気温の変化と音の聞こえ方~温度と音の不思議なメカニズム~

寒い冬の朝に聞こえる学校のチャイムの音は、夏の昼に聞くよりも、良く響いて聞こえると感じたことがありませんか?遠くを走る電車の音が妙によく聞こえるなと感じたことはありませんか?これらは温度と音の伝わりやすさに関係があることを指しています。ここでは、温度と音の不思議なメカニズムについて、紹介していきたいと思います。

目次
1.音の速さ
2.音の屈折
3.昼と夜の音の方向
4.まとめ
5.あとがき~天気によって音の伝わりに違いはあるのか~

音の速さ

空気の振動によって生じた音波が音の正体になります。空気を振動させているため、気温によって振動の程度は異なり、冬場よりも夏場の方が空気の分子の振動は大きくなります。分子の振動が大きくなるということは、隣の分子への振動の伝わり方が速くなるということなので、結果的に冬場よりも夏場の方が音は速くなります。

音の屈折

音波は空気中から水中に入る際に屈折します。例えば、空気中から水面に45°の角度で音波を入射させる場合、音波は水面側に曲がります。これを屈折の法則といい、光でも同様の現象が起きます。これは、空気よりも水の方が音が速く伝わるために発生します。つまり、この法則では音の速さの違いによって音の方向が変わることを意味しています。

昼と夜の音の方向について

私たちの生活上で昼と夜で気温が違うことは体感で知ることが出来ると思います。では遥か上空の気温はどうでしょうか。昼の場合は、太陽光によって地表が暖められるため、地上付近の温度は上昇しますが、上空は地上ほど高くならないため、気温は「地上>上空」という関係になります。逆に夜の場合、放射冷却現象により、昼に溜まった地上の熱が上空に放出されるため、気温は「地上<上空」という関係になります。音は温度によって速さが異なり、さらに温度差のある層に到達すると次の層で音は屈折します。昼のように、地上よりも上空の方が温度が低いと、地上で発生した音は上空に抜けていきます。逆に夜のように、地上よりも上空の方が温度が高いと、地上で発生した音はなだらかなカーブを描くように地表面の遠くまで届いていきます。つまり、昼より夜の方が音は遠くまで届くということになります。

まとめ

空気は気温が上がると振動する分子が激しくなり、音の速さが上がる以外にも、音が温度差のある層に到達すると屈折する特徴があります。この現象が、1日の中では夜、季節の中では冬の方が、より遠くまで音を届くメカニズムになります。


引用:騒音制御工学ハンドブック[基礎編][応用編](社団法人 日本騒音制御工学会編)

あとがき
~天気によって音の伝わりに違いはあるのか~

天気によって異なるものといえば、湿度があります。空気中の湿度が上昇するというのは、空気を箱の中に入れるイメージすると、その湿度の分だけ水蒸気が多く存在することになりますので、結果として水中に近くなり音は速くなります。つまり、晴れより雨の方が音は速くなることになります。では、雪ではどうでしょうか。雪の場合、空気中に雪の結晶が一定時間滞在することになります。この雪の結晶は構造上空気の振動を吸収するため、音が遠くまで伝わりづらくなり、結果として周囲は静かになります。さらに、雪が積もると、普段はアスファルトなどで音が反射していた環境も積もった雪が音を吸収するため、更なる静けさを生み出します。

天気以外にも風速の変化が関係すると、また音は普段とは異なる聞こえ方が生まれます。日々の生活の中で、少しずつ変化を見せてくれる音の世界は実に奥深いものですね。

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