空気遠近法を科学の視点から見る

趣味が多様化する現代。かつては上流階級でなければ嗜むことすらできない物が誰でもできる時代になりました。とりわけ文芸、美術、演劇や映画といった芸術と称されるものは教養や知識、情報が必要で、用いられる技法は物理や化学との関係が深いものが多いです。今回は絵画などに用いられる空気遠近法について科学の視点から見てみようと思います。

目次
1.空気遠近法とは
2.なぜ空は白く、青く見えるのか
2-1.白っぽく見える
2-2.青っぽく見える
2-3.散乱現象の発生条件
3.空気遠近法からわかることとできること

空気遠近法とは

私たちが遠くを見る時、近くの物と遠くの物は異なる見え方をします。遠くの物は近くの物と比べて、白っぽかったり青っぽかったり見えます。これを絵の中で再現し、遠近感を表現する技法を空気遠近法と呼びます。

なぜ空は白く、青く見えるのか

白っぽく見える

これはミー散乱という光の散乱現象によって引き起こされています。これは雲が白く見える理由でもありますが、太陽の光が空気中の水蒸気に当たるとすべての波長で散乱を起こして白く見えます。雲はもちろん湿度が高く、多量の水蒸気を含む空気も白っぽく見えます。

青っぽく見える

他方、青く見えるのはレイリー散乱によるもの。ミー散乱と同じく散乱現象のひとつでありその理屈も似通っています。これは空が青い理由でもあります。レイリー散乱は空気中の分子によって太陽光が散乱します。ミー散乱とは違って波長の短い光をよく散乱させ、波長の長い光は短い光と比べてあまり散乱しません。このため波長の短い青色の光が空気中で多く散乱し、空や遠くを青く見せています。

散乱現象の発生条件

ミー散乱は光の波長と同程度の大きさの球形の粒子による光の散乱現象です。対してレイリー散乱は光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱現象で、いずれも散乱現象の一つです。他にも回折散乱という現象があり、これとミー散乱とレイリー散乱は当時には起こりえず、粒子の大きさ次第で回折散乱、ミー散乱、レイリー散乱のいずれかが発生します。粒子の円周が光の波長よりも大きいと回折散乱、同じぐらいだとミー散乱、小さいとレイリー散乱となります。つまり空気中にどの大きさの粒子が多く存在しているかによって発生する散乱現象は変わってきます。一般的にミー散乱は雲粒(1μm~10μm)によって、レイリー散乱は窒素分子や酸素分子(0.35nm程度)によって発生すると考えられており、その時の大気や地域の特性が散乱現象を左右する要素となっています。

空気遠近法からわかることとできること

理屈で考えれば、遠景が白い絵画の空には雲粒、水蒸気が多いということになるため湿度が高い地域や時間帯であることが予想できます。逆に遠景が青く描かれているのならばそれは乾燥した空であることがわかります。逆に言えば朝の湿っぽい雰囲気を出すために白っぽい色味で表して、青く晴れ渡る透き通った空は空気の薄い高層の空を表現できます。最近は絵を描く人が増えました。かつては高度な趣味だったものが身近になってきてこうした技法も良く知られるようになりました。今一度、その技法はどんな理論によるものなのかを知ることで、自分の作品に新たな色を付けられるかもしれません。

愛研の調査・測定についてはこちら
お問い合わせはこちら

合わせて読みたいコラム
・物質の状態(固体・液体・気体)とその状態変化について解説!
・『自然環境保全法』を対象地域とともに分かりやすく解説します!

2006年12月より愛研の社内向けに発行している、「愛研技術通信」をPDFファイルとして公開しています。愛研についてもっと知って頂ける情報も満載です。ぜひそちらもご覧ください!
愛研技術通信はこちらから

 

ALL