石綿規制が強化されます!②~『石綿障害予防規則』の改正内容について解説~
令和2年7月に建築物等の解体・改修工事における石綿ばく露防止として「石綿障害予防規則等の一部を改正する省令」が公布されました。この改正は令和2年10月から順次施行され規制が拡大します。別のコラム「石綿規制が強化されます!~『大気汚染防止法』の改正内容について解説~」で紹介した改正内容と一部重なる事項もありますが、今回は石綿障害予防規則(石綿則)の改正内容について説明したいと思います。
目次
1.大気汚染防止法と石綿則の違い
2.主な改正内容について
2-1.事前調査・分析調査等について
2-2.計画届の対象拡大
2-3.負圧隔離を要する作業に係る措置の強化
2-4.隔離(負圧は不要)を要する作業に係る措置の新設
2-5.その他の作業に係る措置の強化
2-6.作業の記録
2-7.発注者による配慮
3.各改正事項の施行日
4.最後に
大気汚染防止法と石綿則の違い
石綿飛散防止の強化のために大気汚染防止法と石綿則が改正されましたが、ここで大気汚染防止法と石綿則の違いを簡単に説明します。
大気汚染防止法は大気の汚染を防止することを目的としています。その中で人の健康に被害を生じる物質を特定粉じん(石綿)として規制しています。
一方、石綿則は労働安全衛生法に基づく規則として制定されており、労働者の健康被害防止を目的としています。大気汚染防止法と石綿則の改正により、大気中への石綿飛散による近隣住民の健康被害だけでなく、解体等の作業を行う労働者の健康被害の防止も強化されたと言えます。
主な改正内容について
次は石綿則の主な改正内容について見てみましょう。石綿建材のレベルについての説明は、別コラム「『大気汚染防止法』の改正内容についてわかりやすく解説します!」の「1.石綿建材のレベルとは」をご覧ください。
事前調査・分析調査等について
建築物、工作物、船舶の解体、改修の作業を行うときは、全ての材料について設計図書等の文書を確認する方法と目視により確認する方法により調査することが必要となりました。
また、これまでレベル1建材に該当する吹付材は、分析によって石綿含有の有無を調べなければなりませんでしたが、「石綿含有みなし」として扱うことが可能となりました。この場合、分析は省略できますが、石綿含有建材として労働安全衛生法令に基づく措置を講じなければなりません。
さらに、分析調査を行う者の要件が新設されました。分析調査は、必要な知識及び技能を有する者として厚生労働大臣が定めるものに行わせなければならないとされ、具体的には次の通りになります。
- 所定の学科講習および分析の実施方法に関する所定の実技講習を受講し、終了考査に合格した者
- 公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術評価事業」により認定されるAランク又はBランクの認定分析技術者又は定性分析に係る合格者
- 一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修 (建材定性分析エキスパートコース)」の修了者
- 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「建材中のアスベスト定性 分析技能試験(技術者対象)合格者」
- 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている 「アスベスト分析法委員会 認定 JEMCA インストラクター」
- 一般社団法人日本繊維状物質研究協会の「石綿の分析精度確保に係るクロスチェック事業」により認定される「建築物及び工作物等の建材中の石綿含有の有無及び程度を判定する分析技術」の合格者
事前調査結果等の届出方法と報告対象、事前調査を行う者の要件、記録の保管等は大気汚染防止法の改正内容と同様のため省略します。
計画届の対象拡大
これまではレベル1建材の作業のみ計画届が必要となる対象でしたが、今回の改正によりレベル2建材の作業も計画届の必要がある対象となりました。次のような工事を開始するときは工事開始14日前までに所轄労働基準監督署長に計画届を提出しなければなりません。
- 建築物、工作物、船舶に吹き付けられている石綿等(レベル1)の除去、封じ込め、囲い込み
- 建築物、工作物、船舶に使用されている保温材、耐火被覆材等(レベル2)の除去、封じ込め、囲い込み
負圧隔離を要する作業に係る措置の強化
レベル1、2建材の除去等の作業を行う場合は負圧隔離することが義務付けられていますが、隔離空間に係る集じん、排気装置や負圧の点検が次のように強化されました。
点検内容 | 従来 | 改正後 |
集じん、排気装置の点検 | 作業開始後速やかに | 左記に加え、集じん、排気装置の設置場所の変更など、何らかの変更を加えたとき |
前室の負圧の点検 | 作業開始前 | 左記に加え、作業中断時 |
また、隔離を解く際には十分湿潤化することが必要ですが、これに加え、石綿作業主任者もしくは事前調査を実施する資格を有する者が除去の完了を確認することが必要になりました。
隔離(負圧は不要)を要する作業に係る措置の新設
ケイ酸カルシウム板第1種と仕上げ塗材はレベル3建材に該当しますが、その中でも飛散性が高いため、これらを除去する際の措置が新設されました。
ケイ酸カルシウム板第1種をやむを得ず切断、破砕等をするとき、または仕上げ塗材を電動工具(ディスクグラインダー、ディスクサンダー)で除去するときは、ビニルシートなどにより作業場所を隔離し、常時湿潤状態に保つ必要があります。このとき負圧に保つ必要はありません。
その他の作業に係る措置の強化
その他のレベル3建材を除去するときは、切断、破砕等以外の方法により行うことになりました。また、湿潤な状態にすることが原則ですが、これが著しく困難な時は、除じん性能付き電動工具を使用するなど、石綿の発散防止措置に努めることが必要となりました。
作業の記録
労働者ごとの作業の記録は40年間の保存義務がありますが、その項目について事前調査の結果の概要及び作業の実施状況の記録の概要が加わりました。
さらに、作業計画に基づく作業の実施状況を写真等により記録するとともに従事労働者の氏名、期間等を記録し3年間の保存が義務化されました。
発注者による配慮
建築物、工作物又は船舶の解体・改修作業の発注者は、施工業者による事前調査及び作業の実施状況の写真等による記録が適切に行われるために配慮する必要があります。例えば、対象建築物の石綿の使用状況(設計図書など)を施工業者に通知することや、石綿の使用が明らかになった場合は、石綿除去工事に必要な費用や作業の方法など施工業者が法令を遵守して工事ができるよう配慮することが挙げられます。
各改正事項の施行日
「2.主な改正内容について」でいくつか改正内容を紹介しましたが、内容によって施行日が異なります。各改正事項と施行日は以下のようになります。
引用:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト 石綿則の改正の概要より
最後に
今回は石綿則の改正内容について紹介しました。厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトに改正概要の資料や改正のポイントがあるため、興味のある方はそちらもご確認ください。当社では事前調査、サンプリング、分析調査を行っていますので、ぜひお任せください。
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参考資料
・【厚生労働省】石綿総合情報ポータルサイト 石綿則の改正の概要(PDF)
・【厚生労働省】愛知労働局 リーフレット 石綿解体・改修工事の事前調査の規制等が強化されました(PDF)