アスベスト(石綿)はどんなところに含まれているの?

アスベストが含有されているかどうか、正確に判定するには分析機関にて検査するしかありません。しかし、明らかにアスベストを含んでいる建材を分析依頼するより、アスベスト含有みなし処理をしたほうが費用面で安く済むことも多くあります。今回は、アスベストを含んでいる壁かどうか簡易的に見分ける方法をお話しします。

目次
1.アスベストを含んでいる建材
2.アスベストを含む壁材例
2-1.スレート波板
2-2.フレキシブルボード
2-3.石膏ボード
2-4.ケイ酸カルシウム板第1種
3.現場でできる簡易判定方法
4.最後に

アスベストを含んでいる建材

アスベストを含んでいる可能性のある建材は、屋根、軒、庇、外壁、内壁、壁紙、巾木、天井、床、接着剤など多岐にわたり、様々な建材に使用されてきました。中には極微量に含有しているケースもあり、含んでなさそうな建材でも接着剤に入っていたりと、アスベストを含んでいるかどうかは検査しないと判定できません。しかしアスベストを明らかに高濃度で含有している場合、分析検査に出さずみなし処理をしてしまえば良いので、コスト・時間の削減にも繋がります(2021年4月より吹付け材を含む建材全てみなし処理が認められています)。その全てを説明するのは困難なので、壁材に限定して解説していきます。

アスベストを含む壁材

スレート波板

工場や倉庫などの壁や屋根によく使用されている建材です。規則的な波打つ形をしているのが特徴です。2004年まで使用されていて、そのほぼ全てがアスベストを含有しています。代替品になってからは、湾曲した単一繊維がみられます。断面を観察すると繊維の太さが微細かつ不均一な束状の繊維(クリソタイル繊維)が容易に観察できます。


写真1:スレート波板(例)


写真2:スレート波板の断面を上から撮影(×10倍)。赤枠がクリソタイル繊維。

写真3:スレート波板の断面を上から撮影(×50倍)。矢印の先がクリソタイル繊維。

フレキシブルボード(スレートボード)

スレート波板を波型ではなく普通のボード型にしたものです。加工性・可とう性に優れ、工場や倉庫だけでなくビルや住宅にも不燃建材として好まれて使われていました。壁以外にも天井やベランダ・トイレの仕切り板にもよく見られます。表面は化粧加工されていることが多いため、表面を見ただけではわかりませんが、板の断面はスレート波板と同様に束状の繊維を見つけることができます。波板と同様ほとんどの製品にアスベストが含まれます。

写真4:フレキシブルボードの破片。

写真5:フレキシブルボード断面を横から撮影(×20倍)。赤枠・矢印の先がクリソタイル繊維。

写真6:フレキシブルボード断面を上から撮影(×20倍)。矢印の先がクリソタイル繊維。

石膏ボード(プラスターボード)

石膏を母材として紙材で表裏面を成形したボードです。軽くて柔らかい不燃建材で様々な建物の壁・天井に使用されています。ほとんどの製品で石膏部分にはアスベストを含んでおらず、アスベストを含んでいるのは紙材の部分になります。その含有率は約1%かそれ未満と低濃度のため、容易には判別できないのでアスベストの有無を調べる場合は分析検査するしかありません。石膏部分にアスベストを含む場合、通常(7~9mm)より厚みがある(15mm)ので分りやすいです。

写真7:石膏ボードの断面を横から撮影(×20倍)。

ケイ酸カルシウム板第1種

補強繊維とケイ酸・石灰を原料としたボードで、ケイカル板と略称されます。フレキシブルボードや石膏ボードと同じく、壁や天井に不燃建材として好まれて使われました。スレート板より少し柔らかく、軽量で断熱性に優れ、特に火気を使用する部屋(台所、浴室、湯沸室など)に使用されています。補強繊維を素材として用いているので断面を見ると必ず何かの繊維物質が見られます。アスベストの場合は繊維の太さが微細で不均一な束状の繊維です。太さが同じで束状になっていない単一繊維はアスベストではありません。アスベストの種類もアスベスト含有率も製品によってバラバラで、1%未満の製品もあれば2,30%程度の高い含有率の製品もあります。


写真8:ケイカル板の破片(×10倍)。

写真9:ケイカル板の断面を横から撮影(×10倍)。赤枠・矢印の先がアモサイト繊維。

写真10:ケイカル板の断面を横から撮影(×50倍)。矢印の先がアモサイト繊維。

現場でできる簡易判定方法

携帯型アスベストアナライザーという高速アスベスト専用分析計があります。数秒の測定時間でアスベストの有無を判定できます。ただし分析精度はアスベスト含有率1~2%以上を認識できる程度なので、アスベスト含有判定は信頼できますが、アスベストなし判定は気をつけたほうがよいでしょう(アスベスト含有基準は0.1%以上のため)。

もうひとつの方法として、直接繊維をライター等で焼くことで確認する方法があります。板の断面から露出した繊維物質に対し、ライター等で軽く焼きます。一般的な繊維物質、セルロースやグラスウール、人工繊維なら即座に燃えてなくなります。しかしアスベストの耐熱温度は最低でも450℃、溶融温度は1000℃を超えるので、軽く火を当てる程度では燃えず、焼いた後も繊維の形を保っており確認しやすいです。1000℃を容易に超えるトーチ等では焼き切る可能性があるので注意が必要です。焼いた後の状態を見やすくするために断面や繊維に満遍なくインクを塗布してから焼くこともあります。安価かつその場ですぐできる有効な方法ですが、アスベスト繊維を直接触るので飛散には注意し、火気を取り扱うので火災にも十分注意して行ってください。

最後に

アスベストを含む壁について、基本的な壁の建材について解説しました。実際には、壁紙や接着剤、塗材などが使用されているケースもあり、それらを含めると複雑化してしまうため今回は触れておりません。しかし、明らかにアスベストを含んでいる建材を分析して確認を取るより、みなし処理をしたほうが良い場面は多いと思います。今回のコラムが参考になれば幸いです。

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