2022.06.09
コラム

特定化学物質測定『溶接ヒューム』について企業が取り組むべきこと(前編)

溶接ヒュームについて、労働者に神経障害等の健康被害を及ぼす恐れがあることが明らかになったことから労働安全衛生施行令、特定化学物質障害予防規則等を改正し、新たに告示されました。情報が多いこともあり2回に分けて紹介します。本項目では、屋内作業場で行う金属アーク溶接等作業について取り組むべき事を紹介します。

目次
1.規制対象となった物質(溶接ヒュームとは)
2.溶接ヒューム濃度の測定
3.濃度測定後の流れ
4.最後に

規制対象となった物質(溶接ヒュームとは)

溶接ヒュームとは、金属アーク溶接等作業において加熱により発生する粒子状物質(レスピラブル粒子:肺胞に達する粒径の粒子)のことをいいます。この溶接ヒュームが今回新たに特定化学物質障害予防規則の特定化学物質(第2類物質)に加えられました。
金属アーク溶接等作業とは、金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し又はガウジングする作業、その他の溶接ヒュームを製造し又は取り扱う作業のことをいいます。しかし燃焼ガス、レーザービーム等を熱源とする溶接、溶断、ガウジングは対象外となります。
自動溶接機を用いて溶接作業を行う場合は、溶接中に溶接機のトーチに近づく等溶接ヒュームにばく露する恐れがある作業は対象となります。よって自動溶接の場合は溶接機から離れた場所での付随作業は今回の対象作業には含まれません。

溶接ヒューム濃度の測定

継続して金属アーク溶接等作業を行っている屋内作業場は、2022年3月31日までに個人サンプリングによる空気中の溶接ヒューム濃度の測定を行う必要があります。この測定は第1種作業環境測定士、作業環境測定機関等十分な知識、経験を持つ者が実施します。
愛研の測定についてはこちら

個人サンプリングとは、金属アーク溶接等作業に従事する労働者の身体に小型の吸引ポンプと呼吸域付近(肩口付近)にサンプラーと呼ばれる試料採取機器を装着して行う測定方法です。
測定は2名以上の労働者に対して行います。労働者が1名のみの場合は最低2日間測定する必要があります。また、測定時間に関しては金属アーク溶接等作業に従事する全時間が対象となります。準備から溶接作業、作業の合間に行われる研磨作業、作業後の片付けも測定に含まれます。
溶接ヒューム濃度の測定は、溶接作業の種類ごとに測定します。被覆アーク溶接、マグ溶接、ミグ溶接、ティグ溶接等、溶接作業が複数ある場合は、溶接作業の種類ごとに溶接ヒューム濃度の測定を行わなければなりません。

濃度測定後の流れ

2022年3月31日までに溶接ヒューム濃度の測定をした後は、測定結果がマンガンとして管理濃度0.05mg/m3未満の場合はその測定結果に応じて有効な呼吸用保護具を選択し労働者に使用させます。その際に面体を有する呼吸用保護具を使用する場合は、1年に1度フィットテストを実施することとなっています。このフィットテストは現状、施行日が2023年(令和5年)の4月1日からとなっています。
溶接ヒューム濃度の測定を行い、測定結果がマンガンとして管理濃度0.05mg/m3以上の場合は換気装置の風量を増加することや溶接方法、母材、溶接材料の変更による溶接ヒュームの低減、移動式の送風機による送風といった必要な措置を講じた上で再度効果の確認のために溶接ヒューム濃度の測定を行う必要があります。
令和4年4月1日以降においては、新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき、また、金属アーク溶接等作業の方法を変更しようとするときに溶接ヒューム濃度の測定を行う必要があります。

マスクフィットテストについてはこちらから↓
・マスクフィット業務を開始しました

最後に

溶接ヒューム濃度の測定は2022年3月31日までに1度測定を実施することとなっています。本項目では屋内作業場で行う金属アーク溶接等作業について取り組むべき事として濃度測定から測定後の流れを簡潔に説明しました。新しい内容且つ情報が多いことから紹介すべき内容が多いため本編を前編として説明しました。次回後編にて濃度測定の実施後に行わなければならない措置に関して細かく紹介したいと思います。

愛研の作業環境測定についてはこちら
お問い合わせはこちら

合わせて読みたいコラム
・個人サンプリング法について詳しく解説(前編)
・局所排気装置の点検や能力について解説!

2006年12月より愛研の社内向けに発行している、「愛研技術通信」をPDFファイルとして公開しています。愛研についてもっと知って頂ける情報も満載です。ぜひそちらもご覧ください!
愛研技術通信はこちらから

ALL