リスクによりさらされているか、そのような業種の企業が水リスクをどう捉えており、またそれが財務にどのように影響を与えうるかについて関心を向け始めています。

最後に

現在、CDPはプライム市場への上場企業全てを対象に情報開示を促しています。CDPを通じた情報開示は大企業を中心にサプライチェーン全体に及んでいます。また、CDPの質問書はSDGs(持続可能な開発目標)とも関連付けられています。今後はサプライヤーである中小企業にも環境情報の開示が求められることになるのでしょうか。

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参考資料
一般社団法人 CDP Worldwide-Japan

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