『作業環境測定』の測定の流れって?測定対象や管理区分についての疑問を解説します!

有害物質を扱う作業場では作業環境の実態を把握するため作業環境測定を行う必要があります。実際に測定を依頼したが現場で何をしているのかわからない、作業環境測定とはなにかわからないなどの疑問を今回は解決したいと思います。一概に作業環境測定といっても幅が広いため今回は有機溶剤に絞ってご説明させていただきます。

目次
1.作業環境測定について
2.作業環境測定の対象
3.ご依頼いただいた際の作業環境測定の流れ
3-1.打ち合わせ
3-2.測定
3-3.分析
3-4.報告書作成
4.有機溶剤の分析方法
4-1.検知管法
4-2.ガスクロマトグラフ法(GC)
4-3.高速液体クロマトグラフ法(HPLC)
4-4.ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)
5.管理区分について
6.まとめ

作業境測定について

作業環境測定とは労働安全衛生法第2条第4号にて「作業環境の実態を把握するため空気環境その他の作業環境について行うデザイン、サンプリング及び分析(解析を含む)をいう」と定義されています。また労働安全衛生法第65条では有害な業務を行う屋内作業場等について作業環境測定の実施及びその結果の記録が定められています。このように労働者の安全を守るため作業環境測定が義務付けされており、目に見えない有害物質がどのように分布しているのか実際に測定して作業環境の実態を把握する必要があります。有機溶剤の場合では6か月以内ごとに1回の定期測定が義務付けられています。

作業環境測定の対象

労働安全衛生法第65条にて作業環境測定を行わなければならない作業場が定められています。その中でも有機溶剤に関わる作業場としては

  • 特定化学物質(第1類物質及び第2類物質)を製造し、又は取り扱う屋内作業場
  • 有機溶剤(第1種有機溶剤等及び第2種有機溶剤)を製造し、又は取り扱う屋内作業場

さらにこの2つは指定作業場に定められ、作業環境測定士による作業環境測定が義務付けされています。

ご依頼いただいた際の作業環境測定の流れ

弊社に作業環境測定をご依頼いただくと、打ち合わせ→測定→分析→報告書作成→報告書納品という工程で業務遂行致します。

打ち合わせ

打合せでは、測定する作業場の広さ、作業内容、作業者の行動範囲、使用している有機溶剤の種類などを確認します。打合せの際に使用している有機溶剤のSDS等の情報がありましたら事前に準備していただけるとスムーズに打ち合わせできます。その打ち合わせの情報をもとに単位作業場所(当該作業場の区域のうち、労働者の作業中の行動範囲や有害物の分布状況等に基づき定められる作業エリア)を選定し、単位作業場所の広さに応じた測定点(5点以上)を決定します。この作業を「デザイン」といいます。

測定

測定点に測定機材を設置し、測定対象物質に合わせた捕集方法により、測定点1点につき10分以上かけて環境空気を捕集します。1つの単位作業場所につき1時間以上かけて測定します。この作業を「サンプリング」といいます。単位作業場所の設備や作業工程が大きく変わった場合は新たにデザインをし、単位作業場所の測定点を見直す必要があります。

分析

検知管を使用した簡易測定では測定現場で測定対象物質濃度が判明しますが、活性炭管やシリカゲル管などの固体捕集法によって捕集した試料は、弊社に持ち帰りGC、HPLC、GC/MSなどの大型分析機器を用いて分析を行います。

報告書作成

分析結果から算出した有機溶剤濃度から統計処理を行い管理区分が決定されます。報告書には作業中の有害物質の分布状況、作業者の行動範囲、単位作業場所の図面、測定条件や測定結果及び管理区分などが記載されています。単位作業場所の作業環境管理にお役立てください。

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有機溶剤の分析方法

有機溶剤の分析方法を説明します。

検知管

長さ約15cm、外径約5mmのガラス筒に検知剤が充填されており、試料空気中の測定対象物質と検知管内の検知剤が化学反応することで変色する原理を利用しています。測定対象物質濃度に応じて検知剤の変色層が長くなるため、複雑な操作なく、目盛りを読み取ることで濃度を知ることができます。測定対象物質以外にも共存するガスがあると、共存ガスと検知剤が反応して変色する場合があるため、使用する際には測定対象物質以外の共存ガスにも注意する必要があります。

ガスクロマトグラフ法(GC)

ガスクロマトグラフではガス状物質または加熱して気化する液体を分析することができます。測定対象物質を注入口で気化させ、窒素やヘリウムなどのキャリアガスを用いてカラムに導入し目的成分を分離させ、水素炎イオン化検出器や熱イオン化検出器などの検出部で特定・定量する分析方法のことをいい、作業環境測定では最も使用頻度の高い分析方法です。

高速液体クロマトグラフ法(HPLC)

なにかしらの液体中に溶解している成分を分析することができ、移動相に液体を用いて送液ポンプによりカラムに導入し目的成分を分離させ、検出部で特定・定量する分析方法です。

ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)

ガスクロマトグラフの検出部に質量分析計が付いたもので質量ごとに試料成分を分けることができます。同定する場合には検出ピークの保持時間のみで判断するガスクロマトグラフよりも選択した目的成分の質量を分析することができるガスクロマトグラフ質量分析のほうがより正確です。

管理区分について

作業環境測定の管理区分は各測定点での測定対象物質濃度を統計処理した結果から求められます。第2管理区分では改善措置が努力義務とされていますが、第3管理区分となった場合、第1または第2管理区分になるよう改善措置を行う必要があります。

  • 第1管理区分
    作業環境管理が適切にできている状態
  • 第2管理区分
    作業環境管理に改善の余地がある状態
  • 第3管理区分
    作業環境管理が適切でなく速やかに改善が必要な状態

 

第3管理区分となった場合、作業環境の改善の方法や改善が可能かどうか外部の作業環境管理専門家の意見を参考にしていただき、改善可能な場合改善措置を行った後、再度作業環境測定を行って改善措置の効果を確認する義務があります。改善できない場合は呼吸用保護具の適切な装着によるばく露防止の徹底を行う必要があります。その他にも行わなければならない義務があるため詳しい処置の義務については厚生労働省のホームページにてご確認ください。

厚生労働省のホームページはこちらから

まとめ

今回は有機溶剤の作業環境測定について解説しました。弊社では有機溶剤・金属・粉じん・特定化学物質・放射線の作業環境測定を行っています。ご依頼やご質問はお気軽にお問い合わせください。

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