あれも実は外来生物!?~私たちの身近にいる外来生物~

最近メダカブームに伴い観賞用の改良メダカの放流が問題となっています。なぜ放流してはいけないのでしょうか。一匹ぐらい放しても・・・その結果、今日私たちの周りを見渡せば外来生物だらけです。今回は外来生物とは何かみてみましょう。

目次
1.外来生物とは
2.外来生物による問題
2-1.生態系への影響
2-2.農林水産業への影響
2-3.人への影響
3.外来生物対策
4.まとめ

外来生物とは

外来生物とは、本来の生息地から異なる場所(もともと生息地していなかった国や地域)に、人の手によって移動された生き物のことをいいます。

世界自然保護連合(IUCN)によると「過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種、亜種、あるいはそれ以下の分類群を指し、生存し繁殖することができるあらゆる器官、配偶子、種子、卵、無性的繁殖子を含むもの」と定義されています。
引用:「日本の外来生物」一般財団法人自然環境研究センター 平凡社

 

皆さんもご存知の通り、外来生物の多くはペットや園芸、食用などとして連れてこられた場合と貨物船等に知らぬ間に入り込んでいたり、付着してやってくる場合があります。また外来生物は「国外外来生物」と「国内外来生物」に分類されます。前者は海外に生息する生き物が日本に移動されたものをいい、日本には2,200種以上います。後者は日本にもともと生息する生き物でも、もともといなかった場所に移動された(本州から北海道などに)生き物をいいます。また近年、河川等に放流された改良メダカや金魚などの人工改良品種を「第3の外来種」といい在来生物への悪影響が懸念されています。
参考資料:【TSURINEWS】日本の自然環境を蝕む「第三の外来種」問題 問われる飼育者のモラル

外来生物による問題

外来生物の中でも生態系や人の健康・生命、農林水産業などに悪影響を及ぼす「特定外来生物」が問題となっています。それでは外来生物による影響を詳しく見てみましょう。

生態系への影響

生態系への影響として4つのケースがあります。

1つ目は、外来生物が在来生物を食べてしまうケースです。北アメリカから食用としてきたウシガエルは、食欲が旺盛で口に入る大きさであれば鳥のヒナでも食べてしまいます。その他にも沖縄にハブ退治という名目で持ち込まれたフイリマングースや、小笠原諸島に米国の貨物から予期せず持ち込まれたグリーンアノール(トカゲ)などがいます。最初は数匹だったのがあっという間に数万匹、数百万匹と増え、多くの希少な在来生物を食べてしまっています。

2つ目は、外来生物が在来生物の生息地などを奪うケースです。今では日本各地の河川で見られるミドリガメですが、正式名称ミシシッピアカミミガメという北米原産の外来生物です。彼らの推定個体数は800万匹と、在来種のニホンイシガメの推定個体数100万匹に比べて圧倒的な数を占めており、在来生物の住処などを奪っていることが懸念されています。

3つ目は、外来生物と在来生物の交配により、ハイブリッドが生まれることで遺伝子の固有性が失われてしまうケースです。冒頭でお話した改良メダカ(第3の外来種)の放流がこれにあたります。また普段目にするタンポポのほとんどが、日本産タンポポとセイヨウタンポポのハイブリッドです。彼らは両者の遺伝的特性を取り込み、各々では生きられなかった場所にも適応したスーパーハイブリッドとなり、日本産タンポポはもちろんのことセイヨウタンポポすらも淵に追いやるほどです。

4つめは、外来生物がその場所の環境を変えてしまうケースです。熱帯魚店で観賞用に売られていた南アメリカ原産のオオフサモが野生で繫殖し、川の流れを止めてしまうことがあります。その他にノヤギ(家畜だったヤギが野生化した)が島々で増え、植物を食べつくしてしまい土壌の流失が発生しています。植物が生えているところは、根がネットのような役割をして土壌を抑えています。しかし植物がなくなると抑えがなくなり雨などで土壌が流れやすくなってしまいます。

農林水産業への影響

かの有名なアニメに出てくるラスカルことアライグマは、植物からカメなどの爬虫類でも何でも食べる雑食性です。さらに手先が器用で気性も荒いため、農作物だけでなく生け簀に飛び込み魚を食べたり、鶏を襲ったりするなどをして様々な産業が甚大な被害を受けています。可愛い顔をしていますがやることは全く可愛くなく、最近では住宅地や都会にも生息するようになり建物の破損などの被害も被っています。その他の生物被害としては、スクミリンゴガイによる稲作被害、クリハラリス(タイワンリス)による樹皮の食害などがあります。

人への影響

北アメリカ原産のオオブタクサは花粉症の原因植物として有名です。要注意な外来生物として毒を持ったセアカゴケグモやヒアリがいます。嚙まれた場合、強い痛みを生じ最悪の場合は死に至ります。毒以外にもアフリカマイマイは「広東住血線虫」という寄生虫を保有しており、この寄生虫が人の体内に入ると中枢神経障害や脳脊髄膜炎を引き起こし、こちらも最悪の場合は死に至ります。日本ではありませんがアメリカでは「キラー・ビー(殺人ミツバチ)」による被害も受けています。正式名称アフリカ化ミツバチ(Africanized honeybee)といい、ブラジルで生まれたアフリカミツバチとセイヨウミツバチのハイブリッドです。気性が荒く大群に襲われ死亡する事故が多数起きています。

外来生物対策

外来生物による問題を減らすために外来生物の駆除や侵入、分布拡大を防止することを「防除」といいます。日本では2015年に国内初となる特定外来生物のカナダガンの完全防除に成功しました。1985年に2羽確認されてから完全防除までには30年かかっています。その他一部地域での防除成功例としては、沖縄県浦添市のオオヒキガエル(防除まで約12年)、小笠原諸島の聟島、媒島及び嫁島のノヤギ(防除まで約3年)があります。また完全防除まではいきませんが、沖縄の奄美大島ではマングース・バスターズという防除職員の努力によりマングースの個体数が減少しました。それにより在来種のヤンバルクイナの個体数回復に成功しています。一方で、これまでの捕獲や毒エサなどの防除方法では全く歯が立たない外来生物もいます。ヨーロッパ原産のセイヨウオオマルハナバチはハウス栽培の花粉媒介昆虫として利用されていますが、ハウスから逃げて野生化したものは侵略的外来生物とされ駆除の対象となっています。現在、防除に努めていますが繫殖率が高すぎることから分布域の拡大が続いており、化学的な防除方法の開発が進められています。

1種類の外来生物を防除するだけでも時間と労力、そして莫大な費用がかかります。沖縄のマングース防除には年間予算約3億円かかっています。沖縄島全体からマングースを完全防除するまで続けなければ、再び数が増えこれまでやってきたことが水の泡になってしまいます。

まとめ

今回紹介した生き物以外にも私たちの周りにはたくさんの外来生物がいます。彼らも今はまだなっていませんが、明日には侵略的外来生物となるかもしれません。私たちが安易な気持ちで飼い放した1匹が、数百、数万と増え他の在来生物に影響を及ぼすかもしれません。または環境を変えてしまうかもしれません。そんな事態にならないよう、私たちは外来生物についてもっと知る必要があります。次回は外来生物に関わる法などについてお話します。

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参考資料
・【著書】「終わりなき侵略者との闘い」五箇公一 小学館
・【著書】「外来生物のきもち」大島健夫 メイツ出版
・【著書】「日本の外来生物」一般社団法人自然環境研究センター 平凡社

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