X線分析計について紹介します!
X線分析計と聞いてどういうものかピンとくる人は少ないかと思います。しかし、空港の手荷物検査などで使うコンベア式のX線検査機、医療現場で見かけるX線撮影装置(レントゲン撮影)等などは見かけたことがあるかと思います。私たち分析業界でもX線を使った分析装置を使用します。その中で弊社が行っている分析の一部を紹介したいと思います。
目次
1.そもそもX線とは?
2.蛍光X線分析法について
2-1.原理
2-2.装置について
2-3.どんな分析ができるのか
3.X線回折法について
3-1.原理
3-2.どんな分析ができるのか
4.まとめ
そもそもX線とは?
X線とは放射線の一種であり、波長が10-8m~10-12mくらいの電磁波をX線といいます。1895年にドイツの物理学者レントゲンが発見しました。X線を利用した主な分析方法としてX線撮影、回折現象を利用した結晶構造の解析、元素への照射による元素分析等があります。
蛍光X線分析法について
原理
物質にX線を照射すると物質に含まれている各元素から特有のX線(蛍光X線)が発生します。その蛍光X線のエネルギー(又は波長)は元素ごとに固有であるため、元素の種類、X線強度から濃度を求めることができます。物質を透過しやすいため、固体、液体、粉体などを非破壊で測定することができます。
装置について
蛍光X線分析装置には波長分散型蛍光X線分析装置(WDX)とエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)があります。WDXは試料から発生した蛍光X線を分光結晶で分光し、検出器で測定します。高感度であり、エネルギー分解能も高いのが特徴です。EDXは試料から発生した蛍光X線を半導体検出器で測定します。多元素同時分析可能であるのが特徴です。
どんな分析ができるのか
弊社ではエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を使用しているため、EDXを使用した弊社での分析事例をあげていきたいと思います。
大きく分けて以下の2つとなります。
① ELV指令・RoHS指令に関するスクリーニング分析
② 異物分析
①についてはELV指令及びRoHS指令に基づくカドミウム、鉛、水銀、六価クロム及び臭素系難燃剤であるポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルに含まれる臭素の定性試験を実施しています。
なお、ELV指令やRoHS指令とは、欧州の環境規制に関するもので、簡単に言いますと自動車や電気電子部品等へ有害物質であるカドミウム、鉛、水銀、六価クロムや臭素(RoHS指令のみ)の使用を規制するものとなります。
②については例えば建物の壁の変色部の定性試験、配管内の析出物(付着物)の定性試験等を実施しています。また、粉体試料、メッキ液等の定性試験やメッキなど薄膜の膜厚測定も実施できます。
X線回折法について
原理
原子が規則的に配列している物質(結晶)にX線を照射すると各原子の周りにある電子により散乱、干渉する現象、これを回折現象といいます。
この回折現象が起こる条件を理論的に示したのがブラッグの条件です。(図1)
ブラッグの条件
2dsinθ=nλ
d:結晶面の間隔 θ:結晶面とX線が成す角度 λ:X線の波長 n:自然数
既知波長λの入射X線を物質(結晶)に入射し回折角2θとそのX線強度を測定することによって、測定した物質特有のX線回折パターンを得ることができます。これにより測定した物質の同定や定量が可能となります。
(図1)
どんな分析ができるのか
粉末X線回折法にて代表的な分析として定性分析があります。弊社では作業環境測定における遊離ケイ酸分析や石綿(アスベスト)の定性定量分析、また、無機化合物の同定分析などを実施しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は蛍光X線分析計についてお話いたしました。X線についての各種X線分析装置の原理や分析事例について、参考になればと思います。このようにX線を使用した分析方法はいくつかありますが、調べたい内容、目的によって使用機器、分析方法を変え分析していくことが必要であると思います。未知試料であってもいろいろな分析を試してみると何か見えてくることがあるかもしれません。