『純水』と『超純水』って何が違うの?

分析を行う際に水を使用します。このときに水道水を使用すると、水道水中の不純物が分析結果に影響を与えてしまうため、通常は「純水」や「超純水」を使用します。実験器具を洗う際も最初は水道水で洗いますが、最後は「純水」や「超純水」を使用し乾燥させます。それでは「純水」と「超純水」の違いは何でしょうか。ここでは水の種類について説明していきます。

目次
1.純水と超純水とは
2.純水の種類とその精製方法
2-1.蒸留水
2-2.イオン交換水
2-3.RO水
3.電気抵抗率とTOC値
3-1.電気抵抗率
3-2.TOC値
4.最後に

純水と超純水とは

水の種類は、純水、超純水、蒸留水、イオン交換水など多くの種類がありますが、その違いはご存知でしょうか。

純水とは、水道水中の不純物を除去するために何らかの処理を施した水です。ポイントは精製方法が限定されていないことです。つまり、蒸留水、イオン交換水、RO(逆浸透)水はそれぞれ純水の一種になります。また、精製方法によって純水の質が異なります。

一方で超純水とは、純水をさらに精製した水です。様々な精製方法を組み合わせて作られており、不純物が非常に少ない限りなくH2Oに近づけた水と言えます。多くの会社は超純水製造装置を所有していると思います。簡単に超純水が作れる便利な装置ですが、超純水は空気中の不純物を取り込む性質があるため、汚染されやすいことがわかっています。分析方法によっては悪影響を受ける可能性があるため注意が必要です。

純水の種類とその精製方法

純水と呼ばれる水はどのような種類があるのでしょう。代表的な純水の種類とその精製方法を紹介します。

蒸留水

不純物を含んだ水を沸騰させることで水蒸気を発生させ、この水蒸気を冷却して得られる水のことを蒸留水と言います。このとき、水よりも沸点が高い物質は気体にならず元の水の中に残ります。つまり、水の沸点と不純物の沸点の差を利用して水の純度を上げています。
特徴としては、イオンと有機物をある程度除去できるが、水よりも沸点が低い物質は除去しにくいとされています。

イオン交換水

水をイオン交換樹脂に通すことで得られる水のことをイオン交換水と言います。イオン交換樹脂には陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂があり、それぞれ陽イオン交換樹脂のH+と水中の陽イオン(Na+など)、陰イオン交換樹脂のOH-と水中の陰イオン(Cl-など)を交換します(図1、図2)。このようなイオン交換樹脂を用いることで、水中のイオンを取り除くことができます。
特徴としては、イオンは除去できるが、有機物は除去できません。またイオン交換樹脂は永遠に使えるものではなく、再生化や樹脂自体を交換しなければなりません。

図1 陽イオン交換のイメージ

図2 陰イオン交換のイメージ

RO水

逆浸透膜(RO膜)を用いて得られた水をRO水と言います。

まず、この方法で重要となるRO膜について説明します。RO膜とは半透膜の一種で、小さな分子は通すが大きな分子は通さない膜のことです。よく浸透圧を説明するときに登場します。ある物質の濃度が濃い水(例えば塩水など)と濃度の薄い水(純水)の間に半透膜を置くと、塩水の濃度を薄めようとするために純水中の水分子が移動します。この時に生じる圧力を浸透圧と言います(図3)。

それでは、塩水側に外から浸透圧以上の圧力をかけるとどうなるでしょう。塩水中の水分子のみが純水側へ移動し、この時Na+とCl-は半透膜を通りません。このような原理で不純物を取り除きRO水は作られます。
特徴としては、イオンや有機物などの不純物を除去できるが完全ではないこと、精製されたRO水の質は原水の水質に左右されるということが挙げられます。

図3 浸透圧

電気抵抗率とTOC値

純水の種類を紹介しましたが、実は純水と超純水には明確な定義がありません。

一般的に純水は電気抵抗率が0.1~1.5MΩ・cmの水を言い、超純水は電気抵抗率を18.24MΩ・cm(純粋な水の電気抵抗率)に限りなく近づけた水と言われています。

引用:【オルガノ株式会社】純水・超純水とは

明確な定義がないとはいえ、純水や超純水の質を評価する必要があります。その指標として「電気抵抗率」と「TOC値」が用いられています。簡単に言うと電気抵抗率はイオンの量を、TOC値は有機物の量を見ています。

電気抵抗率

電気の通しにくさを表す値を電気抵抗率または比抵抗と言います。一般的に水は電気を通しやすいというイメージがありますが、実は純粋な水は電気を通しにくいのです。電気を通すにはイオンが必要です。例えば水道水中には多くのイオンが存在しているため、それらを介して電気を通しやすくなっています。一方、純水はイオンが少ないため電気を通しにくくなっています。つまり、水の純度が高くなると電気抵抗率が大きくなり、純度が低くなると小さくなる関係になります。イオンが十分に取り除かれると電気抵抗率が18.24MΩ・cmに近づくので、電気抵抗率を見ることで純水や超純水の純度を見ることができます。

TOC値

全有機体炭素(Total Organic Carbon)のことを言い、英語の頭文字をとってTOCと呼ばれます。これは全有機物中の炭素量を示す値になります。つまり、TOC値が大きいと有機物が多く含まれ、TOC値が小さいと有機物が少なく純度の高い水と言えます。

最後に

分析に使用する水について紹介しました。精製方法により様々な種類の純水または超純水があることがわかって頂けたと思います。使用目的に応じて使用する水を選択することが大切です。このコラムが使用する水について考える機会となれば幸いです。

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