『ダイオキシン類』について徹底解説!

環境中の物質のひとつに、ダイオキシン類という有機化合物があります。これは1960年代に枯葉剤として散布したり、水田土壌の除草剤として使っていた薬剤の成分に大量のダイオキシン類が含まれていたことからこの歴史は始まります。1970年代では農薬や廃棄物の処理などで多量のダイオキシン類が環境中に排出され、私たちの生活を脅かす環境汚染物質として注目を浴びるようになりました。

目次
1.ダイオキシン類とは?
2.ダイオキシン類の毒性とは?
3.ダイオキシン類の基準について
3-1.耐容1日摂取量
3-2.環境基準
3-3.排出基準
3-4.ばいじん・焼却灰の処理基準
3-5.最終処分場の維持管理基準
4.最後に

ダイオキシン類とは?

一般的に使われるダイオキシンの正式名称は「ダイオキシン類」といいます。ダイオキシン類対策特別措置法では、
① ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)
② ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)
③ コプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCBs)
の3つの分類にわけた化合物の総称をダイオキシン類と定義しています。


引用:現場で役立つダイオキシン類分析の基礎(社団法人 日本分析化学会)

 

上の図で示したように、PCDDsやPCDFsは2つのベンゼン環を取り巻くように5を除いた1~9までの数字が配置しており、コプラナーPCBsは1~5と1’~➄5’までの数字が配置した構造になります。ベンゼン環の間にあるOとは酸素原子を表しており、酸素2つでベンゼン環を繋げるとPCDDs、酸素1つでベンゼン環を繋げるとPCDFs、直接ベンゼン環同士が繋がるとコプラナーPCBsになります。通常、この数字の場所には水素原子が配置していますが、これが塩素原子に置換したものがそれぞれのダイオキシン類の種類(異性体)となります。

PCDDsでは75種類、PCDFsでは135種類、PCBsでは209種類の異なった分子構造の異性体が存在しますが、このうちダイオキシン類の規制対象物質は、毒性があるPCDDsは7種類、PCDFsは10種類、PCBsは12種類(コプラナーPCBs)の計29種類が指定されています。

ダイオキシン類の毒性とは?

ダイオキシン類の分子構造では、2つのベンゼン環を取り巻く数字の特定の位置に塩素原子が配置することで、異性体ごとに毒性が変わる特徴があります。毒性をもつ配置は2番、3番、7番、8番の位置に塩素原子が配置する構造が基本となり、最も強い毒性を持つ化合物は2番、3番、7番、8番の位置に4つの塩素原子が配置した異性体になります。この異性体の表し方は塩素原子の4つの位置関係と、ギリシャ語で4を意味するテトラを頭文字にして2,3,7,8-TeCDDになります。この異性体の毒性を1として他の異性体の毒性を相対的に求める係数を毒性等価係数(TEF)といいます。

例えば、塩素原子が8つ配置したOCDDは毒性等価係数が0.0003ですので、2,3,7,8-TeCDDはOCDDより約3300倍毒性が強いことを意味します。

このTEFは世界保健機構(WHO)が設定しており、適宜見直され、最新のTEF(2006)は下図になります。

引用:排ガス中のダイオキシン類の測定方法(JIS K 0311:2020)

 

測定したダイオキシン類のそれぞれの異性体の濃度に、このTEFを乗じると、2,3,7,8-TeCDDの毒性の強さと同じ尺度で換算することができるので、その合計はその試料の毒性の強さと捉えることができます。これを毒性等量(または毒性当量)といい、TEQで表示されます。

ダイオキシン類対策特別措置法では、耐容1日摂取量、環境基準、排出基準が定められていますが、これらはすべて濃度ではなくTEFを乗じた毒性等量で求められます。

ダイオキシン類の基準について

ダイオキシン類対策特別措置法は1999年7月16日に法律第105号として制定され、現在も適宜改正され活用されています。施策の基本となる基準として、耐容1日摂取量、環境基準、排出基準を定めており、他にも焼却に伴って発生した「ばいじん」や「燃え殻」、最終処分場の適切な維持管理するための基準が設けられています。なお、主な基準としてこれらを取り上げましたが、他にも廃棄物や水底土砂、廃棄物焼却炉の解体作業に伴う基準などが存在します。

