『化学変化(化学反応)』の基礎
化学変化についてどの程度ご存じでしょうか。化学反応ともいいますが、化学分野の中でもイメージが湧きにくく日常生活の中でこの言葉について思索することは無いと思います。本項目では化学変化の基礎を紹介したいと思います。
化学反応の定義とは
化学反応の定義を簡潔にいいますと、化学結合が変化し性質の異なる物質を生じる変化のことをいいます。
水を例にしますと、水素(H2)と空気中の酸素(O2)を燃焼させると水(H2O)が発生します。また、水(H2O)を電気分解すると水素(H2)と酸素(O2)が発生します。これらの変化では、いずれも原子の組み替えが起こり、化学結合が変化し別々の物質を生成しています。ちなみにですが、液体の水が水蒸気や氷になる変化は結合の変化は行われておらず、物質の状態だけが変化しているため物理変化といって最初に述べた化学変化とは別物となります。
化学反応、化学反応式とは
前章よりもう少し掘り下げて話していきます。『さび』を例にしてみます。鉄の表面に酸素や水があるときに化学反応によって表面から浸食される現象を腐食といいますが、この腐食によって溶け出した鉄と酸素や水が結びついたものが『さび』といいます。すなわち、さびが発生すると金属の鉄は空気中の酸素と結びつき酸化鉄という新しい化合物を生成します。これを化学反応式で表しますと
2Fe+O2→2FeO
化学記号の前の係数は反応物の量を表しています。上記でさびを生成する化学反応式を簡単に説明しましたが、化学反応式とは反応式と生成物の化学式を表したものです。化学反応式中の物質の係数の比は、反応の際に変化した物質の物質量の比に等しくなります。次にメタンCH4の燃焼時の化学反応を例にします。
CH4+2O2→CO2+2H2O
上式はメタンCH4が空気中で完全に燃焼して二酸化炭素CO2と水H2Oを生成する化学反応式です。この化学反応式は、メタン分子1個と酸素分子2個から二酸化炭素分子1個と水分子2個できることを表しています。このように新しい化合物は、分子が再び配列して新たな化合物を生成します。化学反応というのは、熱、そのほかにエネルギーの放出、吸収、臭いなどを発生させるものが多いです。
化学平衡とは
化学平衡の定義を簡潔にいいますと、正の反応と逆の反応の反応速度が等しくなり,見かけ上で反応が止まったように見える状態のことをいいます。前章で述べたメタンCH4の燃焼反応はメタンが完全に燃焼してなくなってしまって二酸化炭素と酸素を生成するので、その逆は起こりません。これが正の反応となり平衡状態つまり、つり合いがとれていないということになります。化学平衡の定義を更にまとめると、化学平衡の状態では各成分物質の物質量はそれぞれ一定であるということになります。この場合、十分な時間放置してもそれ以上時間が経過しても物質量が変化することはありません。
最後に
難しいことを述べてきましたが、メッキ処理の現場でも化学変化が起こっていることがあります。メッキ処理工程の一部で治具を酸性の槽に浸漬し、その後の工程でアルカリ性の槽に浸漬してとありますが、その工程の中で空気中の酸素と化学反応を起こし、治具の一部で白い結晶みたいな物がついていることもあります。これも金属と酸性の物質やアルカリ性の物質や空気中の酸素などと化学反応を起こしている場合があります。その際も普段と異なる臭いがする、メッキ被膜が上手くできないといった不都合が発生します。ですので、物質の化学反応について少し考えてみることで身の周りの不都合や疑問を解消する一歩になるかも知れません。
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