ダイオキシン類に係る環境基準を知っていますか?

国により定められている環境基準は、対象とする媒体(水、大気、土壌など)や環境影響を考慮する対象(人の健康の保護、生活環境の保全など)によって、様々な項目、基準値が設定されています。これらの環境基準の中でも、今回は「ダイオキシン類」に係る環境基準についてご紹介します。

目次
1.概要
2.ダイオキシン類に係る環境基準とその評価方法について
3.各媒体におけるダイオキシン類の環境基準
3-1.大気
3-2.水質
3-3.水底の底質
3-4.土壌
4.ダイオキシン類の測定・分析について
5.まとめ

概要

ダイオキシン類に係る環境基準は、「ダイオキシン類対策特別措置法」の第7条の規定に基づき、平成11年12月27日に公布され、平成12年1月15日から適用されました(環境庁告示第68号)。これによると、大気の汚染、水質の汚濁、水底の底質の汚染及び土壌の汚染について、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準として定められています。

ダイオキシン類に係る環境基準とその評価方法について

環境基準の対象となるダイオキシン類とは、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)という3物質の総称をいいます。これらの物質は、塩素の数や配置が異なる異性体が数多く存在し、異性体によってその毒性が大きく異なります。このため、ダイオキシン類の濃度を評価するにあたって、各異性体の濃度を毒性の最も強い2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンの毒性に換算して合計した毒性等量(TEQ:Toxicity Equivalency Quantity)により表します。
なお、2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンの毒性への換算は、測定により求められた各異性体の濃度に毒性等価係数(TEF:Toxic Equivalency Factor)という異性体ごとに決められた係数を掛けて算出します。この毒性等価係数は世界保健機構(WHO)が様々な科学的知見を基に評価を行っております。

各媒体におけるダイオキシン類の環境基準

ダイオキシン類における環境基準は、各媒体における環境中のダイオキシン類濃度の現状、摂取経路(直接摂取や間接摂取)や摂取量の関係、長期的摂取による影響などの観点から検討された上で基準として定められています。なお、環境基準の基本的な考え方は、先ほどお伝えした通り「人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準」として定められていますが、汚染または汚濁の進行を基準値の上限まで容認するというわけではありません。
各媒体におけるダイオキシン類に係る環境基準は次のとおりとなります。なお、大気及び水質(水底の底質を除く)の基準値は、年間平均値としています。

大気

大気の汚染に係る環境基準は「0.6pg-TEQ/m3以下」です。この環境基準は工業専用地や車道、その他一般の人が通常生活していない地域または場所には適用しないこととしています。

水質

水質の汚濁に係る環境基準は「1pg-TEQ/L以下」です。この環境基準は河川や湖沼、海域などの公共用水域及び地下水に適用されます。

水底の底質

水底の底質の汚染に係る環境基準は「150pg-TEQ/g以下」です。この環境基準は、河川や湖沼などの公共用水域及び地下水に適用されます。

土壌

土壌の汚染に係る環境基準は「1000pg-TEQ/g以下」です。この基準は廃棄物の埋め立て地そのほかの場所であり、外部から適切に区別されている施設に係る土壌には適用しないこととしています。

ダイオキシン類の測定・分析について

ダイオキシン類の分析は、他の環境分析で求められる量(mg(ミリグラム、10-3g)、μg(マイクログラム、10-6g)など)よりさらに低い量(ng(ナノグラム、10-9g)やpg(ピコグラム10-12g))の測定が求められ、ごくわずかなダイオキシンなどの濃度を正確に測ることはたいへん難しいことです。こうした極微量の物質をより正確に測るために、平成13年より「特定計量証明事業者認定制度 (MLAP:Specified Measurement Laboratory Accreditation Program)」が導入されました。MLAPの導入により、ダイオキシン類などの計量証明事業を行おうとする事業者は、独立行政法人製品評価技術基盤機構に申請を行い、特定計量証明事業者の認定を受けることが必要となります。MLAP認定区分は次のとおりとなります。
①大気中のダイオキシン類の濃度の計量証明の事業
②水中又は土壌中のダイオキシン類の濃度の計量証明の事業
なお、これらの計量証明の事業を行うには、認定特定計量証明事業者として認定を取得して、都道府県知事の登録を受けなければなりません。

まとめ

今回はダイオキシン類に関して、規制に関する法律や環境基準、また測定・分析に関することをお話いたしました。毒性が強く極微量の分析ということもあり、基準や測定・分析に係る制度が厳しく定められていることがご理解いただけたかと思います。ダイオキシン類に関する測定・分析に関するご相談やご不明な点などございましたらお気軽にお問い合わせください。

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