2023.01.05
コラム

特定化学物質測定『溶接ヒューム』について企業が取り組むべきこと(後編)

溶接ヒュームについて、労働者に神経障害等の健康被害を及ぼす恐れがあることが明らかになったことから労働安全衛生施行令、特定化学物質障害予防規則等を改正し、新たに告示されました。情報が多いこともあり前編後編と2回に分けて紹介します。本項目では、前編で伝えきれなかった屋内作業場で行う金属アーク溶接等作業についてヒューム濃度測定後の取り組むべき事を紹介します。

前編はこちらから↓
特定化学物質測定『溶接ヒューム』について企業が取り組むべきこと(前編)

目次
1.換気装置の設置、風量増加等
2.有効な保護具の選択
3.健康診断等その他
4.さいごに

換気装置の設置、風量増加等

溶接ヒューム濃度測定実施後は測定結果としてマンガン濃度が0.05mg/m3以上の場合は換気扇の風量を増加、溶接方法や母材、溶接材料等の変更による溶接ヒューム量の低減、集塵装置による集塵、移動式送風機による送風の実施等の措置を実施する必要があります。ただし、マンガン濃度0.05mg/m3を下回る場合はこれら上記の措置を講じる必要はありません。上記措置及び何らかの低減措置を講じた際には、その効果の確認をするために再度溶接ヒューム濃度測定を実施します。測定を実施した際には必要事項※1(測定を証明する報告書)を記録(保存)し、3年間保存します。

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有効な保護具の選択

金属アーク溶接等作業に労働者を従事させる際は、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させる必要があります。金属アーク溶接等作業を継続して行う作業場については溶接作業時に測定した溶接ヒューム濃度(マンガン濃度)の結果から得られた最大値を使用し、要求防護係数と言われる呼吸用保護具の選定に必要な値を算出します。

要求防護係数=測定で得られたマンガン濃度の最大値(mg/m3)/マンガンに係るばく露の基準値(mg/m3)

労働者には「要求防護係数」を上回る「指定防護係数」を有する呼吸用保護具を下記の一覧表から選択し使用させる必要があります。

指定防護係数※2一覧(抜粋)

呼吸用保護具の種類 指定防護係数
防じんマスク 取替え式 全面形面体 RS3又はRL3 50
RS2又はRL2 14
RS1又はRL1 4
半面形面体 RS3又はRL3 10
RS2又はRL2 10
RS1又はRL1 4
使い捨て式 DS3又はDL3 10
DS2又はDL2 10
DS1又はDL1 4
電動ファン付き
呼吸用保護具
全面形面体 S級 PS3又はPL3 1,000
A級 PS2又はPL2 90
A級又はB級 PS1又はPL1 19
半面形面体 S級 PS3又はPL3 50
A級 PS2又はPL2 33
A級又はB級 PS1又はPL1 14
フード形又はフェイスシールド形 S級 PS3又はPL3 25
A級 20
S級又はA級 PS2又はPL2 20
S級,A級又はB級 PS1又はPL1 11

健康診断等その他

金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者に対して特殊健康診断を行うことが必要です。常時従事する労働者に対し、雇入れまたは当該業務への配置換えの際及びその後6カ月以内毎に1回、規定の事項について健康診断を実施する必要があります。

その他、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから作業主任者を選定する必要があります。また、金属アーク溶接等作業に従事させるときは当該作業を行う屋内作業場の床等を毎日1回以上清掃すること、労働者を雇い入れた際や労働者の作業内容を変更したときは労働者が従事する業務に関する安全衛生のために必要な安全衛生教育を行う必要があるといった様々な措置を講じることが必要になります。

さいごに

溶接ヒューム濃度の測定は2022年3月までに1度測定をすることとなっています。期間内に溶接ヒューム濃度の測定が出来なかった場合も1度測定することを推奨します。

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本項目では屋内作業場で行う金属アーク溶接等作業について取り組むべき事及び濃度測定から測定後の流れを簡潔に説明しました。新しい内容且つ情報が多いことから紹介したい内容が多いため前編、後編と分けて説明しました。

今後は金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者に対して呼吸用保護具のフィットテストを1年以内毎に1回測定することが義務化されます。2023年4月1日より施行となります。今後はこのフィットテストに着目したいと思います。

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※1必要事項とは、測定日時、測定方法、測定箇所、測定条件、測定結果、測定を実施した氏名、測定結果に応じて改善措置を講じた際は当該措置の概要、測定結果に応じた有効な呼吸用保護具を使用させた際は当該呼吸用保護具の概要。

※2電動ファン付呼吸用保護具とエアラインマスクのうち、実際の作業時の測定の際に得られた防護係数が上記表に掲げる指定防護係数を上回ることを製造者が証明する特定の様式については別に定める指定防護係数を使用する事が出来ます。

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