局所排気装置の点検や能力について解説!
局所排気装置についてどの程度ご存じでしょうか。局所排気装置といっても様々な種類があり、作業を行う環境や使用する有害物質に合わせて選定する必要があります。多くの種類があり難しい内容も多いことから本項目では局所排気装置の基礎を紹介したいと思います。
局所排気装置とは
局所排気装置とは有害物が拡散する前に発生段階で排除するものであり、蒸気、ガス、粉じんといった有害物をフードと呼ばれる空気の吸い込み口からそれらを吸い込み、排気ダクトと呼ばれる導管を通して排気口から屋外へ排出する装置のことをいいます。局所排気装置は有害物が拡散する前に排出するものなので、経年劣化等で性能が落ちていくものです。
引用:沼野雄志著 『新やさしい局排設計教室より』
点検について
労働安全衛生法第45条、有機溶剤中毒予防規則第20条、特定化学物質障害予防規則第30条等に事業者は最低でも年に1回の検査を行い、その結果を記録しておくことが義務づけられています。この際の点検内容は扱う対象物質により変わることがあります。
点検箇所や点検内容はいくつかあります。まずは特に最初に目がいく箇所でフードやダクトが摩耗、腐食、くぼみや損傷がないかを目視で確認します。この際に小さい穴等はビニールテープ等で補修することも出来ますが損傷具合によってはその部分を交換しなければいけないこともあります。
また、ダクトの接続部も緩みがないかを目視や発煙管(スモークテスター)を使用して確認します。ボルト、ナットの締め付けが緩いと振動により外れてしまい、吸引しても有害物が再度作業場内に拡散し局所排気装置としての意味を成さないことがあります。他にも前章の図にある排気機(ファン)が稼働時に触れないほど熱を帯びていないか等も点検する必要があります。
一番大事なことは、吸引するフードの前に物が置いていないこととフィルターに詰まりが無いことを優先的に確認することだと思います。
吸引能力について
局所排気装置にも下図にあるフードや型式(側方吸引型、下方吸引型等)の種類によっても必要な吸引能力が変わってきます。『制御風速』といわれる有害物の発散を防ぐために必要な風速を満たさないといけません。
弊社が数多く点検させていただくことのある有機溶剤業務に使用する局所排気装置点検について例を挙げますと有機溶剤中毒予防規則第16条では有機溶剤業務に関わる局所排気装置の性能要件としてフードの型式に応じて制御風速を定めています。
引用:沼野雄志著 『新やさしい局排設計教室より』
例えば、囲い式フード(ブース型)というものではフードの開口面における最小風速を制御風速として、その値が0.4m/sを満たすようにと決められています。
最後に
前章にて有機溶剤業務に関わる制御風速について簡単に説明しましたが、他にも粉じんを扱う業務に関しても制御風速が定められています。また厚生労働省令では38種類の特定化学物質、鉛及び鉛化合物、石綿については局所排気装置の性能要件を制御風速ではなく抑制濃度と呼ばれるもので定めています。
(※抑制濃度とは発生源周囲の有害物質濃度をある値(管理濃度)以下に抑えて、間接的に作業者の呼吸域の有害物質濃度を安全な範囲にとどめようとするものであり、風速を測るものではありません)
制御風速や抑制濃度等難しいことを話してきましたが、局所排気装置を購入、管理、点検するにもコストや手間が掛かります。そのため有害性の少ない原材料に転換する、作業工程を変更して有害物の発散を防止する、有害物を囲い込み発散を防止する、全体換気装置により有害物の濃度を希釈する等の対策を行うことでその購入コストや手間を省けるかも知れません。