石綿(アスベスト)について詳しく解説!
石綿(読み:いしわた・せきめん)という言葉を聞いたことがありますか。時折ニュースなどで話題になっているため、なんとなく危険な物という認識を持っている方もいると思います。石綿は主に建築物に使用されてきました。一方で発がん性物質の一つとして知られています。ここでは、石綿とはどのような物質なのか、なぜ問題となるのかについて紹介します。
目次
1.石綿とは
1-1.石綿の種類
1-2.石綿繊維の太さ
1-3.石綿の性質
2.どこに使用されているの?
3.石綿を吸ったらどうなるの?
4.石綿の使用禁止
5.最後に
石綿とは
石綿の種類
石綿は「アスベスト」とも呼ばれ、自然界に存在する繊維状のケイ酸塩鉱物です。6種類に分類され、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトがあります。日本で使用された代表的な石綿はクリソタイル、アモサイト、クロシドライトで、石綿繊維の色からそれぞれ白石綿、茶石綿、青石綿とも呼ばれています。
石綿繊維の太さ
石綿は細い繊維の集まりです。人の髪の毛の直径が40μm~100μmに対し、種類にもよりますが石綿繊維の直径は0.02μm~0.35μmと極めて細い繊維からなっています。そのため、空気中に飛散している石綿繊維は肉眼で見ることができません。
石綿の性質
石綿は繊維状の鉱物であることから以下のような性質を持っています。
(1)繊維状であるため織ることができる(紡織性)
(2)引張り強度が極めて大きい(高抗張性)
(3)燃えにくい、高温に耐える(不燃・耐熱性)
(4)柔軟で摩耗に耐える(耐摩耗性)
(5)酸やアルカリ等の薬品に侵されにくい(耐薬品性)
(6)腐らず変化しにくい(耐腐食性)
(7)熱や電気を通しにくい(絶縁性)
(8)表面積が大きいため他の物質との密着性に優れる(親和性)
(9)価格が安い(経済性)
どこに使用されているの?
「1-3 石綿の性質」で示したように、石綿は安価で多くの優れた性質を持っています。そのため、主に耐火性、断熱性、防音性、保温性が求められる箇所に使用されました。
日本では1970年から1990年にかけて大量の石綿が輸入され、様々な石綿含有製品に使用されました。大きく分けると「石綿工業製品」と「石綿含有建築材料」で、ほとんどが建築材料に使用されていました。使用された石綿の約9割はクリソタイルで、残りの約1割はアモサイトとクロシドライトが占めています。
石綿工業製品の例としては、パッキンやガスケット、ブレーキパッド、石綿布などがあります。かつて理科の実験で使用した石綿金網もこちらに該当します。
石綿含有建築材料の例としては、外装材、内装材、屋根材、煙突材などがあります。
石綿を吸ったらどうなるの?
「1-2 石綿繊維の太さ」で示したように、石綿は極めて細い繊維であるため、空気中に漂いやすく呼吸により肺に到達します。吸い込んだ石綿の一部は体外へ排出されますが、細い石綿繊維は肺胞腔に長く沈着します。そして石綿繊維は丈夫で分解されにくく、石綿肺、悪性中皮腫、肺がんなどの病気を引き起こします。
これらの疾患は、石綿ばく露から10年以上、多くの場合は20~50年の潜伏期間を経て発症することが多いです。つまり、石綿を吸い込んでからすぐに症状が現れません。石綿は「繊維を肉眼で見ることができない」、「吸い込んでも症状がすぐに出ない」というところが恐ろしいと言えます。
石綿の使用禁止
石綿は発がん性物質として問題とされ、日本では段階的に規制強化を行ってきました。2006年(平成18年)9月以降は、代替品が得られないごく一部の製品を除き、0.1重量%の石綿を含む製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。建築材料としての石綿利用はこの時点で禁止されています。2012年(平成24年)3月以降は、全面的に0.1重量%の石綿を含む製品の製造等が禁止されました。
最後に
「4.石綿の使用禁止」で示したように、2006年(平成18年)9月以降は石綿含有製品の製造等が禁止されています。しかし、禁止前に着工した建築物に使用されている石綿含有建材については規制されていません。つまり、現在も私たちの周りには石綿含有建材が使用されている建築物が多数あり、古い建築物は老朽化によって石綿繊維が飛散してしまう恐れがあります。
今後は、石綿が大量に使用されていた時代の建築物の改修・解体工事が増えることが予想されています。石綿含有建材を適切に処理するため、工事前に建築物石綿含有建材調査者が対象の建築物のどこに石綿含有建材が使用されているのか、あるいは使用されていないのかを調査することが義務付けられており、工事中に石綿繊維を周辺に飛散させないように対策を講じなければならないなど、様々なことが法律で決められています。