個人サンプリング法について詳しく解説(前編)

令和2年1月に作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令及び作業環境測定基準等の一部を改正する告示が公布及び告示され令和3年4月から個人サンプリング法が適用されることとなりました。情報が多いこともあり2回に分けて紹介します。今回は新しい内容且つ難しい内容も多いことから本項目では個人サンプリング法の基礎を紹介したいと思います。

目次
1.個人サンプリング法とは
2.個人サンプリング法の対象作業・対象物質とは
3.評価方法について
4.最後に

個人サンプリング法とは

個人サンプリング法とは労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う方法のことをいいます。従来の作業環境測定では単位作業場所全体の有害物質の濃度の平均的な分布を知るためのA測定と単位作業場所の有害物の発散源に近接した作業位置における最高濃度を知るために行うB測定がありますが、労働者の呼吸域の濃度をその作業時間全体にわたって測定する個人サンプリング法を選択できるようになりました。
個人サンプリング法は、従来の作業環境測定と同様に労働安全衛生法第65条に基づく作業環境測定の手法になります。

個人サンプリング法の対象作業・対象物質とは

個人サンプリング法の対象作業として有機溶剤等(労働安全衛生法施行令別表6の2)に関わる測定のうち、塗装作業等有機溶剤等の発散源の場所が一定しない作業が行われる場所での測定が対象になります。塗装作業等の中には、発散源が作業に従事する労働者とともに移動し、当該発散源と当該労働者の間に定置式の試料採取機器等を設置することが困難な作業が含まれます。また、有機溶剤等の中には第1種有機溶剤や第2種有機溶剤以外に特別有機溶剤も含まれます。
次に個人サンプリング法の対象物質として特定化学物質(労働安全衛生法施行令別表第3)のうち、低管理濃度特定化学物質(管理濃度が0.05mg/m3以下)及び鉛を取り扱う作業が対象になります。全て挙げますと、ベリリウム及びその化合物、インジウム化合物、オルトーフタロジニトリル、カドミウム及びその化合物、クロム酸及びその塩、五酸化バナジウム、コバルト及びその無機化合物、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、重クロム酸及びその塩、水銀及びその化合物(硫化水銀を除く)、トリレンジイソシアネート、砒素及びその化合物(アルシン及び砒化ガリウムを除く)に鉛を加えた全14物質が対象となります。

評価方法について

評価方法については従来の作業環境評価基準に定める「管理濃度」を用います。混合有機溶剤についても従来の方法と同様に換算値を評価に用います。従って、従来同様に第1評価値と第2評価値を管理濃度と比較して当該単位作業場所を評価し第1から第3までの3区分を決定します。
個人サンプリング法では従来のA・B測定の代わりにC・D測定という測定で評価します。C測定の評価は、A測定を行ったときの評価と同様に管理濃度と比較して管理区分を決定します。D測定の評価はD測定値を管理濃度と比較して管理区分を決定し、D測定値が複数ある場合はB測定値の場合と同様にその最大値を採用します。
ここでC測定とD測定の説明をしますと、単位作業場所における気中有害物質の平均的な状態を把握するための「C測定」と、有害物質の発散源に近接する作業など、C測定の結果を評価するだけでは作業者の有害物質への大きなばく露を見逃すおそれがあると考えられる作業が存在する場合に、当該単位作業場所について行うC測定を補完するための測定を「D測定」といいますので従来でいうA・B測定のことと思っていただければ良いと思います。

最後に

言葉だけで説明しましたので、これだけではわからないことが多いと思います。この内容からは、このような測定方法が新しく導入されたということが分かっていただければ良いと思います。次回に後編として「デザイン、サンプリング」の内容やもう少し細かな内容も紹介したいと思います。
後編はこちらから↓
個人サンプリング法について詳しく解説(後編)

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