2021.09.02
コラム

水素イオン濃度(pH)って一体なに?

皆さんはpHについてどの程度理解されていますか?酸性やアルカリ性を表す数値ということは知っていると思います。単純に水素イオン濃度といった場合、[H+]とも表記され水素イオンがどのくらいあるかを指します。pHとは、正しくは水素イオン濃度指数と言います。厳密には違う意味なのですが、一般的には水素イオン濃度=pHとして話す場合がほとんどです。この記事では、pHについて解説していきます。

目次
1.水素イオン濃度とは
2.酸性とアルカリ性
3.pHの測定範囲
4.雨水のpH
5.まとめ

水素イオン濃度とは

水素イオン濃度とは、水溶液中の酸性・アルカリ性を示す物理量のことです。簡略して[H+]と表記されます。1909年にデンマークの生化学者セーレン・セーレンセンが提案しました。
水溶液の水素イオン濃度指数(以降pH)は、水素イオン濃度[H+]のモル濃度をmol/L単位で表した数値の逆数の常用対数にほぼ等しくなります。

pH≒-log10[H+]……①

酸性とアルカリ性

pHが中性の時は7付近となり、酸性は7より小さく、アルカリ性では7よりも大きくなります。
①で示した式により、pHが1違うということは水素イオン濃度[H+]が10倍違うということがわかります。例えば、pH3の溶液100mLにpH7の純水を加えて希釈する方法でpH4にするためには、純水を加えて1000mLにしなければなりません。
水溶液が酸性になるということは、水素イオン濃度[H+]が高く、pHの値は低くなっている状態と言えます。一方でアルカリ性は水酸化物イオン濃度[OH]による影響を受けています。pOHという表記もありますが、あまり使われません。
水(H2O)は水素原子と酸素原子が共有結合した非常に安定した分子ですが、極僅かに水素イオンと水酸化物イオンに電離しています。

H2O⇄H+ OH

例え超純水であったとしても、水自身の自己解離のため、1気圧25℃の水溶液中には5億5千万個につき1個の水素イオンを含みます。これをモル濃度で表すと1.00×10-7mol/Lであり、この数値の逆数の常用対数①を計算すると、超純水のpHは7となります。

pH=log10(1.00×107)=7.00

水溶液中における水素イオン濃度[H+]と水酸化物イオン濃度[OH]との積は、1気圧25℃の条件下では

水のイオン積Kw=[H+]×[OH]
水のイオン積Kw=[1.0×10-7]×[1.0×10-7]
水のイオン積Kw=1.0×10-14(mol/L)2

となり一定です。つまり、水素イオン濃度[H+]が高くなれば水酸化物イオン濃度[OH]は低くなり、逆に水素イオン濃度[H+]が低くなれば水酸化物イオン濃度[OH]は高くなります。
これにより、水素イオン濃度[H+]か水酸化物イオン濃度[OH]のどちらか片方がわかればもう片方もわかり、pHの値も計算できます。

pHの測定範囲

一般的なpHの範囲は0~14です。我々が日常的にpHを測定したり、見聞きする数値は基本的にこの範囲に収まります。
市販のpHメーターによる測定では、ガラス電極によるpH測定ではメーカーや機種などによりますが、測定できる範囲は0~14まで、信頼性の高い値はおよそ1~12の範囲になります。強酸性水溶液の場合、ガラス電極表面の膨潤および陰イオンの吸着などが影響し、酸誤差が生じます。強塩基水溶液の場合は、ガラス電極表面への陽イオンの吸着などの影響によりアルカリ誤差を生じます。
ただし、本当はpHの下限や上限は存在しません。鉛蓄電池の電解液のpHは負の値、アルカリ乾電池の電解液のpHは14を超えます。酸や塩基のモル濃度が1mol/Lを超える強い酸性・アルカリ性水溶液のpHを計測することは困難なのです。
例えばアメリカのカルフォルニアにある廃鉱山からpHが-3.6の強酸性水が見つかっています。これを①の公式で計算してみると、約4000mol/Lとなり、ありえない数値が出てきます。強酸性水のpHを水素イオン濃度[H+]から推定するのは不可能なのです。

雨水のpH

超純水のpHについては「2.酸性とアルカリ性」で記載しました。1気圧25℃の時、水分子の自己解離により、水素イオンと水酸化物イオンを同数含む中性水溶液です。しかし、温度が0℃の時の超純水はpH7.47、20℃の時はpH7.08、60℃の時はpH6.51になります。温度によるpHの変動は、水の自己解離が温度により異なることを示唆しています。自己解離反応は吸熱反応なので、温度が高いほど解離が進みます(ルシャトリエの原理)。
空気に触れた超純水は、弱い酸性を示します。空気中の二酸化炭素が水に溶け込むからです。空気に十分な時間接した後の純水のpHは25℃で5.6となります。その過程を見てみましょう。
まず、純水に溶けた二酸化炭素の一部は、水分子と反応して炭酸分子になります。

CO2+H2O=H2CO3

生成した炭酸分子のさらに一部は、電離して水素イオンを放出します。

H2CO3=H++HCO3

炭酸の電離により放出される水素イオンの量は極めて少ないのですが、それでも純水に含まれる水素イオンの数十倍になります。
また質量作用の法則により水の自己解離が抑制されるため、水酸化物イオンの量は純水に含まれる量の数十分の一になります。水溶液中に存在する水素イオンの数が水酸化物イオンの数よりも多いので、空気に触れた水は酸性を示します。空気に含まれる二酸化炭素の割合は0.04%とほぼ一定であり、また大気圧もほぼ一定なので、二酸化炭素の分圧はほぼ一定となります。さらに温度が一定であれば、二酸化炭素の水への溶解度、炭酸分子が生成する割合、および炭酸分子が電離する割合もまた一定になります。25℃におけるこれらの数値を用いて計算すると、pH=5.6となります。
雨水とは、地上の水が蒸発して大気上空にて液体に戻った、水以外余分なものを含まない自然の蒸留水です。この雨水についても同じことが言え、大気汚染の影響が一切なくても雨水のpHは5.6付近となります。例えば、火山活動や化石燃料の燃焼により放出された硫黄酸化物や窒素酸化物が溶け込むとpHが5.6よりも低くなります。pH5.6より低い数値となった雨が酸性雨と言われています。

まとめ

今回は水素イオン濃度について解説しました。pHは化学における入門のような立ち位置であり、その他の化学的事象や化学分析、料理など様々な分野に広く関連してくる項目です。このコラムが読者の方の役に立てたなら幸いです。

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