耐容1日摂取量

4pg-TEQ/体重kg/日

耐容1日摂取量とは、生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される体重1㎏当たりの1日摂取量をいいます。Tolerable Daily Intakeの頭文字からTDIとも呼ばれます。

環境基準

1) 大気
年平均値として0.6pg-TEQ/m3以下

2) 水質
年平均値として1pg-TEQ/L以下

3) 底質
150pg-TEQ/g以下

4) 土壌
1000pg-TEQ/g以下(調査指標は250pg-TEQ/g)

排出基準

1) 排ガスの排出基準(単位:ng-TEQ/m3

施設名 新設施設 既存施設
焼結鉱(銑鉄の製造の用に供するものに限る)製造用焼結炉(原料の処理能力が1t/h以上) 0.1 1
製鋼用電気炉(変圧器の定格容量が1000kVA以上) 0.5 5
亜鉛の回収(製鋼の用に供する電気炉から発生するばいじんであって集塵機により集められたものからの亜鉛の回収に限る)の用に供する焙焼炉、焼結炉、溶鉱炉、溶解炉、乾燥炉(原料の処理能力が0.5t/h以上) 1 10
アルミニウム合金の製造(原料としてアルミニウムくず(当該アルミニウム合金の製造を行う工場内のアルミニウムの圧延工程において生じたものを除く)を使用するものに限る)の用に供する焙焼炉、溶解炉、乾燥炉(焙焼炉、乾燥炉:原料の処理能力が0.5t/h以上、溶解炉:容量が1t以上) 1 5
特定施設の種類 施設規模(焼却能力) 新設施設 既存施設
廃棄物焼却炉(火床面積が0.5m2以上または、焼却能力が50kg/h以上) 4t/h以上 0.1 1
2t/h以上4t/h未満 1 5
2t/h未満 5 10

注)すでに大気汚染防止法において新設の指定物質抑制基準が適用されていた廃棄物焼却炉(火格子面積が2m2以上、または焼却能力が200kg/h以上)および製鋼用電気炉については、上表の新設施設の排出基準が適用されます。

2) 排水の排出基準

10pg-TEQ/L(同法で定められた18の特定施設及びこれらの処理施設からの排水)

ばいじん・燃え殻の処理基準

3ng-TEQ/g以下(ただし、ばいじん、燃え殻について、同法で定められた処理方法に従って処分した場合、処置基準は適用されません)

最終処分場の維持管理基準

地下水 1pg-TEQ/L
・最終処分場の周縁の地下水の水質検査を1年に1回以上実施し、その結果、水質の悪化が認められた場合には必要な措置を講ずることとされています。

放流水 10pg-TEQ/L
・浸出水処理設備の維持管理には、放流水の水質が基準に適合するよう維持管理するとともに、放流水についてダイオキシン類に係る水質検査を1年に1回以上実施することとされています。

最後に

平成13年6月に計量法が改正され、特定計量証明事業者認定制度(MLAP)が施行されました。これは、極微量な化合物であるダイオキシン類を高い信頼性で分析し、計量証明行為を行うためには、当該認定を受けて作業をしなければならないシステムを構築したものになります。認定を受けた事業者は特定計量証明事業者といわれ、この認定で評価されることは、技術的能力の他に、事業所のダイオキシン類分析を行うにあたってのマネジメントシステム体制が評価基準を満足していることを意味します。
特定計量証明事業者認定制度により認定された分析機関は、ある一定の審査基準に適合していることから、信頼性の高い分析機関とみなされ、試験所認定制度(ISO/IEC17025)の審査基準も満たしていることより、国際的整合性を満足する分析機関であるといえます。

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